2015年10月14日水曜日

電気主任技術者 実務:I0r(抵抗分漏れ電流)

これは2年前の3月11日に起きたトラブルです。
火災発生により中央監視PCがアラーム表示、空調機連動停止
と何これ?と言いたくなる事態が発生しました。
火災対応は防災係がするので私達は特別役割はないのですが
とにかく現地に私達も全員で直行しました。
警備の方が私を見つけるなり"京子ちゃん盤から煙が出とるで"
と広島弁で叫ばれました。  え?わ・た・し

テナント分電盤が急に焦げ臭くなり煙が出てきたのでびっくりした
店長さんが店の近くにあった火災発信機のボタンを押されたのです。
とにかくその盤の扉を開け主電源MCBを切りました。
電気火災ではまず電源を切り通電を止める事です。
EPSのMCBで切れば安全に止められますが隣のお店まで停電
させてしまいます。

今回の原因は同タイプの盤でいうとCTの二次側が切れたために
開放状態となって絶縁破壊をしたのです。
飲食の人というのは分電盤を切って帰る人が多くその時に扉が少し
開いていてそこからネズミが進入して線を切ったのです。
盤の線の隙間に黒コゲになった遺体も見つかりました。

CTは一次側に常に一定電流が流れてるために二次側の電流が0
つまり開放させると電圧が理論的には無限大となり絶縁破壊を
起こします。
変圧器の公式で一次と二次の関係はV1I1=V2I2だけどここで
I1を固定値でI2が0の時のV2を式にされて
(V2=V1I1÷I2でI2が0でI1が0ではないから∞)

ビル、工場では火災予防は重要なテーマですが今回の様な原因
以外で電気主任技術者が問われるのは漏電が原因により
消防が係わる様な漏電火災事故が発生した場合です。
つまり初期消火できない半焼以上の店舗火災に至った場合。
電気担当としてもどの様に漏電について取組みをしていたのか?
火災予防に関しての指導、漏電現状把握など問われるでしょう。

ただ実際は店舗内はすべてテナント財産で自由に入室して点検
などは自由にできないのが現実ですし客も嫌います。
矢印まではビル側の責任で工事をしますが分電盤を含めて
二次側はテナントが入居時に業者発注されます。
大家さんが家賃を払ってる住人の家に自由に入室したりあれこれ
家の中の事まで言えない理屈と同じです。
でも漏電火災が発生したらそれは消防には通りません!

私が勤務するビルでも私が来るまでは何もされてなく私から
部長を通じて各支店長、店長にお願いして月に1回だけ
目視点検と絶縁調査をさせていただける様になりました。
それは停電をしない方法だから許可してくださったのです。
私のBlog読者はご存知だけど電気を止めて絶縁測定を
行う方法ではなく、通電状態でI0r(抵抗分漏れ電流)を
分電盤主幹で計測
して管理データーとして残しています

★I0rの有効性は現在広く認められています。★
絶縁測定メガとは停電させてDC電圧で対地間抵抗を計測する
行為でIor値はそれにより流れる電流の事です。
I0rを監視する事は従来のメガ値を監視する事とも言えます。
I0rの利点は通電状態での監視ができる点でこれを知らずして
これからの電気主任技術者は何も語れません。
これはあのオムロン社のシステムですがこうした装置による
遠隔監視システムもすでに現場で採用されている状況です。

★実際に通電状態での絶縁管理をする方法を説明します。
書式はどうでもいいですから必ず測定が終了したらその
テナントの方に測定値の横に確認の上で印をついて
もらいましょう。

印から後でその店の誰が確認したかもわかりますしこれは
捏造ではなく実際に実施した測定値という証拠となります。
もし漏電火災が発生してその検証をする場合でも電気
主任として管理状況を消防にも示せる。
特に数値によるこうした比較データーは説得力があります。
客先にも毎月管理してる事を知ってもらう事で信頼が
生まれます。

この時の盤内の目視で配線の焼損を発見した事もあります。
測定だけでなく中を月1程度確認するのはやはり必要!

貴方の現場でもぜひされる事を強くお勧めします。
今何もないから必要ないと楽観的な人が多すぎるよ。
これは顧客と互いのためと信頼の向上につながります

それにはここで述べる測定器を会社に進言して購入してもらう
必要がありますが私の記事99と100を説明材料に使っても
構いません。だからこそ特別丁寧に編集したんです。

有効な通電状態での絶縁診断するために私が使用するのは
三和電気計器のI0r100です。
I0rを計測するには専用の測定器が必要になりますが
今はNETでならば8万円を切る価格で購入できます。

通常はI0とI0rの計測ですが、切り替えると絶縁抵抗値
と線路電圧を計測します。停電せずともメガ値が!
これが噂に聞く活線メガという機能です。
この測定器は電気業者でもほとんど持っていません。
I0rとVがわかるのだから抵抗はオームの法則でV÷I0rです。
(通常の漏れ電流I0はI0cを含むため使えません)
これが活線メガの測定原理です、感動しましたか?
ただ活線メガは法的にはまだ認められてないため目安として!

Ior、活線メガを利用するには記事100で説明した様に付属
キットで電圧のクリップ作業も発生します。簡単!

もう1個はテンパール工業のRM-1です。
これは2万円程度で買えますから電気主任技術者をするなら
最低限RM-1は会社に進言して買ってもらってください。
質の良い電気管理には相応の測定機材が必要です。

レンジ選択はテナント店舗主幹で計測するなら20mA
各MCB単体で行うなら2mA、EPSなどのケーブルで行う場合
は20mAか100mA設定にしてください。
(漏れ電流が20mA未満のケーブルならば20mA)
丸いのを回す事でI0rを探していく物で実はこれ自体が
測定器ではないのです。

I0r100では太い幹線ケーブルが挟めないため別の口径
が80mmのクランプメーターでまず挟みそこにRM-1からの
出力線を挿入します。マルチ計測器MCL-800D
RM-1は計測部分とノイズカット部分を持たない事であの価格
を実現していますからリーククランプメーターが別に必要です。

つまり発生してる対地間静電容量による漏れ電流I0cと
逆位相の電流を出力するのがRM-1でそれをクランプメーター
に同時に流す事で相殺させてI0rを計測させるのです。
丸いのを回すと別設置のクランプメーターの指示が変化し
地道に人の目と感覚で探して一番低い値になった時の値が
I0rの値です。(少し練習が必要です)
そのため太い幹線ケーブル以外ではI0r100を使用しています。

高調波をカットするリーククランプメーターと言えど完全に
60Hz以外を除去できてるわけではなくてその値がI0rに
近くてもI0rを計測してるという事実だけが必要なのです。
年に1回保安規定にもとづきメガをしてると言ってもその間の
絶縁状態変化はメガでは把握できません。
(毎月停電しメガが可能な希少現場ならそれが最善です)
以上の事から通電状態による絶縁管理はこれからの電気主任
は目指すべき管理方法
の一つと言えます。

ケーブルでのI0r値は私の現場では通常一桁~20mA程度
テナント分電盤主幹で10mA未満ですね。
ただテナント分電盤内のMCB二次側点では★必ず1mA未満
普通のクランプメーターではノイズやI0cの影響で1mAを
越して表示される場合があるのでI0r計測が必要です。
ELBなら30mAトリップしますがMCBだといくらでも漏電します。
そうこんな状態となるので一目瞭然で異常はわかります。
過度な漏電が発生するのは必ずMCB回路です

一番下の450mAがテナント分電盤内でここに電気を配給する
変圧器のB種接地線電流が上左、その不良箇所MCBを切ると
516mAがたったの約3mA(3.60mA)にまで激減しています。
すべてに原因があるとは真実です。
(尚小数点をきちんと見て測定ミスには注意が必要)

大きな声で言える事ではありませんが私の現場でも事情で
保安規定にもとづく停電した上でのメガ測定ができないポイント
がいくつか存在します。そんな場合I0rで行います。
現在の法的条文では漏れ電流管理は1mA未満とありますが
これは対地電圧が100V回路なら0.1MΩだからオームの法則
で逆算した安易な値なんです。

(対地電圧200Vなら0.2MΩで同じく1mAと変わりません)
逆に幹線でそれを適用した場合はまず1mA未満は無理です。

なぜかわかりますか?
1回路が1MΩある回路をもし10回路一度に計測したら値は0.1M
では20回路なら0.05MΩですよね。(100V回路は0.1MΩ以上)
もし主幹をそういう状態で計測して0.05MΩだからこれにつながる
20回路は絶縁不良と言うのはおかしな話ですよね。
幹線では漏れ電流が1mAにならないのも同じ理屈です。
(幹線メガとは上下のMCBを切り電源から浮かせた状態で計測
するのはわかっていますが、たとえとして説明しています。)

幹線漏れ電流が10mAという過去記録を見た時に消防の方でも電気
の見方に詳しくない方の場合はその条文だけで"1mAでないから
おかしいではないか
"と言われると思います。
そういう場合は冷静に自信を持って教えてあげたらいいのです。
幹線では最大配給電流の1/2000未満を漏れ電流とする
あの法的基準で判断します。

ですがそれは限界で昨日まで10mAしか漏れ電流がないのに
100mAに急になったのならばたとえその1/2000未満であっても
まず間違いなく何かの異常が負荷側で発生しています。
★けして法定値未満だから良しではなく、電気主任が
その異常変化を見落としてはいけません。
そこでその後に電気火災が発生したなら完璧と思っていた
データーが実はそうでかった
意味で自分の不手際を逆に
証明する事になりますから★データー変化には特に注意!
知識だけの人は単に基準より外れてるか?しか見えてませんが
現場経験のある査察担当が見ればその異常に気がつかれます。

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