地絡・漏電調査ビギナーの方は前記事を読んでからにしてください。
⇒ビル漏電の調査方法
前記事と今回の内容理解で貴方も漏電調査方法は完璧ですね。
漏電調査は電気保守管理をしてる者はできないといけないスキル
の一つで自分なりの調査手順を最終的には確立されてください。
変圧器のB種接地線電流は50mA未満でないといけませんがその
範囲なら絶対に漏電異常はないのかと言えばそうではない事例。
第二変電設備にある一般電灯2変圧器は毎月25mAなのにその月
は48mAもあったのです。
50mA未満だから異常なしとして様子見とするには嫌な予感がした
ので各二次側回路のI0を測定したらL4回路で約41mAのI0を測定
しました。(通常ここは10mA程度)I0rでも39mAで何か変です。
各変圧器二次側回路とテナント分電盤主幹でのI0測定も毎月1回
実施してるのでどの回路でもI0の極端な変化が私はわかるのです。
変圧器低圧地絡警報は出てないけどこんなにL4回路が上昇した事
は一度もなく調査をしました。
このL4回路には数店舗のテナントが絡んでいますので営業前早朝
順番にまず分電盤主幹でI0を測定してみる必要があります。
電源は極力切らないで漏電調査をするのが今の時代の方法です。
これはある飲食店の分電盤ですが主幹でI0を測定したところ45mA
もあるのです、ここは普段は主幹でI0が5mA程度の盤です。
その主幹I0値ではこの店舗回路に異常が間違いなくあります。
尚、主幹ケーブルにクランプが挟める微妙な隙間がなくて直接金属
バーに挟んでからI0測定を行いました。(活線のため素手作業厳禁)
見た通り上半分はELBで下半分はMCBだけど怪しいのはMCB回路
です。ELBならば15~30mAでトリップしてるはずですからね。
左列の下から2番目MCBで約44mAのI0が流れていて通常この位置
では正常ならばI0で1mA未満でI0rでならば≒0mAのはずです。
分電盤内の20Aの単独MCBやELBでI0が1mAを超えて2~3mAも
ある場合、絶縁抵抗値が0.1MΩ未満である可能性があります。
至急停電させて絶縁抵抗測定をするかI0rで1mA未満か確認が必要。
負荷名称は盤表に受付照明とあるので電源切りは問題ない事を確認。
切りましたが実際は厨房にあるコンセント2個にも電源配給されていて
対地電圧は150V未満でもコンセント場所は乾燥してる場所ではないの
でELBの免除理由にならないとこの時点で思いました。
(写真はMCB切りですがI0測定時は投入しないと測定でません)
主幹は径が80mm程度のクリップの大きなクランプメーターが必要
だけど子回路では逆に狭い空間に入れるのが難しいですね。
クリップサイズの大小、2個のクランプメーターが漏電調査では必要
電気保安協会の回答でこういうのがあります。
ただ疑いがあると言ってるだけで1mAを超えたら絶対基準値未満
の絶縁抵抗値という意味ではありません。なぜかわかりますか?
(程度問題でこんな2000mA以上では間違いなく漏電してるわけで
この部分は現場にいないとなかなかピンとこないかもしれません)
★どんな測定ポイントでも1mA未満ではないという事です★
単独回路において対地電圧100Vなら0.1MΩだからオームの法則で1mA
対地電圧200Vなら0.2MΩだから同じく1mAと理屈には合いますね。
ですが8回路すべて各0.9mAのI0が流れてるとしてその集合点は8回路
の合計だから1mAを超えるのはわかると思います。
よく漏れ電流は電線の最大配給電流の1/2000以下とありますがそれは
あくまで限界で普段の正常な時の値を測定した各測定点のI0のdata
こそがその現場の管理基準なのです。毎月測定、最低半年分の変化
(Iorクランプメーターをお持ちならそれで測定すれば完璧ですよ)
現場の負荷種類の違いもあり絶対は言えませんが今回上で紹介してる
程度の分電盤では主幹にて3~10mAのI0程度が正常値かと思います。
(主幹で1mA未満のI0は負荷を接続してない状態しかないでしょう)
上程度の盤で主幹でI0が30mAもあるのは多いと思います。
毎月停電させてテナント盤の絶縁測定など今の時代無理で保安規定
による年1しか絶縁抵抗測定はできないのが普通です。
その場合途中で絶縁低下による事故が発生したら★必ず普段の管理
はできてるのか★をオーナーから電気主任は指摘されます。
私は毎月各テナント分電盤において停電させず主幹I0を測定します。
特に築10年を超えたビルでは年1の絶縁抵抗測定では不足でしょう。
絶縁抵抗測定を実施、結果≒0Ωの状態ですがMCBが対地間短絡で
トリップしてないのでわずかな対地間抵抗しかないという事です。
44mAなるI0値ではこんな絶縁抵抗値であって当然と言えます。
これは無条件に感電防止の点で使用禁止としないといけません。
I0r不良より絶縁抵抗不良というのが誰にでも理解できるのででき
れば最後は絶縁抵抗値で結果報告をテナントにはしたいのです。
ただ末端の故障回路発見までは停電させて行うメガは使用しない
というのが私の調査方法の基本です。
まず厨房内にあるコンセント2個に接続されるすべての機器を外し
てから再度I0測定を行うと44mA⇒0.05mAとなり正常な状態です。
受付天井照明も絡んでるのでその照明タンブラSWはONの状態で
測定しましたがそこは漏電する様な設備・場所ではありません。
つまり分電盤~コンセントには異常はないという事です。
ですが機器をコンセントから外してもI0が44mAのままと言うならば
コンセント、照明回路の故障です、"絶対にこうだ"という固定観念
は漏電調査では持ってはいけません。
壁についてるコンセントや照明タンブラSWが原因程度ならサービス
で倉庫から持ってきて即取替します。(そういうケースもあります)
前に蛍光灯ダウンライトが熱劣化した時は穴サイズが倉庫にある
LED器具とほぼ同じだったのでLED器具に取替した事もあります。
それは中古だったのでテナントには無料にして後で感謝されました。
こういう時こそテナント、職場の人に腕の見せどころですからね。
機器を1個づつコンセントに接続していきMCBでのI0変化を確認し
たところ、奥の冷蔵庫をコンセントに接続した時に0.05mAが40mA
程度となりこれが今回の漏電の原因とわかりました。
これが今回漏電していた100Vの業務用冷蔵庫です。
後は機器本体か電源コードのどちらかが原因ですが機器本体故障
(コンプレッサー漏電など)ではどうにもなりません。
機器裏から電源が来てるので何をするにも冷蔵庫を1回前に出して
反転させないといけませんがとても重くお皿とかもあるのでそこまで
強引にこちらで確認しなくてもいいです。
お皿を割ったり損害を与えたら弁償する事となるので相手財産は
無理してまで係わらない様にされてください。
自分のテクを見せたい気持ちはわかるけど場合によりけりです。
テナント私物に関してまでビル設備員が完全対応する業務契約を
してるなら別ですがその辺はビルにより異なります。
そうでないならテナントサービスとしては測定・軽修理・アドバイス
程度が限度でしょう。
電源コードが酷い状態でネズミにかじられたのを店で修理したりコード
の一部は表面がヒビ劣化して微細な漏電があちこち発生しています。
ここまでになると機器根元から一式取替する必要があります。
ですが機器にあるコードはそれもその機器の一部なのでメーカーの
正規品でないといけません。
ネズミはどんなに見た目綺麗にして残飯の処理を完璧にしても飲食店
では必ずいます。日中は壁の裏や天井に隠れ深夜に店内を走るのです。
苦労はさせられてますが私は可愛いと感じてけして憎めませんね。
私が飼ってるウサギも若い頃は食べるわけでなく面白がってつい配線
とかをかじって何度も私は修理、取替しました。
こういう子達って食べ物が原因で配線をかじるわけではないのです。
だから残飯処理や床を綺麗にしても配線かじりはなくならないのです。
私に今できる事は絶縁状態を回復させるためコード表面を清掃したら
見えるすべての部分を絶縁テープで完全に巻く以外ないです。
まず素人テーピングはすべて外し濡れたウエスで拭き清掃後にドライヤー
で乾燥させます。最後に可能な限り全体を丁寧にテーピングしました。
私はテーピングでは1/2重ね巻きでギュと締め付けながら行います
がNETでの説明では2/3ずつとあります。
いずれにしてもテーピングは均等にギュと締め付けながら重ねて巻
いていくのが大切です。何も考えないで適当に巻く素人の方がした
テーピングは見た目も悪いし絶縁強化という目的を満たしてません。
最後に冷蔵庫を回路に接続した状態で絶縁抵抗測定を実施します。
結果この回路の絶縁抵抗は≒0Ωから20MΩ以上に回復しました。
これならば確実に数日は持つので至急この冷蔵庫を納品した業者に
連絡してコード取替をしてもらう様にテナントにはアドバイスしました。
ネズミがいたりする場所ですからコード取替後は床に無造作にころ
がすのではなくて壁に固定する様に取付してもらう説明もしました。
対地電圧が100Vの回路では絶縁抵抗値が0.1MΩ未満とわかった
以上はその回路の電源を切るか応急処置をしてでも回復させて投入
状態を継続するかが電気主任技術者の法的責務となります。
話は違いますが年1の停電作業時に行う絶縁測定で不良個所を
発見した場合も同じで絶縁測定はただ測定して終わりではないのです。
★絶縁不良回路を発見したのに電源を再投入したまま不良報告はダメ★
ただ切るのは簡単だけどこれが深夜でテナントもいない場合です。
安易に電源を切ったままにしたらどうなるか?冷蔵庫の中に食材が
ある場合そのまま放置したら食品がすべて朝にはダメになります。
こういう厨房機器設置では厨房機器を床に強固に固定してしまい電源
コードは引っ張りなんとか抜けても故障した壁コンセントがまったく触れ
ないというケースがよくあります。
電気屋でない人は業者でもそういうメンテナンスという事をまったく考え
ないで自分らの作業都合でしか施工しない業者も稀にいるのです。
物理的事情でコンセント交換ができない場合ですが日中ではテナント
がいるので相談する事になりますが仮設電源をお願いされると思います。
電気工事屋をそこから読んでも彼らも急には夕方しか無理ですから!
そうなるともう電気主任技術者である貴方がするしかないのです。
私はイザで応急対応するのにこういうのを10mと15m物で作って倉庫に
おいています。仮設電源KITは準備しておくと便利です。
一度でも苦労した事があれば次回はそうならない様に準備をしておく事
が何でも必要だと思います。
実際ではこう接続して機器まで配線したらいいのです。
悪い配線は外してそこに仮設のVAの配線を接続してください。
分電盤からなのでせめて10m分の長さで電源は準備しておくべきです。
しばらくそのまま使用する可能性もあるのでインシュロックも使用して少
しは見栄えも考え配線は敷設します。
私が取付けた仮設電源をそのまま永久使用された事もあったけどでき
たら見栄えが完璧なプロ電気工事士で本修理はしてほしいです。
そんな仮設のままもあるので特に接続部分だけはきちんと行います。
仮修理でも20MΩあるならば継続使用する事には問題はないです。
上の冷蔵庫のコード修理でもあのまま壁に余長分を固定すれば問題
ないとは内心思っていますが故障した物は更新という指導をしておか
ないともし同じ事で漏電が出ては結果論で"何をやっているのだ"と
言われてしまいます、それでもしないとしたらテナントの責任です。
どんな漏電の応急修理を一時的にする場合でも絶縁抵抗値は私的には
100Vメガで20MΩにならないと修理までの一時的継続使用でも許可
はできません。
修理して0.1や0.2MΩなる法的ギリではいつ使用者が感電するかもです。
コンセント回路は正常状態で100Vメガで20MΩはあって当然なのです。
対地電圧100V回路だから修理後は0.1MΩあれば良いというのはその値
がそこから絶対に下がらないというならば私も同意します。
厨房電源配給はELBでないといけませんがこういう業務機器は機器内部
に標準パーツとしてELBが設置されてる場合があり、それと接地工事をして
いるのか?業者に確認が必要な事もテナントに伝えました。
私が今のお仕事をしてきて感じるのは漏電が発生してない状態では適正
な値の状態でI0値はほぼ一定です。
漏電した回路のI0は微妙に値が上下する傾向を感じます。
たとえば、40.0-40.5-40.8-40.2-39.6みたいな変化、理論的根拠を示せ
ないのですがあくまで漏電してるかも?という時の私の判断基準の一つ。
不安定な状態だからこそと単純には理解しています。
貴方も漏電に遭遇しI0を測定する時は少し変化を気にしてみてください。
今回も調査しようとしたしたきっかけは変圧器B種接地電流は50mA未満
ではあったが小刻みに値が変化していたのです。それが私の嫌な予感!
最後に漏電とは電気が正規の回路外に漏れる事を意味し、地絡とはそれ
が対地間を通じて流れる事です。ビルでの漏電はまず対地を通じて変圧器
に戻るわけだから地絡=漏電と考えても無理はありません。
前記事と今日の記事で変圧器地絡発生又は幹線の高いI0測定~漏電
回路までたどりつく方法はわかって頂けたとは思います。
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