2015年10月15日木曜日

電気主任技術者 仕事:絶縁管理基本

絶縁管理とモーター関係の故障対応は電気主任技術者の一番の
お仕事でこのPageを前半として二部製で私の絶縁管理について
の考え方と方法を記事にしました。

前回I0r(抵抗分漏れ電流)の前半記事になるのでまずはこの
Pageで絶縁や漏電の意味を知ってね!
漏電は電気屋の永遠のテーマです★これは停電作業で
毎年お世話になってる保安協会の方が私に語った言葉です。
どんな現場においてもこれは共通する最重要テーマですよね。
何度考えても過ぎる事はなく火災予防の観点から私も関心事項。

どうして100V回路の絶縁抵抗は0.1MΩ以上必要なのか
私も今の会社の電気主任技術者となって何度かその質問
を受けましたが私は父から習って知っていました。

人間が電気を感じ始める電流を0.001A(1mA)と定義
した場合、電圧を100Vとした場合10万Ωつまり0.1MΩ
これが答えです。(オームの法則より)
ですから漏れ電流で管理する場合でも1mA未満となって
います。
200V回路ならば同じ1mAが限界とするなら0.2MΩで
一般によく見るこの表の根拠はここから来ています。

そもそも漏電とは何なのか
昔こういう実験を会社の設備でしてみました。
漏電とは配線に流れてる電線が絶縁劣化して電流の一部
又は全部が漏れて違う導体を通り配給元の変圧器に戻る現象。
その最終戻り先は漏れた電流に限り変圧器のB種接地線です。
たとえば盤の中にある三相交流の配線をすべて一度にクランプ
で挟んで測定すると絶縁は正常なのでほぼ0の6mAです。

次にケーブルを1本だけ外す、つまりこの1本分の電流が
外部に漏電したと考えて残り線をすべて挟み計測すると
脅威の8250mA(8.25A)となりました。
(上の指示単位は1/1000のmAです)
この値は外した1本の線と同じ値で線をすべてクランプ
で挟んだ時に検出される電流は漏電量と同一
です。
この性質を利用してクランプメーターで漏電量がわかります。
又貴方の家の分電盤内にあるELBもこの性質を利用して
動作しています。

違う導体を通りとはどこなのでしょうか?
昔父が電気主任をする工場に勤務していた時にある機械が
漏電をしてしまい父から練習のために私に調べろと言われ
いろいろ実験をした時の事を紹介します。
もうその機器は古く更新するつもりだから壊れてもいいから
という話で自社工場だからこそできた事です。
接地端子につながる機械の接地線を通電状態で外してみた。
理論的にこれで非接地になり見かけ上漏電は停止するはず。
と思いましたが変圧器では漏電が継続していました。

つまり正規の接地線を外しても今度はその機械の金属箱の
どこかから構造物の何かを通じて漏電は継続したのです。
電気って見えない存在で流れる経路があればどこでも流れる。
だから漏電が発生した変圧器のB種接地までの経路を正確
に特定するのは無理なんです。
逆に言えば★これが漏電の怖さなんです。

⇒私のブログの最新記事へJAMP

これは空調制御盤のノイズフィルターが焼損した時で
この時は変圧器で低圧地絡警報LGRまで出ました。
だからけして漏電は安易に考えられない場合も稀にあるの
地絡と漏電の違いは漏電とは電気が漏れる現象
を単に意味してその漏れた電気がアースに落ちる場合を
地絡と言うんだけど建物内ではほぼ同じと思っていいです。
ですから漏電を感知する装置を地絡継電器と言います。

とにかく地絡警報が出てもB種接地で計測して異常なければ
問題ないけど連続して数百mAの電流が継続してる場合
は大至急原因を確定させないと火災に至る場合もある!
夜中2時に呼び出しがあり何回か私は出勤した事あります。
★電気主任技術者に休みだから明日にしてください。は
許されないのでその覚悟を持ってこのお仕事はして!

ではこの後で説明する対地間静電容量を通じて仮想の回路を
流れるノイズや高調波は大丈夫なのか?
電力のエネルギーとは同じ周波数の電圧と電流の間でしか
発生しない
ので商用周波数の回路においてそうした物では
火災を誘発する様な熱は発生はしません。
ただ低圧地絡LGRを誤動作させるイタズラはします。
不平衡三相交流の電流があった場合、その中で電力Wとなるの
は電圧と同相の成分だけという法則と同じ理屈です。

絶縁抵抗とは何を計測しているのか
単相回路で言えば対地間との抵抗値を計測しています。
ただこれを計測するにはDC電圧でないと計測できない
ので回路のACを停電させてメガでDC電圧をかけてから
測定を行います。
DC電圧をかけた場合はこの後に出てくる対地間静電容量
は発生しないので純粋な対地間抵抗値が計測できます。
この対地間抵抗にAC通電中流れる電流がI0rです。

横に何かコンデンサーの回路がありますが結論を言えば
ACを通電すると対地に対して静電容量が発生してイメージ的
にはコンデンサと大地で接続された状態になるのです。
この時の静電容量が電気屋さんがよく言われる対地間
静電容量と言われる物です。
この対地間静電容量にAC通電中流れる電流がI0cです。
まず習うより慣れろです。ACを使うとコンデンサで
回路が並列に接続されると今は思ってください。

時々絶縁抵抗の記載で無限大の意味で∞の記号を書く方が
いますが無限大の抵抗なんて世の中にありません。
たとえば100Vメガは20MΩ以上は計測できません。
その場合は∞ではなく20MΩ以上と書くのが正解です。
(250Vメガなら50MΩ以上、500Vメガなら100MΩ以上)
細かい事を言う様ですがメガ測定で∞なる記載をする方を
見たら漏電とかそういう事をあまりわかってないと私は
感じてしまいます。
各電圧のとこにメガ値記載がありますがあの意味が何なのか
貴方は疑問を持った事ありますか?

だけど実際のメガの指針を見たら確かに∞の記載があるね
でも世の中に完全なる絶縁体は存在しませんから∞なる記載
は厳密にはおかしいと私は思う。
私も針式が正確だと思うから使ってますが時々妙に絶縁がこの
指示でいう∞が続くと本当に電圧が出てるのか逆に疑いを持ちます。
厨房やポンプ室設備など水が絡む場所であまりに良すぎる値が
続くいた時は特にそう感じます。
そういう場合はあの検電器をメガの両線で挟み絶縁測定開始!
パット明るくなれば電圧は出ています。
但しそういう見方はネオン型検電器に限ります。

人体に微小電流を流し点灯させるネオン型検電器が一番確実。
そのため100Vと200vでは微妙に明るさが違うので簡易的
に線路電圧の違いを知る時に私はこういう見方を時々します。
あくまで簡易的だから絶対ではテスターで計測はわかってる!
貴方が使う非接触式検電器ではできません。

単相3線式の200Vは対地電圧100Vなので明るさは同じ。
従い単相3線式の200V照明回路の絶縁は0.1MΩ以上です。
200V照明だから0.2MΩ以上とずっと思っていたんじゃない?
(ただ三相電源から出した単相200V照明なら0.2MΩ)
メガの使用電圧の区分は線間電圧ではなく対地電圧です。
今一度法律の表をよく読んでください、対地電圧とあるでしょ?

対地電圧の意味がわかってないとなぜ200V回路なのに0.1MΩ
か理解できないでしょう?
確かに単相三線式において矢印間は200Vだけど対地電圧とは
その線路から接地の間の電圧
の事です。
必ずそれは中性線が接地されてますからこの図を見たら対地電圧
が100Vになる事はわかったと思います。
簡単に言えば地に足のついた人間が素手で触れた時に人体に
かかる電圧を対地電圧
と言います。
現役電気主任技術者でも意外と気がついてない人が多いです。
嘘だと思うならテスターで接地と線路間の電圧を測定されて!
絶対にテスターの変わりに100Wの白熱電球とかで線路と接地
を点灯させない事、変圧器で地絡警報が出ますから!

テナントさんから何かの家電がビリビリする気がするから調べてと
言われて100Vメガのアース端子をどこにつけたらいいか
わかりますか?客先でこの場面は結構あるので覚えておいて
間違えてもプラグの間にメガしたら中の基盤を壊す可能性あり。
線間メガとは接続される機器を外して線路間の絶縁を計測
する行為でこういう機器単体の状態を知るのにする行為じゃない

家電は交流で稼動する物でそこに線間に直流の100Vをかける
のは交流と直流では電気素子の反応の仕方が異なるので
電圧値は問題なしでも思わない故障になるという意味です。
よく100Vメガだから大丈夫なんて言う方がいますが電気の種類
が異なる点が私は直感的に嫌なんです。
通常の対地間メガでは内部の電気素子は動作しないため電圧
さえ気をつければ壊す事はありません。

これは私が勤務する現場の第二変電室にある500KVA変圧器
ですがこの緑の線をB種接地線といいここに上で言った
対地間抵抗によるアイゼロアール(I0r)と対地間静電容量
によるアイゼロシー(I0c)を合成した電流が流れるのです。
漏れ電流(I0)はI0rとI0cを合成した物です。
ただ互いに90℃位相差を持つ関係なので単純な+算には
ならないのはわかると思います。

静電容量のリアクタンス(交流抵抗)は1/2πfcなので周波数
に反比例するため線路に存在する高い周波数に対しては
抵抗値が低いためにI0cにノイズなど高周波成分が流れて
きて見かけのB種接地線の電流違が増えてしまいます。
これにより変圧器で地絡警報の誤報が発生するのです。
私の現場でも忘れた頃に一瞬だけそれがあります。
ただすぐ変圧器のB種接地で計測した時は影も形もなく
出所は不明な状況です。
きっとこの変圧器の二次側のどこかのテナントの何かの装置
が悪さをしてるのでしょうが稀にしか発生しないため原因究明
はしていません(一瞬でできません)

ある幹線の漏れ電流I0は約10mA(9.7)ですが

I0rのみ計測すれば約6mA(6.1)となります。
ではIocは逆にどの程度の量なのでしょうか?これを読んでる
方は電気知識がある前提で言えば10=6+jI0cと考えたら
8mAがI0cなのかなと思います。
線路にあるノイズや高調波の全量がI0cに流入してるとは思い
ませんがこの分野もこれ以上踏み込むと奥がDEEPです。
一般的には私がこのBlog記事で取り上げてるこのI0rを
勉強していけば漏電の本当の意味を理解でき現場や職場
で恥をかく事はないと思うよ。

このI0rのみを計測して通電状態での絶縁状態を測定する
のがI0rクランプメーター
でリーククランプメーターも
高周波を除去できるのでかなりI0rに肉薄する測定が
できると思いますが完全にV/Rの値を計測はできません。
いい変えればI0rとは電源電圧と同相成分でこれを計測
するにはその回路の電圧の検出が必要です。
その位相を基準ベクトルとしてその90度進み成分をI0cとして
除去するのが基本的なI0rクランプメーターの仕組み。
リーククランプメーターは何Hz以上の周波数を除去すると
いう方法でI0r以外の除去の仕方が異なります。

I0rクランプメーターで私が変圧器のB種接地でI0rを測定
した時のですがここで変圧器二次側電圧をクリップしています。
充電部を操作するので電気初心者には操作させてはいけません
特にこの位置はMCBの一次側で保護回路が効いてないため短絡
させたら大電流が流れ、顔面大火傷をしますから慎重さが大切!
こうした機器の設置レイアウトの関係で測定に危険性を伴う場合
もあるのでこの作業はやはり電気主任技術者がすべきです。

変圧器のB種接地線をはさみI0r計測を行います。
RedとBlackの線が上とつながっています。
I0のみの測定ならばクリップ作業は必要ありません。

各変圧器のB種接地は最終的に接地盤の中の1個の接地線
に共有接地をしていて各電気室には各接地盤があります。
極まれに共有接地の影響でもらい事故といい地絡してない
変圧器が地絡した変圧器の影響を受ける時があります。
高圧のDGRみたいに低圧は方向性がないせいでしょうが
今まで一度だけその現象に私は遭遇した事があります。

接地盤を開けると接地ターミナルがあります。
記号が見え難いけど左の青いクランプが挟んでる接地線が
変圧器のB種接地に各接続されてます。
隣の黒いクランプが挟んでる接地線は10ΩのA種接地配線です。
A種接地は高圧用または特別高圧用の機器の外箱の接地
だからフレームアースで計測値は0でした。当然ですね!
(尚接地盤の接地抵抗はアーステスターで1年に1回測定義務
があります。もしかしてされてないんじゃないですか?)

アーステスターで接地抵抗を測定する時は負荷側からの接地
を外さないといけないため停電作業の時しかできません。
通電状態でそれするとヤバいので絶対にしないでね。念のため

黒いクランプメーターでB種接地配線を計測、右は通常計測で
左は高調波フィルターをONにした場合です。
125mA⇒110mAに低下してるのはそのせいで対地間静電容量に
より載っている成分をいくらか除去したから低下したのです。
それは電源と90度位相の進んだ領域I0cにあるので高調波
フィルターでは限界があります。
この時はI0rは測定するための付属キットを忘れたのでI0rは
測定してませんがI0rなら確実に100mAは下回ると思います。

現場を見た事がない方は機器や配線が絶縁劣化して漏電した
電流だけが接地線を流れる
と思われてるでしょうががこの様に
漏電とは無関係な成分まで同時に流れる事を理解してください。
その原因は交流を電源として使用する事により対地間静電容量
が発生するからです。

大昔の様にたいした機器がない時代は電気を止めてメガ計測
ができていましたが今の時代はそれが容易にできません。
毎月絶縁管理をする場合はこの電流で判定するしかない!
ただこの電流で絶縁判断をする場合はその余計な成分を
除去できる測定器が必要となりますが必要性を感じた方は
勤務する会社に進言して購入されてくださいね。

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