2015年9月6日日曜日

電気主任技術者 実務:テナント漏電発生

今日はお休みで昼間二人でゆっくりしてたら会社から電話があったの
NO2電気室の電灯変圧器が地絡警報が出たままという話。
あそこは確か毎月のB種接地測定でも30mAしかないのになんて
思いながらも休日返上で出勤しました。
貴方が電気主任技術者になったら必ずこんな事態にいつか遭遇
するので参考までに知っておいてね。

PC画面で確認すると確かにLGR(低圧地絡)が出たままだね。
これはI0r検出ではないためノイズや高調波の影響も考慮して
私の判断で200mA設定にしてるのですがリセットできないという
事はそうした一瞬のノイズではなく200mA以上の何かの漏電が
継続状態と考えました。
まず火災成分であるI0r(抵抗分漏れ電流)の量を測定する
ためにI0rクランプメーターと口径80mmのリーククランプメーター
を準備してこの変圧器の場所に直行しました。

基本変圧器のB種接地の監視電流設定は50mAにするは知ってる
けどI0方式方式では誤報が出る変圧器があるのは現場管理
してる方ならご存知でしょう?

まずこれが現地の500KVA変圧器で緑のB種接地でI0を計測すると
通常30mAのところがすでに583mAもある。

経験でこんな高い値ではIorとI0がほぼ近い値なのでI0rまで計測
せずともこれは異常な値で即調査しないと危険!

この変圧器の二次側のどの回路かを調べる必要あり。
これだけの値であればELBはトリップするのでMCBの回路しかありません。
各MCBを計測していくとある回路で566mAを発見!これです。
回路番号N9
でこれは7階のNO2EPSに行ってる回路だね。
尚メガ(絶縁測定)は無関係なテナントまで停電を伴うのでこれでの
漏電調査は今の時代まず無理でしょう。

7階のNO2EPSのN9回路がこれです。
ここで2分岐してるのでまず左回路からI0を測定

すると553mAもありこの配線が行ってるテナントで漏電が発生。
ここって確か今日オープンしたテナントさんなんだけどどうして
こんなNEWなとこで発生するのでしょう。
それとテナントに"漏電してますので調査させてください。"
を宣言する場合は勘とかではなく計測により確定が必要。
もし違っていたら営業に制限をかけるので後からクレーム
が発生する場合があります。

★現場測定未経験の方に最大に気をつけてほしいのは★
たまたま上の様な細い線ならいいけど中には斜めに工夫して
配線に挿入しないとクランプメーターが挟めない場合があります。
その時に隙間があると(きちんと挟めてない)10mAしかなくても
600mAなんて表示になってしまい漏電回路を見誤る事です。
クランプメーターを挟んだら必ず隙間がない事を確認する事!

状況をテナントに説明して営業活動を一旦止めて頂き調査開始
これを言った後でわかりません、間違えました。は通りません!
迅速な行動を意識しながらまずテナント分電盤内の各MCB回路の
I0を計測していくとあるMCBが550mAとほぼ配給元で測定した
553mAと一致したのでこの回路で間違いありません。
ただ...ここは飲食ではなく普通のSHOPでしかも使用してる機器
(PC、プリンター)はすべてNEWで問題なしのはずです。

それなら機器絶縁不良のはずない、実際100Vメガをしても20MΩ以上
ではなぜこれだけの漏れ電流が発生してるのか????
モタモタしてると"なんだ異常ないじゃないか"と客から怒られてしまいます。
冷静になり根本原理を考えました。
つまり電源プラス線とマイナス線に550mAの差があるという事だから
その550mAはマイナスではなくてどこを通り変圧器にBACKしてるのか
これは...ある嫌な予感がしたので壁についてるそのMCB系統
のコンセントをすべて壁から抜き出して配線を1個ずつCHECKしたら
やはりこんなのが見つかりました。

貴方は上の接続を見て何が悪いのかわかりますか?
そう接地の配線.赤がコンセントのマイナスに電源のマイナス配線
白を接地に接続した配線間違いです。
(Wと書いてある穴に白つまりWhiteの配線を接続する)
これではこのコンセントで使用される機器の負荷電流が接地回路
つまり変圧器のB種接地に流れてしまいます。
漏電ではなかったんだけどこの電流に反応してLGRが動作したのです。
テナントが自分のとこで工事させた電気業者の配線ミス
アース付コンセントは下の様に配線しないといけません。
3心のVAで配線され黒が電源プラス、白が電源のマイナスで
赤がアースとなるのです。



コンセントの接地極が接地に接続されているかCHECK方法
テスターでアースとプラス(小口)で100Vあり、アースとマイナス(大口)
では0VであればOKです。
なぜかわからない方は上の接続をよく確認してみてね!
又3Pプラグを差すと最初にマイナスが接続されて、抜く時はマイナス
が最後に外れる仕組みになってるので受けのコンセントの接続も意味
がある。W側に白い線を必ず接続しないといけません。
ただ今回の様な赤線と白線の逆接続はわかりません。
コンセントは電気工事士の資格所持者しかできない作業でそういう
間違いはありえないという前提の話ではありますけどね。

絶対にテスター以外で電圧確認をしない事、白熱電球100Wなんか
ですると1A(1000mA)が接地線に流れるわけだからLGRまで
動作させ低圧地絡が出てしまいますよ。

最初のコンセントの誤結線の続き.....
私はあまり話を大きくしたくなかったんだけどPCに地絡警報
まで出すと会社にも事故報告を正確に提出しないといけません。
技術部長にラインで状況を伝えるとその誤結線のコンセントを切って
部長のとこまで持って来る様にと指示があったの
部長とその店の店長、業者でどんな話をされたのか知りませんが
結局その業者はこのビルには今後出入り禁止となってしまいました。
店長も会社を通じて社長まで報告され相当怒られたでしょうね。
厳しい様だけど信用を築くには時間がかかるのに信用を失う
のはたった1回のこうした事で失うのです。

逆に言えば測定ミス、判断ミスをすると明日はわが身です。
いくら普段物知り博士でも電験2種を持っていようが慎重さのない人
はこのお仕事は向かないと思う。
もちろん私はもう何回もこうした経験があるのである程度想定できる
けど初めて電気主任となり客相手に"アナタの会社が悪いのです。"
と言うのは相当緊張すると思います。
ある飲食店舗で口の悪い店主にもし間違えていたら後で相応の金を
払ってもらうからな!なんて私は怒られた事があります。
でも自分を信じてるので私も一歩も引きません。
そのくらいないと電気主任なんてしてられませんからね。

尚、漏電が連続ではなくて不規則に出る場合は機器類から
のノイズなどが原因で絶縁不良でないかもしれません。
絶縁不良による対地間抵抗低下の電流は商用周波数と同じ周波数
なのでもし計測できるなら漏れ電流に対しての抵抗分漏れ電流の量
をI0rクランプメーターで測定しましょう。
漏れ電流が200mAでもその中のI0r量が10mAならこれは接続された
機器に原因があります。線路が原因じゃない!
ただメガでは絶縁不良でないので探してもわからないでしょう。
メガはDCで対地間の電気抵抗を計測する物で対地間静電容量
を通じて流れるノイズなど高周波成分は特定できません。
これは私が会社にお願いして買ってもらったI0rクランプメーター

一瞬の漏電ならば記録可能な漏電測定器を複数箇所に設置
する必要があると思います。
私も一度そういう事があった時は出入り業者に借りて原因を
特定させた事があるけどこれが一番やっかいな状況ですね。
その時の原因はなんと厨房のコンセントでコンセント不良
でも不規則な一瞬の漏電を起こす可能性があるのを学びました。
停電作業でお世話になってる保安協会の人が私に言われた
漏電は電気屋の永遠のテーマです。”の言葉は同感!

古い現場で変圧器のLGR監視をしてない現場では実際に漏電
がどこかで発生していても気がついてない
だけもあるので
一度変圧器のB種接地の電流を測定してみましょう。
決まりでは50mA以上が5分以上継続してる場合は原因を
調査しないといけません。(H21.2経済産業省通達)
ただ通常のI0で150mAあってもI0で50mA未満なら適正
と考えてもいいと思います。