2015年7月16日木曜日

電気主任技術者 仕事:排水槽ポンプ制御不能対応

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飲食テナントから排水槽のポンプが正常に動かないとHELP
の電話があり点検に行きました。

この排水槽には厨房の排水が流れるのですが油処理が悪い
せいで槽内に岩の様な油の塊があるため起動停止用のフロート
が誤動作してるのが原因でした。
業者に頼んでまずは槽内を清掃してもらう必要があります。
ですが申し込みして完了までには数日かかりますからその間
は営業ができません。
あくまで仮設という事でこんなタイマーによる時間制御で排水
ポンプを30分に3分自動運転させる回路を既存回路に追加しました。
3分というのはお店の方から聞いた運転周期から決定
乱雑ですがあくまで修理完了までの一時配線です。
というか店主が慌てていたのでとにかく急ぎ私が対応する
しかありませんでした。

上運転用タイマーはインターバルタイマーといい、同じONとOFFの
動作を毎時間繰り返すという優れ物です。
15分未満の制御が必要な場合はデジタルタイマーしかありません。
がこういうのは1日10回くらいしか設定できない。
同じ動作を毎時間するとなると一番低コストで実現できる
のはこのインターバルタイマーしかないと思う。

2個使ってるのは自動交互運転をさせるためでまず既存の61F
の水槽制御からの運転回路をマグネット(MG)から外しました。
ここにタイマーA接点経由でコイルに200VをかければOK.
ONを3分、OFFを57分する設定でインターバル動作させる。
ただその開始は設定登録をした時間からでその設定登録を
30分ずらす事で1回3分運転を30分事にが可能になります。
これを2個使えば自動交互運転がラチェットリレーなどを
組まなくても簡単に実現可能なんです。

ラチェットリレーとは運転信号を受けるたびに回路を自動反転
させる物で父が電気主任をしてる工場に勤務してた頃に
コンプレッサーの自動交互運転回路に使用されていた。
ただそんなマニアックな部品なんて今すぐ手に入りません。

実際は営業時間外は厨房から排水はなくンプが運転すると空転に
なるため、店舗が営業してない夜中はポンプは動いてはいけません
その役目をするのが写真下のタイマーです。
詳しい人は写真を見ただけでこのタイマーはそんな使い方は無理
と思われるでしょうが、通常の照明用ではなく制御回路と主回路が
別回路になってるタイプでだから回路にも使えます。

これで問題は解決したと思っていたら4時間後にまたポンプが動かない?
え?あれって時間強制投入だからそれはありえない、と個人的にも
疑問を感じながら再調査を開始しました。
なんと今度は2台の内1台のモーターが短絡して焼けていました。

お店の方の話では数日前からポンプが1分間に10回もON-OF
Fしていたらしくこういう現象を放置すると正直まずいです。
(短期間に発停を繰返すと起動の熱でモーターの絶縁が劣化します。)
私のとこに連絡が来た時は寿命末期だったんでしょう
対地間の絶縁抵抗はOKだからモーターのコイル相互の相間短絡と
いう現象です。とりあえず1台だけでも壊れてなくて助かりました。

故障調査をしたところ盤内のMCB下で電流を計測したら18A程度の
運転電流のはずなのに100Aも流れてマグネットもうなり酷い状況。
急速な電圧効果でマグネットは状態保持できずに即時外れてしまう。
特に切れる時に凄いスパークをしてるのでヤバい!
気がつくのが遅ければ火災の可能性もあると思う。
それとこのテナントさんの盤はTHRがなく電子制御の基盤で過電流
をTRIPさせてるみたいですがなぜかそれが動作しない?
モーターブレーカーは定格より大きな電流が流れても少し時間差
で切れないのでそのために過電流TRIPが別に必要なのです。

試しにマグネット(MG)二次側のモーター行きの配線を外し空で
回路を運転させたら、今度は火花、異音もなく回路は正常動作。
MGの二次電圧も正常で停止状態からの単相運転もないのを確認!
でも100Aもの電流が通過した以上は接点も焼けているために
これらも交換しないと単相運転が将来発生する可能性もあり危険。
これが発生すると運転中なら定格の約1.7倍の過電流で済みますが
モーター停止状態なら短絡でモーターを焼損させる事になるからです。
電気技術者は先も読んで改善させないといけません。
(上でMGの二次電圧を最初に確認したのはそのためでMG不良
で単相運転が発生してもモーターを焼きます。
)

修理見積もりのお仕事を頂きましたが水中ポンプはE社に取替させて
こうしたMGの電気部品も交換すると50万円はかかると思います。
儲かってるテナントなら電気工事も電気屋にさせて私は監督するだけ
なんだけど、今回は私がMGを取替して少しでも見積もり金額を下げて
あげないとこのお店では無理と思いました。
付合いの長いE社から水中ポンプ取替の見積を取り私の会社の
マージンを追加してテナント様には見積もりを提出します。
なんとか50万円を切る見積もりを作れました。
その後水槽清掃、モーター交換(水中ポンプのため一式)、MG交換
で正常に使用できる様になりました。

ただ過電流TRIPが動作してないのでメーカーに相談して基盤交換
を勧めましたがあくまでテナント財産だから私ができるのはここまで
こういう場合工事完了報告書にはその件も記載が必要です。
後で再度そういう事故が発生した場合に聞いてないと言われて
責任を問われる場合もあります。
実際に口頭で説明していても嘘を言って無償で修理を期待する
人は多い、特に商売人ってみんなそうです。

水槽制御について教えてあげる!
モーター運転電流が通常より極めて低い場合はポンプより
二次側(D側)の管に何かがつまり閉塞状態です。
吸込み側をS(サプライ)、出口側をD(デリ)と呼びます。
完全に閉塞するとモーターが空転してる様な音で無音に近い。
ポンプのD側にある逆止弁が閉塞しても同じ状態が発生します。
つまり負荷がモーターに乗っていません。電流値が一桁
同じ負荷が乗らないのでも槽内に水がなくてもそうなりますが
それだとエアーを吸い込む事でガーという大きな異音がするので
すぐにわかります。(フロート制御が正常ならありえない)
ただ物がつまってるのでもS側かD側かをまず知るのが大切!

機械的異音と共に運転電流が通常より多い場合はポンプ
の吸込み口に何か硬い異物がひっかかっています。
たいていそれは小さな硬い物です。(女性のメイク道具とか)
この場合THRなどが動作して過電流警報に至る場合もあり。
私はこれが発生するとMGの二次側を入替えてポンプを
逆転させます。
軽い物ならこれで取れて正常にできます。
三相は3本の内どれでも2線を入替えたらモーターを反転できる
ただモーターは反転可能でもポンプは回転方向が決まって
いて逆転はポンプへの負担が大きいので1回10秒間を間を
おいて3回程度しています。
特に吸込み側のこの現象は長期に放置するとポンプ破損に
至るため逆転でダメなら至急業者に連絡されてください。

逆止弁は何のためにあるのか?ご存知ですか
上の図でたとえばポンプは並列接続されているので通常
の1台運転でポンプAが揚水した場合そのままではポンプB
に逆流してしまいます。
つまりポンプAが運転中はポンプBに水が逆流しない様に
蓋が閉まってないといけません。
構造は簡単で中にボールがありポンプ停止中は蓋をした
状態でポンプが運転すると水圧で押し上げて蓋が開く。
尚このボールが固着して閉塞状態を経験しましたがそう
いう事があるのも知っておいてくださいね。
(運転電流が無音で一桁ならこれを開いて点検が必要)

ビルにある汚水槽、雑用水槽でのトラブルではまず運転電流
と音の状態でどの辺に異常があるのか、本に書いてあるから
ではなく実際に各そういう現象ではそうあったのを目で確認
して覚えた、つまりこれが私の経験。
通常水槽設備の異常はポンプが運転しない事による満水
警報で気がつく事がほとんどだと思います。
トラブルって常に想定外と隣合わせで本や知識のみで現場を
終息しようとする人は自分の想定内で物事を解決しようとする人が多い

本で勉強しただけの知識と実際に自分が現場で覚えた経験で
イザ迅速に役に立つのは後者です。
つまりいきなり来るトラブルに体が反応できるのは経験しかありません!
現場経験なしの電験1種所持者と経験10年の電験三種所持者
では現場で活躍できるのは間違いなく後者です。
父から今の特高現場で電気主任を最低10年はしろと言われています。
10年電気主任技術者としての経験があれば一生仕事には困らない
更にその働く現場が世間の評価の高い現場ならばどこの会社
の求人面接でも高い評価を受けます。

それが即戦力の本当の意味で免許、資格のみは即戦力とは言いません。
だって資格を持ってるだけではそれを実践に生かした証がないのです。
資格あくまで扱うための資質を証明する物で実際に扱い経験を身
につけた人を即戦力として企業は求めています。
もし20階建てくらいのテナント、お店などがあるビル電気主任になれたと
してそのすべてで発生する電気に関する相談窓口となり現場を
こなしていくという現実又は工場でも急にラインが停止した場合
貴方が先頭になり対処しなければいけない。
常にそこでは相手の思惑が絡み、相手又は自社の損失を最小限
にする気配りと対処をしていかないといけないのです。
それはいくら本で電験の勉強をしてもわかりません。