2016年10月2日日曜日

電気主任技術者 絶縁抵抗測定/I0r管理

保安規定で年に1回は絶縁抵抗測定を実施しないといけません。
通常停電作業の時に一斉に行う現場が多いと思いますが特高現場など
規模が大きくなると時間的にタイトな状況となるのでテナント分は朝一番
の営業開始前にお願いし分けて絶縁抵抗測定を通常営業日で実施して
います。(1日2~3社でも毎日すれば数か月もかかりはしませんからね。)
★停電できる唯一の時なので単に絶縁を計るだけでなく点検をしてみよう★

本日は某飲食テナントの電灯と動力回路の絶縁抵抗測定etcだけを
行いましたので電灯回路(単相三線式)の事例で説明します。
ここは小さなお店ですが規模の大きな100回路であっても作業方法は
まったく同じです。

まずこういう構成になっていて行う前にねずみや異物がないか目視
点検を行います。(特に年1しかテナント盤を点検しない現場は!)
私は毎月各テナント主幹でI0rのみ測定をしてるので異常ないの
はわかっていますが個別回路はやはりこんな年1しか見れません。
子MCBが3本になってる回路が動力回路ですが現場に入ってどれが
電灯回路で動力回路?では電気主任として恥をかくので気をつけ
ましょう。

まずは電力量計一次側主幹でI0rを測定します。
I0rは0.07mAです。次に電灯回路主幹MCBを切り同じ測定をする
と子MCB回路分がなくなり主幹MCB一次側と電子式電力量計間の
絶縁状態を示すわけで0.01mAで問題なしです。(★1mA未満の事★)
電子式電力量計や動力回路では基盤制御してる様な電子物がある
配線区間はメガのDC電圧をかけたくないですね。
実際回路が正常ならI0もI0rも大差ないけどI0rで測定したという
事実が必要なのです。(完全な対地間の絶縁状態を示すのはI0r)

では子回路のI0rの測定を行います。法定ではメガ測定が不可能
な場合に限り漏れ電流測定で行えますが私は両方行っています。
通常営業中では回線が切れないためI0rで判定をするのでこう
いう時に正常時の各回路のI0rを知っておくためです。
6番の回路ですがI0つまり普通のリーククランプメーターなら0.15mA
ですがI0rでは0mAで完璧ですね。

(充電部を電圧クリップするので一番挟めるポイントで行いますが
バーの間で短絡させると焼けてしまいますから慎重には行います。
I0r測定は充電部を扱うので最低でも電気工事士資格がある人
が行うべきです。電気に興味のない者にはさせない!)

保安協会でも絶縁判定はメガか漏れ電流法で現在は行っています。
ただ昔定めたこのビル保安規定には漏れ電流で測定を行う記載はありま
せんが現実メガができない場合はできないのです。
その事情は現場しだいですが電気主任が臨機応変に判断して行うしかない
と私は思っています。

メガを強行してテナント機器が故障すればオーナーが弁償をする必要
が発生するわけですし重要設備があるテナントにあってはシステム
担当から"メガをするな"とも前置きされる事さえあります。
システムを切り離せばと思うかもしれませんがそう簡単にはいきません。
絶対大丈夫を保障できない以上はオーナーからも禁止を言われます
からそうなればそこはI0r絶縁判定を行うしかありません。
絶縁測定において損害を利用者に与えたら無条件で弁償しないといけ
ない
点だけは頭に入れて実施計画を立てます。

今度は6番のMCBを切り100Vメガで絶縁測定をすると20MΩ以上で
問題なし!I0rで0mAなのですから当然ですね。
先にI0rで回路の安全を確認してるのでメガ使用に不安はないです。
電灯回路の単相200Vは対地電圧は100Vなので絶縁基準はコンセント
回路と同じ0.1MΩですので注意しましょう。
三相200Vからの単相200Vは変圧器二次側がデルタならば対地電圧
は200Vとなるので絶縁基準は0.2MΩです。(通常デルタです)
仮に0.1や0.2MΩなんて基準ギリの値が出た場合は必ずこの先の配線
か機器に異常がまず間違いなくあります。
最低でも絶縁値は1MΩはあるのが普通です。

尚このメガは父からもらった骨董品ですがずっとこれで父から習って
いたのでこういう測定器具は針式が私は好きですね。
職場の方はデジタル式を使用されてます。

何でも絶縁をMCB二次側で測定する人がいますがリモコンリレー
のある照明回路はMCB⇒リモコンリレー⇒ランプになっているので
そこでは常に絶縁が良好で当たり前です。
私が今の職場に来た時ここの皆さんもそこで測定されていました。
設備の人もほとんどが絶縁測定とは何をしてるのかわかってない
ので電気主任となったならよく説明してあげてください。
(2P2EのMCBが照明回路専用のMCBと思ってもらってもいいです)

電気室~各テナント分電盤間の幹線メガだけは停電作業の日で
ないと行えませんがこれも毎月電気室の送りでI0rを測定してるの
で結果は予想できます、でもそれは別として保安規定により絶縁
測定を500Vメガで行います。★100MΩはあるはずです★

最後にELBの漏電動作テストをして点検は終了です。
点検終了後レバーを再投入する時は漏電動作表示(トリップ表示)
を押えて引っ込めないと投入できません。
こういう盤についてるELBは30mAの漏電で自動動作して回路を切り
感電から人間を守ります。
モーター保護兼用とありますが漏電以外では50Aの短絡要素でも
動作して負荷を迅速に保護する役目もしています。
動力回路は厨房用ですからELBになっているのは承知の通り。
短絡はまずないけど漏電は時々発生しますから動作確認は大切!

余談ですが機器側にちゃんと接地をしてあるか確認もできたならば
満点ですね。(人を起点にELBを動作させない)
非接地とアース間にテスターで100Vがあれば接地は効いています。
言葉を変えたら変圧器B種接地と接続されてるという意味で古い
コンセントでは時々ガタツキがあり電圧が上手く出ない時は交換が
必要です。(一度もこの点検をしてないならたぶん1個はある)

★ここまでの点検を停電作業時に全テナント絶縁測定するついで
に行うのは無理ですからテナントについては分けて少しづつ行う
えば電気主任として満足できる内容の点検ができると思います★

絶縁測定結果報告にきまった書式はなくて貴方が電気主任として
行った方法に都合の良い書式でエクセルで作成して構いません。
たとえば今回の結果を一覧表にするとこうなりました。
これに室温度、湿度、使用測定機器、測定電圧レンジを追加記載
すれば完璧です。
絶縁は特に湿度の影響を微妙に受けるので絶縁測定では温度
や天候を必ず記載するのです。

メガは使用電圧に近い電圧レンジで行うのが好ましいので対地電圧
100Vの回路は100Vメガで私は行います。(下保安協会回答)
又絶縁測定では停電させますが古い機器では不思議にそのまま
逝ってしまう機器が稀ではあるけどあります。

故障寸前で状態変化をきっかけとして本当に故障し再起動しないと
いう話ですが私が担当する現場でも1社うるさい担当者がいるテナント
においては測定中の写真(100V回路は100Vメガで測定してる様子)
を撮ります。報告書にも測定電圧レンジを必ず記載する事です。
絶縁測定後に機器が故障したと苦情があったならば点検が原因
ではない事を電気主任が説明して納得して頂くしかありません。

言葉一つでこちらに非があると認めたら弁償するしかなくなります。
私も過去3回程度説明した経験がありますが何年か電気主任を
してるといつかそういうシーンに遭遇すると思います。
事前にQ&Aを自分で考えておくのと発言は思うは禁止、すべて言う
言葉は○○です。と言い切らないといけません。
思うは逃げを想定した言葉ですからそれでは相手も半信半疑です。
言い切る事に不安を抱くなら電験1種があろうが電気主任にその人は
向いていません。性格ですから大人が今更別人にはなれないです。

単に各回路をメガ測定、基準以上あるかあればギリでもOKとする
様な絶縁判定は普通の設備の人がしたならまだしも電気主任がした
のでは良い管理とは言えないと思います。
もっとは基準値以上さえあればすべて20MΩ以上にして結果記載してる
大雑把な現場もあるらしいという噂は聞いた事はあります。
でも結局は不安定を放置すればかなりの確率で平常営業中にトラブル
が発生してそのツケを払う事になるのはそこの電気主任ですよ。

人間は1mAから電気を感じると定義して100Vならばオームの法則で
10万Ωつまり0.1MΩこれが通常の対地電圧100V回路の絶縁根拠で
あくまで最低の基準であり0.1MΩでは後がないのです。
(対地電圧200V回路なら逆算すると0.2MΩになる)
そこまで劣化してしてればいずれELBならトリップするかMCBならば
変圧器で低圧地絡警報(LGR)が出るでしょう。
ただ正確に今0.1MΩならこれは感電基準だから即火災には進行しま
せんがいずれI0rが1000mAとかなれば火災も考慮が必要となるの
で早い段階で不良個所を見つけて修理しましょう。

施工時に100MΩあったメガは通常の自然劣化で0.1MΩには絶対
になる事はありません!
★突発的な異常が必ず発生しています。
コンセント回路ならすべての機器を外しても異常が出ているのか?
そうなら室内配線かコンセント不良ですし特定の機器を接続した時に
発生するならばその機器不良と消去法でいけば意外と簡単に発見
できます。
★絶縁測定で0.1や0.2MΩを放置しないでね★

ELBなら切れるからわかるけどMCB回路で漏電した場合は切れず使用
されてるケースが絶縁測定時に基準値未満になってるケースが多いです。
私の経験では★MCB回路でよく絶縁不良が見つかります★
メガが完全0Ωなら完全地絡で短絡してMCBが動作しますが2000Ωでも
あれば100V回路なら約50mA(約の意味は話しがなくなるので省略)
で動作しない。(ELBなら30mA越えですでにトリップしています)
2000Ωなる値ではメガではほとんどが0Ωで表示されるでしょうがMCB
がトリップしてない以上は絶縁抵抗は厳密には0Ωではありません。


ただその程度の絶縁値になった時に配給側の変圧器B種接地でI0rが
50mAを超える現象が発生してここで電気主任として調査義務が発生します。
毎月変圧器B種接地電流を見ると正常ならI0r20mAが急に40mAになったり
しないのであくまで私的意見ですが30mAもI0rが急に増えたら劣化兆候に
ある回路がどこかに発生していると思っています。
ただ地絡LGR設定はI0検出式のため誤報を考慮し200mAなので警報が
鳴らないのでそこで気がついた時は絶縁劣化が進行した状態ですね。
だからテナント盤主幹でI0rを毎月測定するのも大切です。
過去記事でB種接地で通常40mAが70mAになった時にもしかして?
調査してテナントの漏電回路を発見した事例⇒漏電事故

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