2017年9月6日水曜日

電気主任技術者 スターデルタ始動BOX自作

どんなビル・工場でも空調機やファンなどでスターデルタ始動方式は採用
されモーター始動方式でもっとも一般的な方法
です。スターデルタ始動は
教科書では個別のリレーやタイマーの組合で行いますがそれらと同じ動作
を電子動作で行う基盤制御も最近は少なくありません。
ただ故障した場合、基板交換は簡単ですが初期情報の入力がイザでは
面倒で他の設備の方では無理かも?...ですから私が休みの日でも職場
の誰もが応急処置としてスターデルタ始動ができる物がほしいと前から思
っていました。ありそうでない物は自分で作るしかないです。
空調、熱源設備は業者が定期メンテしてますが通常動力盤などはされて
ない現場が多いので故障時は電気主任が対応しなくてはいけません。
電気主任を目指す方はそれは心準備されておいてください。

基盤制御の故障症状の特徴は電路は正常なのに過電流や欠相とな
り運転その物ができないので手動も自動も効かなくなるのです。
又手動動作はリレーではなく基盤上の動作なので細工という裏ワザ
もできません。
故障すればユニット一式取替のみです。

この始動BOXは工場で父が使用していた自作の同じ機能をする物だけど
最近くれたのでこれを利用してみようと思いました。ただこのままでは私が
管理する現場では基盤との接続が違うので使えない、又できれば24時間
タイマーも追加して運転停止も自動化して完成度を高めたいです。今のま
までは修理まで現地で朝晩、誰かが操作をする必要があります。

違う支店ビルの電気担当もスターデルタ始動が故障したら紙の上では
理解可能、だけど自分で対応できるか不安があるとは言っておられまし
た。直入れなら最悪こうすればマグネットをON状態にできるから簡単な
んですけどね。モーター電圧とマグネットコイル電圧が同じならモータ
ー回路の電圧をコイルにタンブラSWでかけます。タンブラSWでモーター
の起動・停止をするので自己保持回路も不要です。とにかくテナントか
ら苦情が出たら会社からどういう対応をしたのか報告書提出や対応が
悪いとお叱りを受けるので故障が発生した時の迅速な対応方法を
現場で実現させておかないといけません。


トラブル発生時に余裕があれば黒線はTHRを経由されてください。
THRはマグネットの下に連結してあります、こうするのが100%の方法
です。ただ私と同じ基盤制御ではCTで電流を読んで過電流もそれで
判定してるのでTHRがないわけです。ですが運転できませんが許され
ない状況ではTHRなしでも運転できる様にしないといけない状況も時
にあるのです。

もし上をタイマー制御をするならこうすればいいです。今回使用した
パナソニックのタイマーは照明用の有電圧接点がよく使用されます。
ここで使ったのは同じ外観でも無電圧接点ですので注意してください。
このタイマーはTB15601Kタイマーより安い価格で同じ機能を持ちま
すがTB15601Kの方がコンパクトで停電保障の電池持ちがいいです。
恒久的に10年は設置したままというならTB15601Kが適しています。
応急的にSPOTで短期間使うならTB1101Kは賢い選択肢です。


直入三相モーターの制御回路が故障してすぐ処置不可能ならばこ
う仮設配線すれば時間制御もできます。予め準備しておけば取付
はそう時間はかからないでしょう。三相ST間でT相は直にS相はタ
イマー接点でマグネットのコイルに電圧をかけてるだけです。
どうして黒線1本でマグネットが動作するのか?とか思わないでね。
既存マグネットにタイマを取付する場合は故障中の制御回路からの
配線はコイル端子から完全に外してください。又補助a接点が使用
されてると思いますが通常中央監視PCへの運転表示ですからその
ままで問題ありません。これがモーターマグネットの基本結線です。

先に主回路の3本を外してからマグネット奥にある制御回路と接続
される2端子の線をすべて外します。次にこの2端子に用意した
タイマー回路を接続して完成です。こうして迅速にモーターを運転
させて営業時間終了後に本修理すればテナントへのダメージは最
小限に済みます。故障原因を機器を停止したまま調査するこれまで
の対応方法は時間がかかるので代替機能でスポット対応します。
あらかじめすべき事が決まってる事が一番迅速に処置できるのです。
これが私が考えた故障時の対応方法です。今回記事の本題である
スターデルタ始動BOXもそのために作成しました。

ここで今日の本題に戻ります。
まず私が管理してる現場にある空調機の基板制御接続口を使用しない
と誰でもが簡単に使えないないため基板を開放してその部分を剥ぎ取り
ました。つまりインターフェースの作成が最初に必要です。

それを始動BOXのここに取付けました。

24HタイマーTB15601KはBOX内には入らないので入線用の穴を
三箇所開けました。

基盤のピン構成の説明までは現場の取扱説明書にはないので私が
調べた結果こうでした。上カプラーは上段の右からが1番端子になっ
ています。スターデルタ始動ですが線番で11番がメイン、12番がスタ
ー、13番はデルタの各マグネットのコイルをONしてるのがわかります。
基盤上のLSIの型番とかで検索するとそれがどんな素子かわかるの
でそれで基盤上のパターンを目で追えば図面にないピンの意味も
わかりました。こういう作業では基盤のピン構成を発見する事が必要
です。たぶんこういう事を知ってるのは通常工場の技術者だけです。

基盤と聞くと中高年の方はフリーズされるかもしれませんがLSI等
で構成される中身は私もわかりません。BOX内のスターデルタ始動
タイマーに配線するのに各接続ピンがどんな役割をするのかだけ知
りたいのです。線番11は基盤上では1番ピンに接続されています。

BOXに内蔵していたスターデルタ始動専用タイマーの配線図を見
ながら各配線をタイマーのソケットに接続しました。7番と8番は必
ず接続しないとスターデルタ用のマグネットを制御できません。
5番でスターマグネット、6番でデルタマグネットを制御します。
尚、3コンタクト方式のスターデルタなら7番と3番を接続して1番
電圧をメインマグネットコイルかければ制御できます。個別にリレ
ーを2個使用してスターデルタ切替をする場合は同時投入され
ない様に互いにインターロックを組まないといけないけどこれは
一瞬のタイムラグ(Transfer time)まで考慮されています。
これ1個でスターデルタ制御が完結できる素晴らしい製品です。

配線間違えをして焼損事故を盤で発生させたら責任問題ですからど
んな簡単な事でも頭の中だけでなく紙の上で一度は検証を行います。
会社の設備に自作品を接続するのですから遊び気分ではないです。
配線数を少なくするためタイマー1番は使わずトグルSWの二次側電
圧で即11番には電圧をかけています。

直入れモーターはこの図面で言えば11番の出力しか使わないので
この始動BOXはこの現場ではスターデルタ始動だけでなく直入れのモー
ターでも臨時の起動BOXと機能します。だからどこの空調機でも使えます。
そうでないと誰もが何も考えなくても使える物とは言えません。


ソケットがなくてもタイマーのピンのとこにハンダで接続できない事
はないのですが本体固定の問題などもあり今回はソケット付で助
かりました。



私の保守範囲は22000V~100Vまでです。
トラブルというのはビル現場では対地電圧100Vの回路がほとんどです。
電気設備安全管理においては対地電圧で物事を考える癖をつけましょう。



次は運転時間設定用24HタイマーであるTB15601Kの接続作業です。
トグルSWが切りの時にTB15601Kのタイマー接点は有効に機能します。
もしTB15601Kが故障したらトグルSWを入りにすれば電源直送となるので
スターデルタ始動専用タイマーは使用できます。一瞬タイマー運転中に
トグルSWを入りにしたら?を考えました。私以外の人が使うので使い方
として考えられるすべてで正常動作&安全でないといけません。

つまりこういう配線をするだけです。

ソケット2-7が電源なので2から線(白)を出しタイマー電源S1に接続
S2はトグルSWの一次側にハンダで接続します。TB15601Kタイマー
が制御するのはスターデルタ始動専用タイマーにかかる電圧です。


配線の先端に先にハンダづけをしておいてから接続端子でハンダ接続
をします。この方が簡単にできるし盛りハンダ状態となりません。
トグルSW端子には材質の関係でハンダがつかないので手前の端子で
行いました。Alとか金属によっては普通のハンダが使えない事も稀に
あり。ハンダづけなんて...忘れた頃にする必要が発生しますから電気
主任を目指す方はLSIのピンのハンダづけまでとは言いませんが配線
程度はできる様になっておきましょう。

トグルSW二次側~7番端子の配線を途中で切りここにTB15601Kの
NO端子からの配線をジョイントしました。もしメーカーがこういう物を
作るとしたら基盤を作成して見た目も綺麗に作られるでしょうが接続
さえきちんとすればその違いだけで動作に問題ないです。TB15601K
タイマーは照明制御から回路制御まであらゆる事に使える優れ物です。

これで完成しました中の配線の接続を最後によく確認してからソケット
にタイマーを取付、本体カバーをしたら実際の空調機盤で使用してみ
ました。TB15601Kの固定だけどこういう金属と樹脂のフラット面なら
ば工業用アクリルテープで簡単に強固に接着できます。WIDEをあま
り大きくしたくないのと横位置ではビス止めが難しいので今回はこれ
で結合させました。

既存の接続を始動BOXに付け替えるだけで誰でも使用できます。
私が休みの日に空調機が起動しないトラブルが発生したらこれで
運転をしてもらい後で出勤したら基盤を取替・設定すれば私も楽
ですね。お休みの日に空調が動かないと出勤するのはなくせそう
です。(動力盤は業者メンテしてないので私が対応しないといけ
ません。
)

18.5KWの空調機で自動運転させましたが問題は発生しません。
この始動BOXは私がお休みで起動不能時に職場の方が使うのが
目的なので使用しても1日か2日程度しか使う事はありません。
このビルの空調機回路はTHRはなくCTで読んだ値を判断して電子
的に過電流、欠相、逆相を基盤制御します。従い始動BOX使用時
はMCBの短絡保護のみでモーターは運転しています。

通常マグネットの下にこういうTHRという物がありますがMCBは短絡
保護で過電流保護がTHRの機能です。このNC接点(b接点)は回路
電源線に挿入されモーター定格電流の1.2倍程度で制御回路通電
を切りモーターを停止させます。この現場では空調機モーターは最大
負荷でも定格電流の8割を超えない余裕を見て選定されてるので過
電流になった経験は一度もありません。その実績とあくまで短期使用
という条件で始動BOXを使用する事にしました。もし何かの事情で長
期にこの始動BOXで運転継続するならばTHRを購入しマグネットに
接続使用、THR動作時にそのb接点でBOX内の7番線を切る細工が
必要です。ですがそういう使用をするケースはないです。


これがスターデルタ回路ですが初めてこの類のモーターを見た時
に配線が6本あるので不思議に私は思いました。
本でしか勉強してないからで実際に配線を目で追い接続を体で覚
えておかないとイザでは何もできません。凡人ってそんな物です。
これらマグネットを動かしてるのが別にある制御回路で実際の配線
が意識できてこそ本当の動作が理解できるのです。
スターマグネットは方次側を短絡してあるのですぐわかります。又
は外線接続がまったくないのでも見分けられます。

私が管理する現場では5.5KWまでが直入れ始動でそれを超えたら
スターデルタ始動となりますが空調程度なら7.5KWでも全然平気。
実際工事現場で使う7.5KWの直入れ仮設排気ファンを見た事があ
ります。現場では3.7KWを超えると絶対にスターデルタではありま
せん。(内線規定は技術基準を補完する位置付けで絶対ではない)
様はそのモーターに接続される負荷しだいです。無負荷でモーター
を回すのと負荷をかけてモーターを回すのでは始動電流が異なる
のは想像できるでしょう。

これは始動時スター回路です。電圧がかかれば最初にこの
回路状態となります。こういう感じで現場で配線を見ながら
スケッチを書いてみてください。モーターにかかる電圧を√3
で割った値まで下げて始動させるのは承知の通りです。

≒10秒程度後にスター回路が切れてデルタ回路に切替タイマー
の制御で変更となります。基盤制御でない現場ではこの切替タ
イマーの在庫は1個は持っておくべき。始動異状はこの切替用
タイマーも大きな要因となるからです。
始動しないならば1.最初からまったく始動しないのか2.始動す
るがデルタに変更とならないのか、まずその確認。通常中央監
視PCのモーター運転表示はこのデルタ回路の補助a接点から
取っているだけなので現場に行かないと何もわかりません。
他の設備の方は電気主任の貴方の顔をただ見てるだけですか
ら貴方が行動しないと何も解決しません。

基盤制御でない通常のスターデルタ始動回路で最初から指導
しないトラブルが発生したら貴方ならどう対応しますか?

THRが動作してないか?してればメガ測定で絶縁確認をして異常
なければリセットで正常復帰するはず。THRでなければOFFボタン
をジャンパーしてONボタンを押す⇒タイマーRT接点をジャンパー
してONボタンを押す...通常はこれで始動するはずでたいてい切替
タイマー交換で直ります。マグネット絡みならMCMとMCSのマグネット
が投入されないとモーターは始動できません。MCSはMCMのa接点
とMCDのb接点があるのでこの2個の接点どれかが固着など動作
不良を起こすとMCSが投入されません。この辺が怪しいです。

デルタ回路に切り替わらないケースではMCDの上にあるタイマー
a接点が一番故障候補です。この様に切替タイマーは始動から
切替までに関係してるのでスターデルタで動作がおかしい場合
はまず切替タイマーを取替されてみるのが懸命です。

タイマーはプラグインですから取替は10秒もあればできますが
物がないとなるとできません。1万円もしないはずですよ。
真夏の暑い時期に空調が起動しないと笑い話では許してもら
えないので完璧ではないにしても相応の対応策をしてないと
何のために電気主任はいるのか?という結論になります。

タイマーも何もないというなら最後の手段は3個のマグネットの
操作信号線をすべて外して冒頭で説明したタンブラSW方式!
MCM、MCSを入⇒モーター起動⇒10秒後⇒MCSを切⇒MCDを入
の一連の動作を手動で行うしかありません。業者なんて当日朝
電話しても早くて昼一か下手すれば夕方にしか来れません。
そうなれば迅速な対応ができる様に今後の対策を提出する指示
がオーナーから出されるでしょう、できる事は電気主任も調査及
び修理すべきが自然な流れです。

(エレベーター、自動ドアッターなど業者FULLメンテ契約は除)

選任の電気主任になれたからと自分を高める事を忘れた働き方を
してると電気主任の対応力に疑問を感じ、選任を止めて保安協会
委託という選択肢もオーナーにはあります。経費が安い(契約電力
が1000KWのビルでも年間200万円もかからない)個人より圧倒的
な技術力です、ただ保安協会にさえできない事って何でしょうか?
私も彼らに負けない技術が勤務してる物件にはあるのです。それ
を作り出せるかこそがこのお仕事を長く続けられる秘訣だと思いま
す。すべき通常業務をきちんとしてるのは今更評価対象にはなり
ませんが、各種問題が発生した時どう処理するか?トラブル対処
こそ貴方をアピールできる最大のチャンスです。



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