2021年1月29日金曜日

電気主任技術者の仕事・力率改善装置の基礎説明



自家用電気工作物の現場に必ずある物、それは力率改善用
コンデンサー
で今日はその取扱について説明します。
電験三種の問題でも経験されたと思いますが通常のビルでは
高圧電路に電力用コンデンサーSCを並列接続、所内にある遅
れ無効分をSC接続点より一次側において減らす事で受電電流
を減らせます。この操作を力率改善と言います。

設備管理の現場の方でもなぜ電力コンデンサーを投入するの
か意外とわかってない方が多いです。変圧器、モーター負荷
のほとんどは遅れ電流になる物
ばかり、そこにコンデンサー
を投入すれば互いに位相が180°逆なので打消し合い、力率1
なら有効分のみとなり電力側から見れば電流が減るのです。
ただこの様に完全にすべて消えてしまうわけではありません。
SC接続点より下回路の遅れ分は変わらないのでSCはなるべく
負荷に近いほど電流低減の範囲は広くなるのです。空調機動
力回路で低圧コンデンサーが接続されてる物はそれが目的。
職場の仲間に質問されたらこういう説明をしてあげてね!
まず現場の構成、VCSという簡単に言えば高圧の電気SWが
あり、リアクトルSRを経由して高圧コンデンサーSCは電
路に接続されます。SRは突入電流を制限しSCを長持ちさ
せる物と思ってください。VCSの通常運用は中央監視PC
より遠隔で入切させます。切りにしたら5分間は再投入
できない制限
があります。理由は後半で説明します。
受電力率は100%にするのが一番効率が良くこういう設備を
使用し操作する事で電力基本料金の割引をしてもらって
ています。(適正に受電力率を管理する事で電力会社も配
給負担を減らせます。)__下は現在50Kvarほどコンデン
サーの投入が必要というのを意味しています。(本当は反
対に+50Kvar多いと見れた方が自然なのですがこの中央監
視はそういう組み方をしているだけと見てください)

そこで115Kvarのコンデンサーを切り、172Kvarを投入すると
受電無効電力は0kvarとなりました。こういう操作を力率改善
と言うのです。電流増加?いえ有効電力Pがそのタイミングで
偶然上昇しただけでコンデンサー操作とは無関係です。遅れ
無効電力量はMOFのとこで積算されているのでコンデンサー
投入をあまり怠ると当月の基本料金割引率が減ります。この
現場では通常この操作は自動ですが、手動で力率を見ながら
SCを入切をしてる現場もあります、手動制御するなら少し
進み力率になるタイミングで私は投入します。無段階制御
ではないから常に完全力率1にはならないし、遅れにして
無効電力計に積算させたくないです。+98~100%の範囲で
問題はないです。ただ負荷増加に比例してコンデンサー
の投入台数を増やしていかないといけません。電気をわ
かってない方がこれを操作すると1日の遅れ無効電力量が
増える可能性があり設備の新人さんには指導してあげる
必要があります。電気基本料金がそういう理由で高くな
るとオーナーから指摘を受けます。

中央監視PC内の力率制御設定でSCの自動入切タイミング
を決める事ができますが普通ここを触る事はないです。
SCを手動で入切してる現場はこの制御がありません。
自動SC制御がない無人受電設備ではSCは入れたまま!
小さな受電設備ではそういうの多いですが力率は+85
~100%で推移しています。操作する人がいないのです
からそうなりますよね。ただそれで問題が発生した事
を聞いた事はないです。

(詳しい方へ⇒115とか172とか中途半端な値、今回その理由
は省略し単純にそれがコンデンサー値として説明しています)

ところでコンデンサーが中央監視室の遠隔操作で入らない
場合?これは私が管理してる現場の実際の製品のシーケンス
回路です。

手動投入入りを押すとTM1タイマー接点がONならばSR1X、SC1X
LS2XのB接点を経由してMC1がONする事でコンデンサーが投入さ
れます。一方自動回路は遠隔投入接点CX1のa接点がONする事で
TM1タイマー接点がONならば同じくSR1X、SC1X、LS2XのB接点を
経由してMC1がONする、MC1がONすると赤矢印が示すMC1のa接点
がONする事で自己保持回路となる。まずコンデンサーが投入さ
れないのはMC1がONしないからに気がつく事です。テスターで
電圧を追う方法以外で今日は調査してみましょう。

手動投入ボタンでコンデンサーが投入できるか、できるならば
SR1X、SC1X、LS2Xのリレーは正常、そうなると線番74より上の
自動回路に異常があり。自動回路②下の自動切り接点TX1を短絡
(ジャンパー)した上で遠隔投入してみます。これでも一瞬でも
入る気配がなければ遠隔投入接点CX1をジャンパーします。
最後にTM1タイマー接点をジャンパーします、必ずどこかで入
るはずで上のどれかが不良です。

一瞬でもと言ったのはMC1の自己保持回路があるからで一旦
投入されるのにすぐに切れる場合は自己保持回路MC1のa接点
が不良です。シーケンス図で接点のとこにある番号はその部
品の接点番号で配線に書いてあるのを線番と言います。コン
デンサーを切ると真ん中上のVCS-1のb接点がONになる事で
線番81より電圧がかかり切りランプのGL1が点等します。同
時にTM1のタイマーに電圧がかかり一定時間後に左上にある
TM1タイマー接点がONします。そうこのタイマーは切後に
コンデンサーの連続投入を防止します。

電力コンデンサーは電荷を充電しますが前の投入した時の電荷
が残っていると過電流になる
ために内部に電荷消費用の抵抗か
放電コイルを内蔵しています。図面右のB、C、Dは遠隔盤に故
障信号を送る接点でE、Fは遠隔盤より信号を受けて現場のコン
デンサーを入切するリレーです。コンデンサー異常とはコンデ
ンサーの箱内部の圧力が異常上昇した時に動作する圧力SWCX1
とTX1リレーのとこにパラでダイオードの記号があるけどあれ
は何だと思われます?あれはこのリレーが切れた時に発生す
る逆起電力を外回路に出さないための物でこの先に電子回路
が絡む場合時々見ます。たしかフリーホイルダイオードとい
う名前だったと思います。

上で述べたコンデンサー投入用MC1が動作すると下の様な流れ
で投入信号が投入用の高圧SWであるVCSに来るのです。VCS2
-1番間にAC100Vがかかり内部で整流されDCとなる。それが
投入コイルCCに印加されてVCSは投入されます。VCSが投入さ
れるとVCS7-8番a接点がONとなり中央監視に投入を知らせ
るのはわかると思います。

このVCSはラッチ式ではないので投入後も保持電流が必要な
タイプ。つまトリップコイルを内蔵してなくてもVCS2-1
番間が無電圧になれば切れます。受電VCBの様に基本停電作
業以外では365日投入を維持する場合はラッチ式で投入後は
機械的に状態を保持して、必要時にトリップコイルで切ら
せます。そうでないと数年で投入コイルが熱で断線する可
能性があります。今回の記事内容の動作は現場が異なれば
回路の組み方は異なりますが、動作的にはほぼ同じです。