2016年6月13日月曜日

電気主任技術者 動力盤月例点検

テナントの分電盤は目視、MCB放射温度測定、主幹漏れ電流(I0r)
で月に1回点検してるのは頻繁に記事にしましたが動力盤も同じ
様に計測・目視での月例点検を行います。
前任者は目視と盤表の電流メーターの記載のみでしたがこれは
私が電気主任になって変更した内容です。
保安規定にはそういう点検の詳細な中身まではありませんから
担当した電気主任が自ら考えて行えばいいのです。
どこの現場でも相応の方法で月点検は行っているはず?

1.スターデルタ起動回路
運転中のモーター設備の点検です。
5KW以上の7.5W程度のモーターからこの方式となり
どんな電気現場に行っても必ずあります。
スター回路で減圧起動(ルート3分の1)後に約10秒後デルタ回路
となり全電圧200Vの正常運転となる。
マグネットは動作すると凸部が引っ込むのでこれら動作を目視で
確認をするのです。
モーター事故の多くはビルの様な負荷形態なら起動時に多い
と思うので月に1回はこの起動状態確認はしておくべきです。
(①②MCがONで減圧起動、10秒後に③MCがONでデルタ回路)

ただスターからデルタに切替る時に電圧が一瞬0になるため
電動機が空転状態となり突入電流が流れてしまいます。
初めてそれを見た人はその時にガタンと割りと大きな音が
するのでビックリされるでしょう。(リダクションキック)
これがNormalタイプのスター・デルタ起動の特徴です。

ある排気ファン(11KW)が起動する時にすぐ起動しないで
少し間をおいて起動してる時がありました。
負荷が軽いと11KW程度ならいきなり全電圧でも稼働できる
のでしょうが長期にこの状態ではモーター巻線がいつか
焼損するかもしれません!
スター回路のマグネットのコイル断線で動作しないのが原因で
したが毎日の巡回点検ではすでに運転状態なので起動時
だけに発生するそうした異常に気がつけませんでした。
だから月1回は起動状態の電気的な動きの確認はしましょう。

スター回路がOFFのままでは左の×マークの接点が投入され
ないためモーターは運転しない、でもタイマーは生きているから
タイマー時間後にデルタ回路の起動回路は構成するのでいきなり
全電圧起動という意味です。
手回し可能なファンだから起動できたわけで起動トルクが大きな
負荷ならトリップしています。
電気主任は頭の中でこういう思考を現場でして現象を考えます。


2.漏電CHECK
日中は機械を停止できない場合メガはできませんがこの
方法なら運転中でもできます。
漏れ電流は単独モーターならばまず5mA(0.005A)未満。
上の場合でも約2mAでした。(表示は2.5mA)
5mA未満というのは私が管理してる現場のモーターをすべて計測
した結果の結論でそういうのが本にあるわけではありません。
こういう状態のメガを電源を切って測定したら完全に正常です。
もし漏電してると桁違いに大きな漏れ値(100~300mA)
が検出されメガをするとたいてい0.1MΩ未満で修理・取替
が必要な状況になります。

それが漏電が発生した時に私が見て来た実際の漏れ電流の
変化の現実です。
もちろん電源がELBなら切れる事になりますよね。
ただ上の回路はMCBなので完全地絡から短絡まで至らない限り切れ
ないため変圧器のB種接地のLGR警報で知る事になります。

3.運転電流、マグネット二次電圧
停止した状態ではなくてモーターが運転してる状態でマグネット
の二次側の線間電圧
を測定します。
どんなに多くても3Vも電圧差はないはずです。
時々停止状態でMCBの二次側で電圧測定してる人いますがあまり
電気の事をわかってないと思います。
次にRST各配線の運転電流を計測します。
ここでの動力盤では配線間にあるのはわずかな制御電源のみで
18、14、18Aなんてあえりません。
(線間に別に単相モーターとかあるなら別ですよ)
そういう場合はマグネットのコンタクター不良で二次電圧の
アンバランス
がありそうです。
最初のMG二次側電圧測定の段階で電圧差が顕著に出てる可能性!

ですがそういう状態だと逆相トルクが発生しモーターが振動で
明らかに普段とは違う状態なので何か変?と誰もが気がつくはず。
ですから毎日聞いてるモーターの運転音も軽視しない様には
しています。
でも音が良くてもこういう計測をして値を記録しておかないと
故障が発生した時に管理状況の提出を上司から求められた時
に困ります。


上写真クランプ下に見える丸いのが電流検出用のCTという部品で
ここで電流を読み回路に取込んで過電流状態の時に回路を停止
させます。(THRと同じ動作)
実際は逆相と欠相も検出できますが逆相はまずなく欠相は前述
したマグネット(MG)のコンタクター不良で発生する現象です。

特に注意はマグネットの単相運転の兆候を見逃がさない
運転中(回転)に単相になったのなら定格電流の約ルート3倍
となり過電流状態を認識して回路は自動停止はします。
簡単に言うと正常三相運転時電力は√3V3I3で単相時電力はV1I1
電力が等しいとしてI1を求めると√3V3I3÷V1でV1=V3だから結局
I1=√3I3となるのです。(単相運転時√3倍となる)
ただ実際はすべり、力率も変化するから約2倍というのが現実的
な変化と言えます。
ただ停止状態ですでにそうなっているとすべてが短絡エネルギー
となるので老朽化してるモーターだとコイルを焼いてしまいます。

運転電流が3本共に低い場合で多いのがVベルト不良ですね。
この場合私もVベルト交換しますがほとんどはそれで改善します。
Vベルトは劣化すると底当たりという現象を起こしてスリップする
から回転力が低下して負荷が満足に乗りません。
Vベルトとプリー間のわずかな隙間こそがグリップ力を生むのです。
ただ長く使用してると経年による軸受けやプーリー交換が必要
となるケースもあるためその場合は至急空調業者に連絡して
機械メンテナンスをさせます。

●空調機ではなくて水を揚げるポンプを運転するモーターも同じ
様な点検でいいです。

ただVベルトはありませんが汚水槽や厨房排水槽では時々異物
が水中ポンプの羽に引っかかり過電流トリップする事があります。
また月点検でも前回より運転電流が明らかに高い場合は逆転させて
異物は除去しています。(たいてい硬い小さな異物が多い)
つまりモーター運転を妨害する事で強大な負荷がかかった様な状態。
この場合はモーターを逆転させたら解消される事が多いのです。
まずマグネット二次側を外してどこか2線をクロスさせます。
再取付の時、★ネジの締めが甘く単相状態にだけはならない様★
にだけは注意します。

そのまま通常の回路で手動運転させたらここの場合は逆相トリップ
が動作するから制御回路を切り、制御を無効にしてマグネット
の頭を押さえて強制起動させます。(ただ10秒運転を2回のみ)
モーターはリバースOKだけどポンプの逆転は長くすると振動
でネジなどが緩んだり故障します。

ポンプメーカーに聞いたらその程度の時間なら大丈夫ではないか
というコメントはもらってはいます。
後で知ったのですがこういう場合、彼らも同じ事をしていました。
これで無理ならポンプを夜中に床までジャッキアップして点検と
洗浄作業をするしかなく大変な作業です。

余談ですが水中ポンプは電流が凄く低い場合はポンプ二次側
配管の詰まり、逆支弁はシンプルな構造なので原因となるのは
そう多くはないです。(ボールチャッキなら特に!)
つまりポンプの羽に異物が引っかかった場合とは逆に負荷が
乗らないから電流が下がるのです。
(そういう場合は無音空転状態で電流も数Aしかない)
たかがモーターの電流値だけどそこには原因の陰があります。

4.温度CHECK
職場にあるのはこれで月例の受変電設備点検では触れない特高
高圧機器の表面温度計測をしています。
たぶんこの程度はどこの現場でもあるはずでそうでなければ有効
と言える点検なんてできません!
ただ日常的に携帯するには大き過ぎるのが欠点ではありますね。

私はいつもこの携帯型のを持ち歩いています。
巡回時などいつでもモーターなどの温度を測定できますからね。
動力盤月例点検ではMCBやマグネット表面温度を測定します。
通常そういう物は過負荷でなければ周囲温度+5℃~35℃
程度のはずです。
サーモテープの変色で異常を知ってる様では末期的な状況で
限界点になる途中で異常を発見するのが点検という物です。

特にMCBは40℃より高くなると10℃上がるたびにトリップ電流
が10%減少するので通過電流の多い回路では負荷を減らすか
容量アップのための取替をしないと落ち停電になりますよ。
動力回路は固定設備がほとんどだけどコンセント回路は自然
に負荷が増えていく傾向があるので注意しましょう。
最低限温度が高いMCB回路は毎月負荷電流を測定して記録
に残すべきです。
トリップ事故が発生して"管理が悪い"と言われるのは電気主任
ですからそうなってからでは弁解なんてできません。
事故が発生したら普段の点検状況の提出を会社から求められます。

私はこの自分の指で覚えた事、目で見た現象を尊重して次に
なぜそれがそうなるのか?本で調べたりしてお仕事は覚えます。
理屈は後からですよ。
理屈で"こう思う"ではなく"これで問題解決した"や"こうだ!"
が現場では誰からも尊重され頼りにされるのです。
物事を"思う"としか言えないのは半分は自信のなさからきます。
★経験とは"これで問題解決した"をたくさん持つ行為です★
キャリアとは積み重ねた実地の経験。という意味だとありました。