2021年1月24日日曜日

ビル設備管理 モーター温度上昇について



モーターの温度管理は重要で過去モーター表面温度が90℃を
超えて取替という事態になった事が一度だけあります。絶縁
階級がE種の場合は許容温度は120℃ですが業者によれば表面
で20℃程度低下するという意見があったのでそうなれば100℃
を越せば絶縁破壊を起こしてしまい相間短絡
するのは時間の
問題でした。これは私が勤務する現場にある消防ポンプモー
ターで絶縁階級はB種だから表面温度で130-20=110℃が限界
と判断できます。ですが通常は50~60℃程度でこういう負荷
が固定したモーターが85℃とかに急になれば何か劣化兆候が
あると私は考えています。モーター絶縁階級は乾燥した屋内
ではE種、屋外や耐久力を要求される物はF種やB種を私が勤務
するビルでは使用されています。屋外モーターなんて10年以
上雨ざらしなのにまったく故障する事なく夏場は毎日動いて
るのですからガチな耐久力です。でも永久じゃない!

モーターは熱容量や熱放散を考慮すると内部から外部に熱が
移動するのにある程度の時間がかかり、運転開始の初期には
温度変化が遅れます。
絶縁物の寿命に影響を与えるのは 最終
上昇温度との事です。下写真は冷房用の屋外冷却水ポンプ
これで温度変化を検証してみましょう。この検証は実は10月
頃にした物ですが朝方でモーター運転前は周囲温度とほぼ同
じ表面温度で26℃でした。運転開始してから15分後に表面が
43℃、更に15分後に56℃となりました。最終的には58℃で
発熱と放熱のバランスが成立して最終上昇温度となったので
す。(屋内設置では放熱低下で屋外より5℃程度高くなる傾向)

レザーポインターのある通常の非接触式温度計は受変電設備
の温度測定で使用しますが機械巡回時では上の料理の温度を
測る非接触式温度計を個人的には利用しています。(いつで
も携帯できる)楽天で購入!ですが下と1℃も誤差がないので
信頼性はありますよ。

この15分というのは昔父から教えてもらった方法で2回目の15分
つまり30分後の温度からそう大きくならないない大丈夫という
話でした。でも根拠があるのかないのか、あくまで個人の経験
法則か以前から気になっていたので検証を行ってみたのです。
少し勉強して調べてみたらモーター温度というのはR-L直列回
路の電流変化と同じ様な★指数関数的な変化をする★のですね。
つまり最終値である定常状態と変化途中の過度状態で表す事
ができます。そうなると最初の15分をt1、次の15分をt2として
その時の温度を各θ1とθ2として最終上昇温度をθ∞と表す事
とします。Tとは時定数といいθ∞の約63%に達する時間を意味
する物でこれが小さいほど早く定常状態に落ち着きます。

①は最初の15分t1の時の温度を表す式で②が30分目t2の温度を
表す式次に①式を二乗すると③式となりこれが②式と等価とな
る事に気がつきます。後はθ∞を機械的に求めて行けば最終上
昇温度を示す式が得られました。

その式にθ1=43℃とθ2=56℃を代入して見ると57.8℃が得ら
れました。実測は58℃ですから偶然か、結果と理論値はほぼ
一致しました。ただ私も実際にこうした設備を保守する立場
の人間として父が言う15分間隔温度点検というこの方法はか
なり的を得てる
と思います。

絶縁物は耐熱温度を越せば寿命は著しく低下する検証
電気に係わる人は寿命を判定するモルチゲルの公式と
10℃半減説は聞かれた事があると思います。①がその
式です。②は絶縁物が130℃まで上昇した寿命T1③は
10℃半減説を適用して定数βを逆算してみました。
次にA種絶縁物が定格の105℃まで上昇した時の寿命
を示す式T2が④でそれに②③の結果を代入してみます。
耐熱温度になった時の寿命T1が資料としてあるならば
130℃まで加熱した時の絶縁物の具体的な寿命時間T2
は計算できますがわかりません。仮に適当に1000Hと
するならば176Hでこの結果からA種絶縁物を130℃で
使用すると寿命は1/5以下になるのだけはわかります。

解説:指数計算の公式の確認、次に③は10を二乗したら
100ですよね、逆に2は10を底とした100の対数であると
同じ考え方で変換すればいいんです。⑤のεは自然対
数の底で2.718それを1.7325乗すれば5.65が得られます。
関係式が判明したのでエクセルで式を組んで105℃を1
とした場合の温度超過による寿命の推移をグラフ化し
てみましたがありえないけど160℃になんかなると一
瞬で絶縁破壊してしまうのがわかりました。こういう
検証を個人的にするのは面白いから好きです。

人間が触っていれる温度は50℃未満、通常はその範囲の
モーターがほとんどです。時々触れないので測定すれば
60℃を越してるケースもあります。モーターの絶縁耐熱
温度的には全然平気なんですけど、一番重要なのは変化
だと思います。昨日表面で40℃だったのに気温も負荷も
同一で55℃になったなら要注意と私は判断します。運転
条件が同じなら多少の差はあっても前日と5℃も違わない
です。
それはモーターに限らずすべて、そのために現場
で日々点検をしています。だから記録を残すのも重要で
す。冬場でしたらほとんどのモーターの表面温度は45℃
程度。ただ設置周囲温度(季節差)、負荷の影響もある
ので夏場は50℃になるかもしれません、上昇する理由
がないのにモーターだけがいつもより熱いはヤバイ
前兆と私は日々意識しています。

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