2015年8月12日水曜日

電気主任技術者 仕事:漏電発生時対応

夜中に自宅に夜勤者から電話があり出勤する事が年に数回あります。
そういう場合ほとんどが変圧器の地絡(漏電)が警報設定値を
OVERしたままで下がらないという連絡です。
この連絡を受けて面倒だから明日朝調査なんて判断で火災進行
に至れば電気主任技術者解任だけでは済みません。
まず業者は翌朝しか来れないので朝までにどれだけの対策が
電気主任技術者としてできる?まず故障箇所を見つけるのが
先決でそこで必要なのは比較対象のための正常時の値です。

年に1回の電気を完全に止めて測定する絶縁測定も大切ですが
そのメガが10ヶ月前のでは一応は法定的な点検をされてるけど
この段階では意味がありません。

私の経験上ではI0r(抵抗分漏れ電流)が問題なければ絶縁値も正常。
停電しなくても絶縁管理が可能なこの方法はとても有効な方法
だと思っています。
TRのB種接地に流れる電流は単相3線式では相殺現象があるので
それで問題ない。という発言は電気に詳しい方に指摘されます。
やはり店舗の分電盤主幹や各系統事の値が一番説得力がある!
こういう感じ毎月しておけばそんな異常時に比較ができるのです。

これが単相三線式の相殺現象の理屈で変圧器のとこで50mA
を超えたら調査する義務はあります。
単相三線式TRのB種接地電流とはRとTの差電流の事で意外と
ご存知ない方が多いと思います。
漏電した量が単純に加算して流れてるわけではありません。
②は絶縁抵抗がR1=0.01MΩ、R2=1MΩの場合のB種接地線
に流れる電流を求めた物ですが、実際は対地間静電容量分(I0c)
があるのでこれより大きい電流値になります。
このI0cが多いと誤報もありえますが300~500mAもあればそれは
完全にどこかに不良箇所が必ずあります。

まず変圧器二次側の各MCBでのIor計測でどの回線が悪いか
判明させてそれが1~3Fなら各階の主幹で更に測定すれば
階が限定します。
そんな感じで最後はどの店舗まで行けばその店舗の各MCB
二次側でIorを計測すれば故障回路は判明します。
切れず変圧器まで地絡警報という事はELBではなくMCB回路
につながる何かの機器や配線が不良です。
(ELBなら通常テナント盤なら30mAでトリップするはず)

I0rクランプメーターは10万円するのでどんな現場でもはないでしょう
があのテンパール工業が安くて便利なRM-1というI0rを計測できる物
を2万円程度で販売していて今日はこれでの操作方法を説明します。
たとえばCVTケーブルでI0rを計測する場合
このケーブルは1Φ3Wで200AのMCB2個に給電しています。
そこから更に数店舗に電源を送る回路で飲食関係のため日中は負荷
が高い系統です。
普通のクランプではCVTケーブルを3本同時にはさむ限界がありますの
径が80mmの大口径クランプを使います。(mA計測ができる事)
測定値の9.7mA(約10mA)がI0ですがこの中にI0rつまり
抵抗分漏れ電流
がどの程度あるのか?

テンパール工業の抵抗分漏れ電流測定用ユニットRM-1を使用します。
機能選択で電源種別を選ぶ、レンジ選択とは現在発生してる
I0の値に合わせる物で10mAが発生してるから20mAのレンジを
選択して今回はセッティングは完了です。

ケーブル2線を電圧クリップしますが被覆の上からでOK。
次にRM-1の出力線を測定クランプに通します。
つまりこの回路に発生してる対地間静電容量による漏れ電流
I0cと逆位相の電流を流す事で互いに相殺させI0rのみを
値としてクランプに計測させるのが原理です。
(電圧を基準ベクトルとするから電圧入力が必要)

次に上で赤矢印の丸いのを回すとクランプの数字が変化
していくので一番低い値になった時の値がこの回路のI0rです。

最初約10mAであった指示が6.1mAと下がりました。
これがこの系統の正常時のI0rの値でこういう推移を管理
しておけば何かにつけて役に立ちます。
ケーブルには数社のテナントが絡んでいるので調査のため
とはいえ無関係なテナントの電気を止めるのは店長や支店長
の許可が必要
で夜中には極力電話したくないので電気を
止めての絶縁測定は極力避けます。
飲食では食品があるのでまず停電なんてさせてくれません。

ただ相当に破滅的状態で今すぐ本格調査しないと火災にまで進行する
可能性がある場合は貴方の責任において電源切りを実行されてください。
電気主任技術者には緊急時その権限はあります。
その場合必ずそれまでに計測した状態で異常値を示す測定器の
写真を撮っておくのが一番大切です。

電気を強制STOPさせて何がしかの障害が発生した場合本当に
そういう現象が発生していた証拠になります。

屋外配線照明とかで今すぐ問題ないなら夜中に具体的調査は
高所で危険な場合もあるのでMCBを切りとして朝続きはしましょう。
飲食で何かの回線がダメなら店舗内のEPSにある正常MCBから
仮説でVAで配線を出しそこにコンセントを接続して機器を接続
すれば急はしのげます。

特に冷蔵庫は食品がダメになるので急いでください。
冷蔵庫に限らず重要設備回線不良では仮説で別電源工事
を私はよく行います。
(常に15mの長さのVAに4口コンセントを接続した物を自分
のデスクの下に2組置いています。
常に準備しておけばイザでも迅速な対応ができます)

夜中とかだと電気業者の会社も連絡してもつながりませんから
その場にいる電気主任しか応急処置ができないんです。
テナント財産だから関係ないと放置して損害が発生するとそういう
理由で何もしなかったなんて言って納得するテナントはいません。
前記事の話ではないけど"何のための電気主任なんだ"と
いう悪い評判をいろんなテナントに噂された上に以後何かにつけて
テナントが貴方に非協力的になるので、できるだけの事はすべき。

契約電力が1000KW未満のビルで適当に古い現場にはたぶん
変圧器(TR)の地絡警報とかないので漏電が発生していても気が
ついてないまま今日に至る現場もあると思います。
もしそうなら一度各変圧器のB種接地線をクランプメーターで
計測されてみてください。

実は300mA以上もある様ならそのTR二次側の系統に何かある!
その場合まずはI0rの程度を調べてそれが300mAもある場合
自分でわからないなら専門家に依頼するなどしてでも早急な対応
が必要と思います。

お願いして停電させてもらい絶縁測定をする従来の方法ですと
テナント機器は停止してるのでそこに原因があると意外と
メガでは発見できないケースがあります。