2015年9月21日月曜日

電気火災事故実例

今日は仕組みの話ではなくてこのお仕事を初めて最大のピンチ
を感じた時の話をしたいと思います。
後半では私が今の現場で電気主任になって体験したガチヤバイ
電気火災事故についても記事にしたのでこれから電気主任を
目指す方はぜひ参考にされてください。
電気火災は稀ではあるけど発生したら初期対応が重要です。


それは父が電気主任技術者をしてる工場に私が勤務してた頃の話。
夜23時頃に工場の警備員から"丸山さん大変だ火事だすぐ来てくれ
と父に電話がかかってきました。
私も化粧なんてする暇もなく父と車で工場に最高速で向かいました。
工場の近くに行くと消防車が7台も来ていてまじでヤバイと思うと同時
に父のせいの火事ではない事を強く祈ると同時に膝の振るえが
止まりませんでした。出火場所は発電機室からでした。
すでに消化活動は終えてましたがいったい何が原因なのか?
非常用発電機は停電もなく停止状態であったのに?

現場に来るなり待っていたのは警察の人で父は最初に取り調べ
を受けてしまいました。
理由は一番この現場が詳しいので放火など犯人ではないか
というのがその理由でした。
でも10分話すと刑事さんは"これは事故ですから後は任せます"
と消防の方に告げて帰られました。

でもここからが本番です。
22:45に火災感知器が鳴り警備員が電気室の前に現地確認に
いくと異様な臭いを感じ、少し扉を開けたら黒鉛で部屋が
充満していたのですぐに消防に通報されました。
消防隊は酸素マスク着用で中に入り近くにあった大型消火器
で消化されたそうです。
ハロン消火器は手動起動できましたが発電機室は電気室
の奥でその操作場所に警備員が行く事もできませんでした。

とにかく鎮火されたので危険は去りましたが消防隊から一旦
これで帰りますが夜が明けたら朝10時より現地調査を行います。
と言われました。
さあ今01:30でここから私達がすべき事はたくさんあります。
父はまず中央監視室のPCの履歴の調査から開始しました。
あれ?直流制御盤で短絡警報が出ているじゃないか?
実は後から最大のこれが事故原因究明のきっかけになりました。
すぐに直流制御盤を確認すると発電機制御行きMCBがトリップ。

その発電基盤は見る影もなく全焼状態で原型すらありません。
でもよく見ると一番燃えてる部分がわかるんです。
昔そう言えば部品交換する時に費用が高いために当時の上司
からこれだけにする様に命令された場所である事に父は
気がつきました。
保管室から当時の業者の作業報告書を調べると交換前と交換後
の写真が見つかり、その出火した部品は交換していない
電気部品でした。
父が"これが原因だよ"と大きな声を出しました。

10年前父は電気主任であったけど今の様に工場長の地位
ではなかったのでやもうえず命令に従うしかありません。
これが大きな会社にある縦系統命令の呪縛でしょうね。
それらを踏まえて報告書を作成して終わった後は朝7時に
なっていました。
社長まですでに来られていましたがもうありのまますべて
を明らかにする様に命令がありました。

朝消防との実況見分でも終始父がリードして話と状況調査
をしていき実際現場を知らない消防の人の方が黙って聞いてる
状態で原因から結末までは筋が通っているのです。
部品交換をしなかったなんて言えるわけもなく相手に突っ込み
を入れられない様にこちらが話の主導権を握るという方法
で父はその場を乗り切りました。
これはあのベテランの父でしか冷静にできない芸当でしょう
結局今回の火災は設備の経年劣化による出火という事で何の
罰を受ける人もなく終わりました。

ではこれで終わりなのか?いえ社内での事故原因報告と復旧
に当たり今後の対策
をしないといけません。
ですがその当時の上司はすでに亡くなり今更それを言っても
仕方ないので復旧に全力を尽くす様に社長より命令が出ました。

父が私に"こういう時はな、ありのままの真実を示せる事
だけを中心に話を進めていかないと
想像で発言をしたら
後で自分が大変な事になるから覚えておけ”と言われました。
社長に"今回の火災は業者さんの点検不備ではなく10年前
に業者の勧めた部品交換を拒否した当時の会社の姿勢に
原因があります"と結論を述べたのです。
これがその時の証拠写真で........

後日業者より、盤一式交換作業に1000万円かかると見積もり
が出ましたが、結局はメーカー技術者が来られて全額そちら
の負担で無償交換となったのです。
推測するとそういう火災を起こしたという事実が世に出る
のをメーカーが恐れたわけでこの話が全国に飛び火すると
今後の営業上大打撃を受けてしまいます。
何が原因より○○の発電機が燃えたという言葉しか
世間の方の人の記憶にはとどまらないわけです。
夜中であったせいかTVにも新聞にも事件にならなかったの
が不幸中の幸いでした。
火事が昼間でしたら絶対にそうなっていたと思います。

電気火災は一旦発生したら筋の通った事故原因の究明
が必要で普段の業者点検報告書~自ら行った報告書など
それとなるべく時々の現地写真は撮っておくべきだと思う。
燃えた後では不明点は結局は想像や多数決になってしまう。
私が毎月かなりの部分でI0r計測をしてるのもそのためで
保安規定による年1回の絶縁測定では役にも立ちません。

火災が発生すればできるだけ直近の状態が必要です。
とにかく電気火災で消防騒ぎまでなると電気主任技術者
は高みの見物では済みはしないのは経験者の私は
今一番誰より理解しています。

ここまで読まれて気がついた方もいるでしょうが
父が工場長になった時点でどうして追加提案してその部品交換
をしなかったかと言う事です。
組織というのはAという問題提出がありそれに何らかの対策を
した場合はすでに解決した事となり、特に高額な費用を必要
とする場合はなぜ今更なのか?という明確な理由が必要なのです。
ですがその件から社長を中心とした危機管理体制の見直しが
された
のは言うまでもありません。

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今回の話も父が電気主任をしてる工場に私が勤務してた時の話。
それは私が休みでいなかったんだけど事故の概要は朝、工場の
冷房のためターボ冷凍機を稼動させたらVCBがOCRで動作して
トリップしたという電気を管理してる人には有難くない話です。
すぐに電気室に行くと焦げた様な確かに何かが短絡でもした様
な臭いがしていたそうです。(OCRとは過電流トリップ)
VCBが過電流トリップするとアークを遮断する事でそんな臭い
までするのですね。


この工場も私が今管理してる現場と同じく22000Vで受電してそれを
6600Vに変性した後にこの6600Vで冷凍機の高圧モーターを起動
させていました。
N02冷凍機のコンドルファ始動盤から異臭が出ていたので点検したら
焦げていたそうです。
そこには三相の単巻変圧器がありそれが逝っていました。

コンドルファ始動方式は、電動機の一次側に単巻変圧器を入れ
低電圧で始動開始させることで突入電流を低減させる始動方式です。
スターデルタ始動と異り、コンドルファ始動はリアクトル始動と
同じく減電圧から全電圧に切替える時にも電動機の電源電圧が
途切れることがないのでスターデルタ始動のようにスターから
デルタに切替える際発生する突入電流が生じないと言う
利点があるの

始動の順序はコンタクターB及びCが切りでコンタクターAが入る
次にコンタクターBが入り電動機には全電圧の中間タップ値に
等しい電圧がかかり始動を始めるの。
電動機が全速度に達するとコンタクターBが切れ電動機は
リアクトル始動の場合同様に電動機回路へ直列にリアクトルが
挿入された状態となり、その後コンタクターCが入り電動機は
全電圧運転となり始動は完了します。
コンタクターCの回路はバイパスした状態になり電源の一瞬
の開放がスターデルタ方式みたいにないのがわかるでしょう?

たぶん当時こういう事まで理解していたのは父、私、一部の人だけ。
意外と現在扱ってる人でもわからず操作してる人多いと思います。

すぐに冷凍機のメンテ業者に連絡したらそこの社員ほとんど
全員が来てこんなトラブルはめったになくてそこから専門
の電気屋さんを呼ばれました。
次の日は私も出勤したたんだけど大きなトラックに変圧器
を積み、レッカー車まで来ていました。今から何が?
なんとその変圧器は6600Vを3300Vにするタイトランスという特殊な
変圧器でああいうのを見たのは初めてでした。
見た目はOIL式の500KVA程度の変圧器だけど二次電圧まで
高圧と配電用変圧器とはまったく異なります。
写真がそのタイトランスで丁度この位の大きさでした。

重さも1トンはあるんだろうし、トラックからその機械室まで移動
させるのに相当の苦労されていました。

あれ?もしかしてこれで減圧起動させるのでは?
その位の検討は私でもすぐに想像はできました。
けどそれではスターデルタみたいに電圧切り替え時に突入電流
が流れるからヤバイのでは?しかも高圧でやるの?
でも業者さんがしてる事だし私が工場の電気主任でもないので
この対応を興味深く見ていました。
焼損した単巻変圧器は納期に時間がかかるのでそれまでの
応急対応との事でした。


いきなり機械室のこんな真ん中に高圧の変圧器がドンとある
なんて...でも今はそんな事を言ってる暇もないか?
当時の写真を撮ってないのだけが残念です。
冷凍機盤のコンタクターは生きていたのでそれに接続され
シーケンスもかなりいじっておられました。
さあ試運転開始になりました。
あの当時の私は今とは違い現場の電気が怖い女子でしたので
父の背中に隠れていつでも後に逃げれる様にスタンバイ!
人は見た事も自分の常識にない物を目の前にするとやはり
怖いです。ドカンと火花が出るのではと思っていました。

もちろん起動しました。
問題は電圧が3300Vから6600Vに切り替わる瞬間
ガチャンと大きな音を感じましたがその後は正常に冷凍機
は運転を継続しました。意外に大丈夫みたいでした。
ただコンドルファ始動方式ではカタンと小さな音がするだけで
したし電流もこんなに大きく振りませんでした。(突入電流)
まさにスターデルタで高圧モーターを回す様な物ですね?
冷凍機用のOCRがもし飛んだら受電に影響を与えない範囲で
設定をいじろうかと父は言っていたけどそれは必要なかった

変圧器は相当に頑丈そうでしたしこの電気屋さんはたぶん
他でも昔こういう事で急場をしのいだ経験があるから
迷わずこれをされたのでしょう、まさにこれこそ経験ですね。
経験のない者ばかりが理論だけでであれこれ言ってもこんな時は
何も前にはいきませんし結局何も解決できません。
実際に6600Vをかけるのだから意見ではなく完全なる答えが
必要なわけで本のお勉強だけの知識なんて意味ありません。

父から通常の低圧でのスターデルタ起動の切替時の事を思うと
確かに6600Vで突入電流を伴う方式で起動させるのは不安を
感じただろうけどモーターの運転電流は高圧だから低圧モーター
より逆に低いから俺は大丈夫と判断して許可したんだ。と聞かされました。

最初の話に戻るけど今の私が推測するとコンドルファ始動
に使用される始動用単巻変圧器には30秒とか60秒定格とか
あって通常は起動時の10秒程度しか使わない条件で設計して
あるので凄く全体が小さいのです。
言葉は不適切かもしれませんが過負荷状態で使用するけど
熱的に危険状態になる前ですぐ切るから大丈夫
という話
もしその切替タイマーが故障していて通常より長い時間それに
電圧がかかっていたのでは?

今思えば頼みもしないのにそういうタイマーとか電装関係まで
業者が2日目にすぐ交換していたのが気になります。

その故障時に冷凍機を運転した人は機械は好きだけど電気は
中学生レベルの人だったから減圧起動をどのくらいしてたか
聞いてもさっぱり状態????
運転電流計の変化を見ていたらそれはわかります。
最低限扱う以上は冒頭で述べたコンドルファ始動の動きを
知っていたらいつもより減圧起動の状態が長かったとか?
具体的な故障理由がわかったかもしれません。

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上ほど酷くないけど今の現場で私が電気主任技術者になって
電気機器の発煙事故を紹介します


トラブル事例1
空調動力盤の自動制御から煙が!(機械室の煙感知器が鳴る)
これは回路のノイズフィルターからで通常こういう場合の原因として雷など
異常電圧が接地から逆流。又は同一系統に強力なノイズ元がある場合
とかいずれもなく原因が不明ですが、とにかく起きてしまったのです。
どうですか?みごとに焼けているでしょう?テーピングは後から私が
処置後にした物です。
短絡事故なら横MCBが切れるはずですが何とここだけノイズフィルターが
MCB一次側に接続されていたのです。

消防に連絡します。で逃げていたら機械室を全焼させてしまう。それと
黒い煙は有毒だから息を止めてから行動しました。
火災による被害は火より有毒な煙やCO2で体が麻痺して動けなくなり
焼け死ぬ事が多いそうです。ケーブルやその類が燃えると黒い煙が出る。
ただ消火器を噴射させたらこの盤内の自動制御装置は薬液ですべて
使用不能で更新となり空調機も当面使用不能になるでしょう。
そういうリスクを瞬時に頭で描いたのでハンカチで口を押さえて煙が
立ちこめた状況中、片手でノイズフィルターの配線をペンチで切ったら
発煙はしだいに止まりました。
電気火災ではとにかく通電をまず止める事で悪い偶然が重なり
通電が切れない状態が発生しています


切断時にパーンと大きなスパークがしたけど仕方ありません!
”電気室に行き元を止めたら?”簡単にそういう行為はできません。
上司からこんな事は丸山さんしかできないと言われたけど会社からは
感謝されました。
もちろんすでに火が立ち込めた状態では建物火災鎮火が優先で
そうなれば消火器、駄目なら屋内消火栓で消化活動をします。
どこのビルでも消防訓練がありその時に屋内消火栓の練習をします。

トラブル事例2
ある店舗からかなりあせった電話がかかってきた。”すぐに来てください。
火事になりそうです。”
店舗の入り口にあるコルトンBOX(案内照明)がガチに焦げ臭い状態で
通行人まで見てる状態でした。
すぐにカバーを明けると5分もしない内に5個の器具の内3個の安定器
から煙が出てきたのです。...ヤバイ!
どう考えても規定を超える電圧が全部にかかっている

周りの人達からも悲鳴の様な声が上がり今から店舗に入りこのMCBを
探す余裕もない10秒以内にこのコルトンBOXの照明電源をSTOP
させないといけません。

電球を抜いても安定器への通電を止めないとダメ、器具内にSWもない。
それならいっそ分電盤の主幹を切りますか?(店舗全停電)
でもこの行為は後で身勝手なもめ事になるケースが多く避けたいです。

普通なら上手にVAの被覆だけをめくり単線を1本ずつ切断するけど
その暇もないのだから電源VAを直にペンチで切断しました。
ペンチの刃先で0Ω電源短絡させたので大きな火花が出て周りの方
をビックリさせてしまいました。でもそれで火災への進行はSTOP。
即緊急時には短絡覚悟で電気を停止させるしかないです
ただペンチの刃先が溶けるのだから短絡時は相当の熱が発生
すると言えます。
私だって本当はしたくないけどこうしかこの危機を回避できません。

この照明器具は100Vなのですが店舗の天井照明200Vから
トランスで下げてここに接続されていてそれがパンクして100V
器具に200Vがかかったのが原因でした。
お店がどこかの電気業者にかなり昔にさせた工事らしいけど
10年は経過してるので老朽化かもしれません?

トラブル事例3

飲食店から電話があって焦げ臭い充満してると連絡あり。
座敷の上のFLR40W器具周辺からそれはしていました。
しばらく見てると器具から煙が出てきたので店長が照明SWを切って
くれたのですが止まる気配がありません。なぜ???
瞬間気がついたのは照明SWが片切り200Vだから片線の200Vは消え
ないという事です。

すぐに器具のケースを外して安定器の電源2本を切断しました。
短絡から漏電に進行する事があると思うのでそうなると片線でも
電気があれば器具接地を通じて相応の電流が流れます。
そうなればやっと変圧器のところでLGR警報が出ます。

絶縁不良が進行してるならばI0も増加するので毎月の点検で変化が
わかりますが急な内部短絡ではそれはわかりません。
こういうのは安全対策として温度SWとかあると思うけどそれも動作
せずに燃え出した現実を考えるとよく安定器が老朽化すると燃える
というのはあるのだと実感しました。

内部短絡なら電源MCBが切れると楽観していましたが蛍光灯に流れる
電流は通常1A未満でそこに10Aも流れたら20倍近いので十分に火災
の原因となると思います。完全短絡でない手間のレアショートと理解!
実際この時は電源MCBは切れていないのです。

200Vの照明器具の場合焦げ臭いが発生した場合は照明SWをOFF
させるだけでなくその器具の電源2本も切断すべきです。
こうした器具の急なレアショートではテナント分電盤主幹でのI0測定
でも予測不能ですから完全なる安全というのは無理なのを痛感
しました。

稀な事故で滅多には発生はしませんが対処の意識は必要ですね。
★人の話を聞けばなるほどと思われるかもしれませんがそれを身に
沁みて感じるのはその事故を体験した人だけでそれが経験です★