2017年9月30日土曜日

電気主任技術者 ポンプ空転防止回路

どこにでもある排水ポンプ回路があるとします。フロート故障で起動
したポンプが停止しない場合最後は空転してしまいます。又飲食関
係の雑排水槽では稀に油が固まりフロートに悪影響を与えて同じ空
転という同様の事態となります。とにかく規定時間以上排水ポンプが
回ってる場合はヤバい
のです。ですが一般的に排水槽には減水警
報がないのでこういう場合では警報も出ません。(受水槽では減水
警報が動作するとポンプを運転ロックさせるのはご存知でしょう)
水中ポンプは通過水が冷却も兼ねてるので水がない状態で運転され
る空転の長時間運転によりメカニカシール等が焼損するのです。
対策として途中からの仕様変更改造は責任を避けたいのでメーカー
はしてくれないです。それが必要な事情の現場では電気主任技術者
が勇気を持って"私に任せてください"しかありません。そういう心構
えを工場勤務時代に私は父から学びました。

水中ポンプはモーターとポンプが一体物ですから一式取替となり
工賃込みで50万円はかかるのでオーナーからもなぜそうなった
のか?管理が悪いのか?防止対策はなかったのか?言われます
そういう事が発生する可能性がわかってるなら無策のままはダメ

オムロンとかでこういうのがあるのを発見しました。モーター電流値
で無負荷運転を検出する方式ですね。ですが最初からこういう装置
があるビル排水槽制御ってほとんどないと思います。確かにこの方
式までとなればメーカーでないとできません。

空転で温度上昇するとモーター内蔵のサーマルプロテクターが動作
するので大丈夫という意見も聞きますがこの点をポンプ業者に確認
しました"仮にモーターは保護できてもポンプ側まで万全ではなく特
に老朽化してるポンプだと温度停止SWがあるから絶対安全とは言え
ない"との返答でした。つまり空転したら温度を上げる前に早急にポ
ンプを停止させる
のが一番安全という話になり私も同感です。
MCBがあるから短絡させてもモーターは絶対に大丈夫かと考えたら
安全装置が動作する状況を発生させない事が重要ですよね。

私が管理するビルでは機械が設定時間以上運転をしたら警報を出す
機能が中央監視PCにあるのでそれを利用しています。もし水槽ポンプ
が規定時間以上運転したら警報が出るので夜勤者が仮眠していても
気がつけます。中央監視で警報を出す事は発生と復旧時間の履歴
もPC上残るので速やかにOPは対応しないといけません。ただすべて
のビルでこういう機能があるわけではありません。

以前私が施工した回路事例を今回は組立も説明します。
(近くの支店が担当する巡回物件ビルのため実際の施工状態
を今撮影できないので机上ですが組立てながら以後説明します)
排水制御において運転時間は一定でこれが5分とすると10分も
運転していれば明らかにポンプに異常が発生しているためポンプ
緊急停止が必要となります。水槽内にポンプON位置まで溜まった
ら定速ポンプで揚水つまり排水時間はほぼ一定という性質を利用
して空転防止を考えました。ポンプ運転によりタイマーに10分通電
するとリレー(今回はマグネットで代用)が動作してポンプ緊急停止
更に自己保持となるのでポンプ室に人が来て制御電源を切るまで
はポンプは停止状態を維持する回路です。又空転原因がポンプ
本体ではなくフロートにある場合は自己保持がないとポンプは
起動・停止を繰り返してしまいます。


中央監視への警報は盤内にある故障表示リレーのa接点を短絡
させたらポンプ室で異常が発生した事も知らせる事もできます。
(無人ビルで遠隔監視でも理屈は同じ)そこを短絡させたからと
既存警報設備に悪影響を与える事はないのは電気の知識があ
る方ならわからないといけません。もちろん線番を間違えたら
最悪焼損ですから今回の作業はビルで一番に電気が詳しい
電気主任技術者以外は禁止です。


まずこの部分の回路から作成します。ここでは手元にある配線を
使用していますが実際に施工する場合はAC200Vをかけても大丈
夫なより線で行います。間違いを少なくするなら用途事に色の違う
配線を使用すれば結線ミスも減らせるでしょう。タイマーはソケット
込みで購入すればこんなハンダづけして外線を出す必要はありま
せん。タイマーはプラグイン取付なのでタイマーだけを注文すると
こうしたタイマー本体のみとなります。

ポンプマグネットa接点からタイマーへの通電回路、既存ポンプ回路
では運転表示用に補助a接点を使用していますが通常1個は補助a
接点が空いてるのでそれを利用します。もし1a1bのマグネットならば
少し面倒ですが既存マグネットと連動するリレーかマグネットを併設さ
れてください。又制御電源MCBから回路電源は取る事とします。

更にタイマー接点とマグネットRを追加します。パズル的に考えてください。


自己保持回路の部分です。このマグネットにはb接点しかないので
今回は主接点でa接点を代用してその回路を組んでいます。主接
点をそういう用途で使うと考えたらこのマグネットは1bタイプですが
3a1bの使い方ができるという事です。このマグネットRが一番重要
回路でこれでポンプ強制停止と中央監視への警報回路を作成
しま
す。マグネットRは現場で制御電源MCBを手動で切らないと動作を
解除できない様にするため自己保持が必要なのです。こういう誤動
作防止回路は消防設備の様に自動動作、手動復帰が理想です。


自己保持回路電源をマグネットRのa接点に給電するためにNO1ポンプ
マグネットa接点上に接続したいのですが前にも説明した通り1端子に
3本は挿入すべきではない
のでこんな感じで接続しました。
紙の上ではどうでも接続できますが実際に配線する場合はこういう
制約が発生するので考えながら適所で接続を行います。

マグネットRのa接点を利用して中央監視に異常信号を知らせます。
又b接点に既存の水槽制御信号線を経由すればマグネットRが動作
すればNO1マグネットの励磁コイル通電はなくなる
のでNO1ポンプは
停止します。2a2bのマグネットがもう1個ないのですが実際はそれ
をマグネットRには使用してNO2ポンプ側も同じ配線をすれば10分
以上運転で2台のポンプは運転ロックされます。回路ですから今回
の様なマグネットではなくリレーをパーツSHOPで購入して配線でも
も構いませんが部品調達の点でマグネットの方が簡単なだけです。

ここまでしたならば空転が発生した時の表示ランプがあれば万全です
が上回路のどこの2点にランプを接続すればいいでしょうか?理解力
を試す意味で考えてみてください。

前述した様に手元に2a2bのマグネットがないため1台分しか回路を組ん
でいませんが排水ポンプは必ず2台で自動交互運転なので同じ配線を
NO2側にも施工します。警報はNO1側でするからNO2側には不要です。
タイマーは昔父からもらったのが手元にあってそれを使っただけで実際
にするならばソケット込みのタイマーを購入して使用されてください。
これは机上の事で実際に現場設備に組む時は職場の仲間が見た時に
動作はいいけど何て雑でセンスのない組立てなんて思われない様に
プロまでは無理だけど常識的な範囲で綺麗に配線、取付されてください。
そういう意識でするから最低半日は取付に時間はかかります。

既存盤内が狭くマグネットでは組めない場合はリレー使用となる
ので参考までにリレーの概要だけ説明します。本体カバーを外す
とこうなっていますが構造を考えたらb接点動作が必要ならどこと
どこに接続すればいいかわかると思います。リレーはDC、ACから
12V~200Vなど電圧用途各種あるのでその辺のSPECはよく確認
が必要です。こういう物だけは自分でパーツSHOPで買われる方が
いいです。端子構成も必ず確認されてください。リレーは小さな電流
だけを扱う物でマグネットはそれに+大きな運転電流も扱えるのです。
あくまで取付スペースの問題が発生した以外ではこういう事に詳しく
ない方にはリレーはあまりお勧めしません。


配線の考え方はマグネット同じです。ソケットも忘れずに購入する事!

3000円くらいしますが動作表示用LEDのあるリレーがお勧めです。
電圧は確認されるでしょうが間違えてDC用を買わない様にしてください。
AC回路にDC用リレーを使うとジーと大きな音が出て使用できません。
AC用とDC用リレーは本体外観が同じなので印刷表示をよく確認します。
不良品以外ではこういう物は返品はできないので注意してください。

初めて作業では盤へのパーツ固定が最初の難題でしょうね。取付作業が
想像してた以上に時間がかかるはずです。ドリルを使った事がない方は
金物に穴を確実に開ける練習を必ずしてからです。こういう盤は硬く穴が
開くまでは刃先が滑り易いのでポンチを使いましょう。(プラスチックに穴
を開ける感覚では全然穴は開けられないです)真っ直ぐに体重をかける
事で腕力だけで無理に押そうとすると手元がぶれて位置がずれたり刃先
が滑るとケガの原因
となります。それでも刃先がロックしそうならば刃先
が劣化してるので工具は万全とか思わないでください。(私はイザで困ら
ない様にドリル刃先は個人で持っています)ペンチetcもそうで工具は
他人と共用では使うのは嫌です。(職場の工具にガタツキがあるのは
下手な人も使うからで工具が正確でないと仕上げも悪くなります)

ネジ穴を作成するのは既存のパーツがすでに取付してるある状況では
狭く作業が困難でしょう。そうかと言って取付面がフラットでないので工
業用アクリルテープでも無理です。それは金属、プラスチック同士など
で完全に互いにフラットなら予想以上に接着できますがでこぼこしてい
たら工業用アクリルテープでも全然ダメです。

私の場合は先に極小穴をドリルで開け、ドリルビスでもみ込んで固定します。
マグネットは通常2点止めだけどこの方法で取れる事はないです。それとドリ
ルビスは下穴を開けないで...を知らないでしてるわけじゃない!
物を単に固定するつもりで電動でガチにするとマグネットの樹脂穴の方が割
れてしまうので注意されてください。M5サイズをよく使います。(ドリルビスは
ある会社のドリル付きタッピングビスの商品名)

これはマグネット交換を私がした時だけど既存配線を外す場合はどんな場合
でもどれがどの配線かわからなくならない様にマークしておきましょう。

どうしても既存の配線を触る事となるのでこの辺の意識も知識として持って
おいてほしいと思います。尖った端子とかで指先をケガをしてから反省して
も遅いので気をつけてください。

準備ができたら注文するだけです。会社にできると宣言してパーツを買って
もらうわけだから絶対に完成させて使用できる様にする責任はあります。
ですが自分の程度を職場の仲間や会社に示す最大のチャンスです。

貴方は導体に傷をつけずに配線が剥けますか、電気工事士の試験では
Wストリッパーを使うためにペンチで配線を剥けない方をよく目にします。
そのWストリッパーで剥いたという配線もよく見ると傷が少しあるケースが
あります。私が勤務する職場でも完璧に中に傷を入れずに剥けてる人
っているのかな?って感じですね。免許だけで電気工事士ではないので
ある程度は仕方ないとは思いますけど中には後で私が手直しする事も
あります。1000円以下のペンチでは刃先の仕上げが悪いのですぐ切れ
なくなり剥くのに不要に力をかけるせいというのもあります。3000円位
のペンチを使ってみてください。腕前が上がったと思うほど違います。
工具は室本鉄工のが間違いがなく長く良い状態で作業ができます。