以前説明と修理記事が別であったので1記事にしたのと読み難い部分は
修正してみました。シーケンス制御は電気計算の難しい理屈よりパズル
を解くセンスが大切だと思います。
このシーケンス制御の今回の機械はロールフィルターという空気の粉塵
を取る装置で空調機と連動し、電気集塵機と回転型フィルターが一体式です。
まずは回路動作説明をしますがこれがEasyに読めるなら受変電回路も見方
の基本は同じ。まず全体図でシーケンス制御を覚えるにはJUSTなボリューム。
市販の教科書ではモーターの主回路と制御回路が同じAC200V電圧とか
ですが現場では制御回路がAC24VやDCであるケースは割とあります。
DCや回路変圧器二次側の制御回路は非接地となりますから検電器は
動作しないためこの制御回路点検で使えるのはテスターのみです。
AC200V電圧部分なら点電圧があるかないかは検電器で確認は可能。
T1-T2間の空調機連動a接点がONになると三相電源のRT間から分岐
した単相200VがAのLINEでかかり自動運転用リレーCR2がONすると
Bの様にCR2リレーのa接点が導通状態となります。
結果端子番号11と12がONする事で自動巻き取り運転を開始します。
変圧器200/24Vがあるので制御回路の電圧はAC24Vとなります。
88は制御回路の運転用マグネットがONになると投入されてモーターが
運転を開始します。(自動巻き取りタイマー運転)
過電流によりTHR(49)が動作するとPINK矢印先のJはb接点のため
切れて本回路が完全停止します。(安全回路)
同時にTHRのWがONになると異常ランプOL1が点灯、同時に故障リレー
RY1がONとなりそのa接点で中央監視PCに故障を知らせます。
電源表示ランプWLが点灯してないならヒューズ切れという意味です。
ただランプ切れの場合もありますがこれにはランプテスト回路がない
ので点灯してない場合はまずAC24Vがかかっているか確認します。
ターミナルのRSTに電源線、UVWがモーター線、Eに接地線が各接続。
T1とT2間には空調機(AHU)のa接点回路を接続されます、つまりこの
装置は空調機と連動起動するわけで仮に空調機側の連動リレーが不良
ならT1とT2間をジャンパーすれば応急対応として機械を強制起動できます。
点検方法としては配線を外してT1-T2間の導通状態をテスターCHECK.
外部連動接点の導通を調べる場合は線をフリーにして行います。
今回以外で相互の機械が極端に離れているとテスターの電圧が吸収
されてしまい結果が出ない事もあるかもしれませんが同一の部屋の
距離なら大丈夫です。
もし導通が反応しないならば片線だけを外してその線に電圧があるか
検電器で確認、相手のa接点がONならば経由して電気は戻ります。
絶縁測定をする場合はUVW端子で行いけして電源MCBの二次側ではしません。
主回路と制御回路が共通電源の場合で電子基盤があるなら無用な故障の
原因になると思うからです。(電源の絶縁はI0の1mA未満で確認)
何でも電源MCBの二次側でメガをする人がいますが私は絶対しません!
(物によっては絶縁測定禁止とすると問題があるのでわざわざ"衝撃電圧
測定試験禁止"なる注意ラベルがある機械もあります。)
下図で端子番号12以降の流れでRSを経由してCのLINEで基盤2と8番に
電圧がかかる、次に基盤5番より電圧が出力されてDの様にモーター用マグネット
88のCoilに電圧がかかりモーターはタイマー制御でON/OFF運転します。
端子番号12以降に電圧がかかった時点で運転ランプRLも通電されて点灯
同時にリレーRY3がONとなりa接点で中央監視PCに運転開始を知らせます。
ただ運転表示はAC24V回路に電圧があるという意味で実際にモーターが
運転してるかどうかを見てるわけではない事は頭の隅に入れておきます。
もしそれを改善するならRLランプ、RY3リレー電源をA点からB点に変更!
つまり88マグネットが動作してる時だけ運転表示となります。
電気集塵機の回路図、空気中の埃に帯電させる事でロールフィルターに吸着
させ易くするための物で電源入力は200Vでもとても高い電圧を発生するため
に空調機本体点検扉の開閉とも連動しています。
内部異常が発生するとリレーCR1が動作しそのa接点で故障ランプOLが点灯
同時に中央監視PCに故障を知らせます。
故障がなければb接点で運転中ランプRLが点灯する事になります。
異常が発生していないのにRLランプが点灯していない場合、電気集塵機は
停止していますがロールフィルターが正常に回転してるなら空調機扉の
リミットSW不良しかありません。
実際の故障した時の事例を紹介します。
THRが動作せずに運転しないわけでモーター故障ではありません。
ただ盤の異常表示ランプが点灯してなくても念のためTHR本体の
動作ボタンが出てないか一度は確認します。
尚過電流が動作する可能性があるのはベアリンク、軸などのロック
マグネット接点不良による単相運転とかですね。
自動運転用リレー(CR2)のコイル両端の10とT番端子に200Vがあり
これは空調機連動a接点は正常を意味しています。
次に11番と12番端子間にAC24Vがあったので自動運転用リレーの
a接点が動作してないために開放状態となってる事を意味します。
結論は故障原因はこのCR2リレーです。
ただこれって基盤にハンダ状態のため交換ができないのです。
メーカーに電話したら導入は11年目だけどその会社としては15年前の型
なのでその基盤はもう生産してないとの事!
つまりこのユニット単位でしか販売しないので何もかも新式一式交換で工賃
込み50万円という話!
とにかく今は応急処置が必要でCR2リレーでONさせるはずだった端子番号
11と12をジャンパー線で短絡させたら運転を開始しました。
基盤上に強制手動SWがあるけどあれでは時間制御がないのでフィルターを
不要に早く巻いてしい好ましいとは思えませんだからジャンバー!
老眼の方も職場にはいて夜勤者にこれをさせるのは無理ぽいからここは
短絡のままで制御盤のMCBを朝に投入、夜空調機が停止したら切るしか
ありません。
ただいつまでもこんな面倒は解決しないといけません!
結論としてはこういう感じで回路を組めばいいんです。
故障してる自動運転用リレーCR2の代わりを外に作りそれを既存回路に
接続すれば解決できるのはわかるでしょう。
(リレーは在庫にないのでマグネットで動作させても問題なし)
10-T盤間にかかるAC200VでマグネットをONさせてそのa接点でAC24V
回路の10-11番間をONさせています。
いくつかはネジ止めではなく基盤に直にハンダしてるから途中の配線上
で処理をするしかないです。
10番端子行き線は自動運転用リレーのCoil電源で切断してマグネット
のコイル電源へ接続、もう片方のT盤端子行き線もそうなんだけどそれは
先で電気集塵機回路と接続されてるので切断はせずジョイントのみです。
後からメーカー担当より再度連絡があり中古でいいなら割安で基盤を提供
できる。と連絡があったのでそれを購入しました。
確かに一番良い解決策は純正アセンブリ部品を交換する事ですからね。
今回改造をする必要はなかったけど上の方法でも十分いけました。
ただ部品がない又は調達に日数がかかりだからとその機械停止は無理
という状況では応じた改造も必要とは思います。
シーケンス制御を初めて見る方のために基本の基本を説明します。
これはON/OFFボタンでランプを点灯、消灯させる回路ですね。
上下は同じ回路、上がJIS新規格記号で下が旧規格記号です。
現場に入ると新しい機器は新規格で古い機器は旧規格で記載されて
いますが中身の動作、回路の考え方はまったく同じです。
私は入った現場が旧式が主体なので旧規格記号に慣れています。
BS-1はONの押しボタン(押した時だけON)でBS-2はOFFの押しボタン
(押した時だけOFF)、Rの丸いのがリレーでBS-1を押すと赤矢印に電圧
がかかるのでリレーRが動作し接点R-a1とかR-a2がON状態となります。
R-a2がONするとランプが点灯する事となります。
線が右に書いてある場合はa接点といい、何もしない時は切れていて
リレーが動作してONになります。
この逆に線が左にある物をb接点といい何もしない時はON状態で動作
してOFFつまり回路を切ります。
ただBS-1を押してる時はいいけど手を離すとBS-1が切れるので電気が
止まりリレーRは停止すると思えます。
でもR-a1の接点がONになっているためここから電圧がかかっているの
でBS-1の線の電気が切れてもリレーRは動作を継続できるのです。
これを自己保持回路といいシーケンス制御では欠かせない!
よくインターロック回路というのを耳にすると思いますが日本語で言えば
条件回路の事です。
下ではPB-1を押すと機械AがPB-2を押すと機械Bが起動します。
ところが機械Bの方は機械Aが起動中は機械Aのb接点があり回路が強制的
に切れているためPB-2を押しても機械Bは起動しません。
両方の機械の同時起動を防止するならば機械Aの回路に機械bのb接点を
直列に同じ様に挿入したらいいのです。
これは受変電シーケンスにはよく使います、たとえば発電機を運転した場合
に電力側への逆送電を防止するために受電VCBと発電機VCBの投入回路
はインターロック回路で同時投入はできない様に設計します。
★自己保持回路とインターロック回路の見方がわからないとシーケンスは
読み解けないのでこれは必ず覚えておいてくださいね★
上回路は説明には関係ないので各停止させるための停止押しボタンを
省略していますがどこに取付けたらいいか?理解度確認のため考えて
みてください。
現場で将来電気主任を目指すというなら今回の説明だけで内容を理解
できる程度の理解力は資質として必要です。
これは時間制御をする場合で丸いT1とあるのがタイマーでこれに通電
すると設定時間になると右の三角頭記号の接点が動作します。
この三角頭記号が右にあるのはa接点タイプでその時間になるとON
してランプを点灯させます。
逆に言えばその時間になるまではこの接点は切れているという意味。
では仕事が可能なシーケンスを考えてみましょう
9時~20時のみ、1時間に1回XX:00~XX:10の10分だけポンプを運転
する場合どうなるでしょうか?ある程度はもうおわかりかと思います。
条件には直列(AとB両方が成立する)と並列(A又はBが成立する)が
あってそれらを意識して論理的に考えるのがコツです。
この場合は9時~20時、1時間に1回10分という条件が重なった時に
だけしかポンプを運転させてはいけません!
私が実際に行った事で店舗から照明と連動させ排気ファンを運転したい
と要望があったのですが、電灯盤と動力盤配置が互いに隣で作業も
容易でしたから改造した事例です。
リモコンから200Vを2本出してマグネットのCOILに直結、このa接点と
スターデルタ側のOFF押しボタンを取替(ONボタンはジャンパー)。
これで排気ファンは店舗照明と連動して自動起動、停止します。
つまりスターデルタ回路を常時ON状態にして電気をかけたら即起動
電気を止めたら停止という方法で単独のスターデルタ回路をタイマー
運転する場合でもこの方法で可能です。
ではもうワンランク条件を追加して営業日の特定の時間のみという運転
ならこう改造すればいいのです。
タイマーだけでは店が休み(照明が点灯していない)時まで運転します
からリモコンリレーにより動作するマグネットa接点とタイマーのa接点
は直列に接続してスターデルタ回路に接続します。
この場合途中で手動停止させる場合はタイマーについてるSWを切りに
すれば停止できます。
2個の条件を同時に満たす場合は各接点を直列接続すればいいのです。
では更に上の条件を満たした上に必要ならいつでも照明を点灯させたら
タイマー時間外でも排気ファンを運転可能にするには?
運転可能時間内の照明点灯では1の流れで回路は構成され、時間外
のタイマーが切れている時は2の流れで運転はできるはず!
こういう感じで2個の条件のどちらでも構わないなら並列接続すればいい
朝6時に排気ファンを運転し、タイマーが朝8時にONになるとどうなる?
つまり2の流れ⇒1の流れに回路が自動で切り替わる場合.....
マグネットの構造を考えるとコイルに電圧がかかり中の可動接点が移動
先にb接点側が切れて瞬時にa接点側が入るので排気ファンが一瞬停止
するでしょう。もちろん2の流れにより自動で即再起動はします。
倉庫や部屋の排気ならばこれでもいいいかもしれませんが厨房設備は
排気連動なので火が消えてしまい苦情が出ます。
でも考えてみたらこういう相談が来るとしたら排気ファンのOFF忘れを防止
するためですから一番良いのは最初のリモコンを受けてマグネット1個で
排気ファンを連動制御する単純な方法です。(照明連動起動停止)
頭の中では面白い工夫はいくらでもできますし私も好きですが実用化する
ならなるべくシンプルであるべきです。
この件に限定せずテナントさんの相談は話をよく聞いて目的に沿う
アドバイスをしてあげるのも電気主任技術者のお仕事です。
★⇒私のブログの最新記事へJAMP