2017年9月14日木曜日

正転・逆転モーター回路

今日は支店の人ではなく職場の20~30代の仲間と勉強会です。
動力三相モーターの逆転についてですが図面でわかったつもり
でいても自分でも同じ配線を組んでみる経験は必要です。そうで
あってこそ不調時に点検ができるのです。
まず正転側のマグネット
に接続されるモーターの配線を接続します。勉強会ですから配線
の色とか実際はTHRが必要とか細かい事は無視しています。
今日の記事から読まれた方又はこういう物を扱った事がない方
は前記事を先に読まれた方がわかり易いと思います。

正転側マグネットのR相の配線は逆転側マグネットを通してT相に接続され
ています。つまりS相はそのままでRとT相の結線を逆にする事でモーター
を逆転させます。
実際は2線を逆にするのはRとS相でもどれでも構いませ
ん。モーターは正転逆転可能ですがそれが常時されるかは接続される負荷
しだいです。(上下又は左右と移動運動がある様な負荷設備)

モーターをSPOTで反対に回すというならばMCBの二次側でも構わない
ので2線を入替えたら可能です。(3Eリレーの様な反相保護がある盤
では少し工夫が必要)_ビルで空調機、ファンを逆転させるなんてありま
せんが私の場合は排水槽内の水中ポンプが異物で吸込み口が詰まった
場合に10秒程度ポンプ逆転をする事が年に何回かあります。正転使用
が基本の機器で逆転させるのはやもうえない場合に限り10秒程度!

⇒モーター逆相運転具体例記事

単相電源で動く機器で逆回転動作がある物は正転・逆転切替があります。
三相の様に電源配線を入替えただけでは単相モーターは逆回転できません。
(コンセントにプラグを逆に接続して扇風機は逆回転しないです)
単相モーターはコンデンサを接続して位相をずらした電源を作り回転磁界を
作ることでモーターは回転します。従い単相モーターではコンデンサーが機
能しなくなると起動しません。
ただメガ値が正常、手で回してあげれば少しで
も回転するならコンデンサーを取替したらまず直ります。家電とかでもこの
コンデンサーが不良となりモーターが回らなくなるケースがほとんどの様で
すね。でも相当老朽化してるはずで修理より買い替えが普通でしょう。

三相モーターの場合はコンデンサーは不要でこういうのは15年は故障する事
なく使用できるのが普通です。ファン側のVベルト定期交換、グリースアップと
いう維持管理がきちんとできてる現場に限ります、モーターはそれと接続され
る負荷設備の異状により故障する、単体では15年は故障しない作りです。
Vベルトが切れた運悪くシャフトに巻き付いた、グリースアップせず軸受劣化
更に放置しロック、いずれも過電流トリップでモーターにストレスを与えます。
(Vベルト定期交換、グリースアップは私から言わせたら定期測定業務と同じ
でモーターの維持管理上、電気主任技術者が自ら行うべき業務です)

余談でしたが本題に戻ります。これでモーター側の配線は完了です。
もちろん操作回路がないのでこのままでは動作しません。押しボタン
SWがなかったのでここで終わるつもりでしたが一人から前みたいに
1個のタンブラSWのみで正転・逆転できませんかという提案があり
それは私も考えてなかったので検証してみました。

こういう場合あれこれ考えるより実際に組みながら修正していくのが楽しい
のでまずは両方のマグネットコイルの各片側にモーター回路から給電
しました。つまり制御は片切りで行うためこれは共通配線としたのです。

正転マグネットを動かすためのタンブラSWを取付けてみました。

タンブラSW入で正転マグネットは投入されるがb接点があるので逆転
マグネットは動作しない、タンブラSW切なら正転マグネットは動作せず
b接点はONだから逆転マグネットのみが投入されるので問題はないと
一時安易に私はそう考えたのでした、でもなんとなく何かおかしい予感
もしました。今一度回路の動きを想像するといくつか問題があります。


これではマグネットは常にどちらかが投入状態となるので停止させる
仕組みが必要です。マグネットにかかる片側端子を無電圧にすれば
いいので私が指で示してるこの部分にタンブラSWを挿入すれば解決。
(この位置で切りにすればマグネットはどちらも投入されません)


私の保守範囲は22000V~100Vまでです。
トラブルというのはビル現場では対地電圧100Vの回路がほとんどです。
電気設備安全管理においては対地電圧で物事を考える癖をつけましょう。



マグネットを両方入切するSWをつけたので再度下のタンブラSWが切り
なら①には電圧はかからず②の電圧はb接点を経由して③まで行き
逆転マグネットのみが投入される、逆にタンブラSWが入ならば?と考え
たら重大な欠陥がある事に気がつきました。貴方も気がつきましたか?
互いに動作をb接点で制限してないという以前の問題です。
タンブラSWが切りで投入させる逆転マグネット運転時は正転マグネット
は絶対に投入されないからいいけど、正転運転のためタンブラSWを入
とした時にまさに今電圧がかかる瞬間は正転マグネットは投入されて
いません。又b接点もON状態ですから一瞬先に逆転マグネットが投入
され正転マグネットも投入されてb接点がOFFとなった瞬間に逆転マグ
ネットは切れます。つまり正転と逆転マグネットが一瞬同時に投入され
て短絡してMCBがトリップします。モーターより上での短絡だから最悪
はマグネット接点の焼損に収まりますがあってはならない事です。

1個のタンブラSWで正転・逆転切替は無理なのでもう1個必要となります。

逆転マグネットのb接点経由で正転マグネットをタンブラSW1でON/OFF
させる回路を作成しました。

正転マグネットのb接点経由で逆転マグネットをタンブラSW2でON/OFF
させる回路も追加しました。
この様に相手の条件により自分の動きが制限される状態をインターロック
というのです。制御回路において基本の中の基本ですね。

結局は一般的に言われる正転・逆転回路と同じとなりタンブラSWなの
で自己保持がいらないというだけの事でした。正転・逆転モーター回路
はビルなら駐車場、ゴンドラ、シャッターいろんな機器で使用されます。
その他スターデルタ回路にしても確実に扱えるレベルで理解するなら
工業高校の学生さんと同じ様に自分の手で配線を組んでみるのが一
番です。習うより慣れろとは父の世代の方がよく言われる言葉ですが
これについては私も同意します。
下回路程度が読めない現場電気主任
なんて存在しません。(★回路図は新記号と旧記号に対応できる事★)

タンブラSWの部分を押しボタン式にすると押しボタンを押してる間しか
機能しないのでONボタンから手を離すとマグネットが停止してしまいま
す。そこでa接点をONの押しボタンに並列につける事で解決する配線
を自己保持回路といいます。
ただこの方式では回路を切るOFFの押し
ボタンSWが必要となります。自己保持回路はあらゆる回路で使用される
のでよく理解されておいてください。★応急的に何かをするなら自己保持
とOFFボタンが不要なタンブラSWは照明SWとしてだけでなく意外と便利
です★少なくとも私のお仕事においてはそうで、そう思わない人がいても
それはそれで自由です。(タンブラSWは300V、15Aまで使用可能)

貴方の現場対応力テスト...三相モーターが接続されているとして
回路中のタイマーは何を制御してるのかという問いです。私で30秒
程度でわかりました。まさかONボタンを押してモーターが起動する
までのタイムラグなんてそんな制御ではないです。その動作用の
タイマー接点でこの回路ではモーターが起動できません(ガチヒント)

後ONボタンを押してモーターは起動するが"ボタンから手を離すと
モーターが停止してしまいます、電気主任さん?"と言われたら!
あれが故障してるのか確認するのにどの部分をジャンパーして確認
したらいいか物のそのポイントが即イメージできますか?
マグネットが故障してるのでしょうとテナントに返答したら稀ではある
けど押しボタン故障だったら...確かに押しボタンもそんな故障原因
の一つとなりますがではどう点検したらそれが故障と判定できるのか?
これが重要設備なら遅くても30分以内には答えを見つけて復旧対応
の処置を開始しなければいけません、日常業務以外こういうのも電気
主任技術者のお仕事なのです。業者に連絡したら今他現場トラブル
で全員出ていて夕方になります。なんてのもよくある事です。

そういう時に頼れるのは過去の対応経験だけです。できる方が語って
くれる(業者、できる先輩)対応経験というのは謙虚に受け入れて必ず
メモしておきましょう。前記事でも書きましたが他人の失敗や短所ば
かりに一喜一憂してる様では自分だけ何の成長もできません。



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