2015年3月20日金曜日

電気主任技術者 1万5千円でI0r測定可能です。

ケーブルのI0rを直接測定できる大口クランプメーターは定価で
10万円するのでどんな現場でもすぐに購入してもらえる。とは
思いません。(I0rとは抵抗分漏れ電流の事)
その場合少し練習が必要ですがテンパール工業のIor測定
抵抗分漏れ電流測定用ユニットRM-1を使用します。

この価格なら通常は会社での物品購入で難しくはないでしょう。
どうしても会社が買ってくれないなら個人で買う事もできます。


I0r方法は電圧と同相の成分を検出するTrueな値です。
対地間抵抗つまりメガ値により流れる電流がI0r(抵抗分漏れ電流)
電路に流れる漏れ電流には、対地静電容量を通して流れるI0c
と配線や機器の劣化により流れる感電や火災の原因となるI0r
の2種類の漏れ電流が流れています。I0=I0r+jI0c
静電容量リアクタンスは1/2πfcだから高周波はI0c回路を
通過していきます。知りたいのはI0rのみ!

あのエジソンが直流送電をしていた時代と違い交流を扱う場合
停電させて行うメガ測定でしか対地間抵抗の優劣の判断が
できないと考える方は多くいらっしゃいます。
実はピュアにI0rという量を検出できるなら同様の判断が停電
せずとも可能となる便利な方法なんです。

★以下、RM-1でのI0r測定方法を紹介します。
まずケーブルをリーククランプメーターで3本挟みます。
私はMULTI社の口径80mmを使用していますがこれもI0rまでは
測定できないのです。
RM-1単体では高周波カット機能がなくできるだけ誤差を減らす
ためにクランプメーター側で高周波を除去します。
下写真ではFLがその機能でONにして測定しています。
最初にこのテナントへの幹線ケーブルのI0は約10mA(9.7)
なのを確認したらこれを元にRM-1の設定を行います。

次にRM-1からの出力線とそのケーブルを同時に挟む。
後RM-1の電圧クリップを被覆の上から挟み準備完了!
つまりこの回路に発生してる対地間静電容量による漏れ電流
I0cと逆位相の電流を流す事で互いに相殺させI0rのみを値と
してクランプに計測させる
のが原理です。
(電圧を基準ベクトルとするから電圧入力が必要)

RM-1の設定は三相回路ではないので単相を選択します。
レンジは先ほどI0が10mAだったので20mAレンジを選択
ここまでで接続、選択に問題があればエラー表示が
点灯しますから再度最初から設定をしてみます。

次に上で赤矢印の丸いのを回すとクランプの数字が変化
していくので一番低い値になった時の値がこの回路のI0r。
9.7mAが6.1mAと減ったのはそれが理由でI0cとの関係
を複素数表示で表すとI0(9.7mA)=I0r(6.1mA)+jIoc
なるのはこのBlogを見てる方ならわかるでしょう。
(理論的には計算でI0cも求める事はできます)

回して敏感に変化する部分では微調整しながら最低値を求める
事になるため人によっては計測値に違いが出る可能性がある
ので自分で何回かその感触の練習が必要になります。
ただ慣れてきたら数秒でそれができる様になるので大丈夫!
たぶん会社でこれを購入しても電気主任しか使えない専用器具
となるのでその辺の説明は事前に会社に必要かと思います。

予算もあり確実にI0r管理をしたい方はMCL-800IRでキマリ!
ケーブルのI0r測定では今最強ツールです。(9万8千円)
これは単体で直接I0r測定が可能でRM-1はいりません。
私が使ってるのはこれの下位機種のMCL-800Dですがただ
口径が同じ80mmなのでたいていのケーブルが挟めます。
口径が50mm未満だと太い幹線ケーブルが挟めません。

最初から80mm口径のクランプを持ってる現場は少ないで
しょうから私と同じ管理をするならMCL800DとRM-1のセット
で一番低価格で42000+13000=55000円で買えます。
値引率はなぜか新品でも販売店により数千円違います。
ただ下のMCL-800IRはほとんど値引きはありません。
そういう点で前者を選択される方が多いと思います。

保安規定による年1回の絶縁測定では実際管理としては不十分
で違う絶縁管理方法を探してる&安価でというならば今回紹介
したテンパール工業の抵抗分漏れ電流測定用ユニットRM-1
以外では方法がありません。
購入したらエクセルで点検表を作成して毎月管理しましょう。
とにかく目視のみで何もしてないは今の時代は通用しません。
もしテナントで明日電気火災が発生してもこれを毎月してれば
安全管理の努力をしてるが電気主任として主張できます。
尚、RM-1は電源は電池でどこでも携行できます。

電気を止めて測定するメガでは負荷側との接続は通常切れてる
場合が多く、実際の運用状態での負荷も含めた絶縁管理という
点でもI0r管理は優れています。
I0rは負荷を生かした通電状態での絶縁管理ができます。
リーククランプメーターは高周波を除去すると言っても150Hz以上
のみとかで限定的な範囲であくまでI0です。
乱暴な言い方をすれば値は別にして★I0rが測定できる
測定器で測定した結果がどうかが重要なんです★


原理的にそうでなければそれはIorではありません!
電気の詳しい人からI0ではI0c含むから停電して測定した
メガでないとダメじゃないの?なんて言われるかも。
余談ですがI0cは交流を扱う場合に発生する現象ですから
メガは直流電圧で測定するので純粋に対地間抵抗のみを
測定できるのです。
そういう点でメガが低圧回路の絶縁判断の要と今もされる理由
で同様になぜあえてI0rなのか電気主任としてきちんと説明
できないといけません。
このI0rの意味をわからない方は意外に多いのです。

高周波も除去できないクランプメーターで計測した漏れ電流
を絶縁管理として満足してる方もたくさんいます。
昔UPSを更新した時に変圧器B種接地で500mAも出た事があり
フィルター機能をONにすると30mAに低下しました。
あの時電流を計測するだけのクランプは使えないと思いました。
★負荷によっては相当の誤差が発生するから現場管理では
必ず高周波をカットできるクランプメーターを最低限使用
しましょう★
(リーククランプメーターという)
もちろんそれとRM-1を組合わせて管理すれば最善です。
ちなみにその時は入力側に絶縁トランスを入れる事でこの
問題を回避できました。

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