2017年4月30日日曜日

深夜地絡調査~意外な原因!

前記事の続きで23時に会社に入るつもりでしたが22時から第2変電
設備にある一般動力1変圧器の地絡調査を行いました。

これがそうですが私が測定した時は約62mAまで低下していました。
毎月のB種接地線測定では30~35mA程度の変圧器です。
呼び出し時は200mA近い値が下がらないという報告でしたが夜出勤
したのでとにかく地絡調査開始です。
"何か手伝う事があるか"夜勤者に質問されましたが"留守番をして
いてください"と指示していつものクランプ2個と工具を準備して現地
に直行しました。
(顔にそんなわからない事なんてしたくないと書いてある人は最初から
丁重にお断りをします、それにやる気ない人は邪魔です)
だから今回はBlogで作業プロセスをほとんど撮る事ができたのです。

貴方も電気主任となったならいつかこういう作業をする事があります。
まずはこの変圧器の二次側にはI1~I8回路まであります。
MCBの表には現在の各行先を記載しています、6WHB1とあってもすぐ
6階のどこの盤か職場の誰もがわかる様にしておきたいからです。

この時間では回路停電はできないのでケーブル絶縁測定は23:30
から行う事としてI0/I0r測定を盤の裏の各回路で実施しました。
完全な共用部と異なりテナントが絡む場合はテナントに停電許可を
もらってからでないと絶対に回路停電はしてはなりません。
テナントが退社してるからと電気を切り装置エラーが出たら大変です。
こんな夜間でテナントが不在の場合はテナント責任者の緊急連絡先
はそのビルの警備係に聞けば通常わかります。


左が約3mA(2.9)でどれもこんな程度でI5という回路が約42mA(41.9)
電話で聞いていた回路番号と違うけど行き先は合ってるから設備の人
の見間違いでしょうね。とにかくI5回路の二次側3盤を調査開始!
I5回路以外はケーブルの絶縁も正常とこの時点でも予想できます。
(ケーブルに絶縁抵抗異常があれば常時高いI0値が測定されます)

それと測定器の小数点をよく確認されてください。特に視力が落ちてる
中高年の方に多いミスです。(オジサンはやはりダメなんて言われない様に)
I0を測定するクランプメーターでは確実に配線をクリップする事です。
太いケーブルを3本挟んだ時に隙間があって異常ない回路なのに100mA
も漏電してるとか騒いで私に連絡される初心者の方が時々います。
下の様な状態ではなく斜めに挿入しないといけない時は測定時注意です。
だから自分で調査する時は相手の測定ミスも考慮し最初から測定します。

これは第1変電設備の低圧配電盤裏だけどここはケーブルが重なり
クランプメーターを挟むのが扱いに慣れてない人は意外と難しいです。
正確な測定をするにはきちんとケーブルを挟めてないと意味ないです。
なんでもそうだけど人がするのを見てると簡単そうでもイザ自分がする
にあってはまるでダメという事はあるのでどんな事も自分でもされて頭
ではなく体で覚えてくださいね。凡人は知識だけと腕前は比例しません!
経験0知識だけで現場対応ができるとしたら逸材で私では無理です。

活線状態での絶縁判定としての漏れ電流ですが対地間抵抗に
よる電流成分はI0rなので厳密にはI0rでの判定が必要です。
機器が発生する高調波やノイズは下のI0cに乗ってくるのです。
つまりI0=I0r+I0cですが十分に低いI0値ならI0≒I0rだから
絶縁判定としてI0はそのまま使えます。

ただテナント退社や共用機器が停止してる時の夜中I0上昇は
漏電である可能性が私の経験上では高いですね。
漏電するという事はI0rだけが上昇するわけで火災・感電事故
はこのI0rつまり電源周波数と同じ成分の漏れ電流が原因です。

第1盤調査、すべての回路で0~3mAですから異常なし
こんな値ではI0rを測定する必要はないです、I0rでならばほぼ0mA
となるのはすでにわかっています。

回路電源を切れるならば絶縁抵抗測定をしても構いませんが十分この
I0の値ならあります。時間節約のため絶縁抵抗測定は省略しました。
前記事でも説明しましたが使うのはリーククランプメーターです。
ホームセンターにある1万円以下のクランプメーターではダメですよ。
漏電調査では1mA(0.001A)が正確に測定できる性能が必要なのです。
下のクランプメーターで0.1mAまで測定可能です。

第2盤調査、ここはスターデルタの空調動力盤で主幹I0測定で
約4mAでこれも異常ありません。(モーターならI0でこの程度でしょう)
当たり前ですが空調機が運転してないとI0は測定できません。
時間的に停止していた場合一時は変圧器で200mA地絡が発生して
いたので絡んでるなら手動で運転してI0測定を行います。
停止中なら絶縁抵抗測定で判定しても構いませんが携行する道具を
減らしたいので私はI0で測定調査をしているだけです。
もし仮にここが原因というなら追加結果として絶縁抵抗測定もします。
スターデルタ回路ではどこにメガを当てたらいいかわかりますか?

第3盤調査、ここで異常回路を発見できました。

引き込みでI0を測定したら45mAあり他盤と比較して高い値です。
この程度のボリュームの回路主幹ならば他盤のI0との比較から
10mA程度なので45mAは少し多いと瞬時に感じました。

主幹からの各分岐I0を測定しましが三相200Vから単相200Vを
取出して給電される自動制御盤主幹で30mAのI0異常を発見!
こういう物はI0で1~3mAでI0rでは1mA未満が普通です。
現場管理が慣れてくると負荷内容を見たら大まかには正常状態のI0
値は想像できますが最終的にはそこをメガで絶縁測定にて確認をします。

ただこういう計装自動制御回路のメガは接続される精密機器故障
に至るので100V用でもしてはいけません。

それにこの場合はメガをしなくても明らかに漏電してるとわかります。
これは熱源自動制御が関係する回路で23時まで後10分なので
冷温水発生器停止を待ってからこのMCBを切ると変圧器B種接地の
電流が62mAから33mAに下がりいつものI0値となったのでした。
★間違いなく今回の変圧器地絡原因と確定しました★

工場に勤務してた頃にこういうラインフィルターが燃えた事があったので
真っ先にそこのI0を測定しましたが0.42mA未満なので関係ないです。
人間嫌な思いをした事はトラウマとなっていつも気になりますね。

夜間は修理完了まで面倒でもこれのMCBを切ってから夜勤者には
仮眠をしてもらう事にします。
回路のI0が急に200mAもなれば地絡警報は出ますが安全のため。
それに夜中にそれが出ては仮眠もできません!

たとえば他場所での同じボリュームの自動制御盤ではどれもI0で
1mA未満です。こういう比較値も後で報告書に加えたら万全です。
職場の目立ちがり屋がつまらない反論をされて対応が遅れてはい
けませんから正常な同回路の状態もつけるべきです。
個人の理論より現実の状態というのが何より優先されるのです。

もし仮に今回の30mAなんて出てる自動制御回路を絶縁測定をしたら
0.1MΩ未満は確実だけど熱源制御ができなくなるので明日も朝から
使わないわけにはいきません。
盤の中で線が見た目どうかなってるなら私で修理しますがこれは何か
パーツが故障してるのでどちらにしても業者を呼ばないといけません。
修理パーツもなく故障してる重要回路を触るのはPlease don't!
休日でもああいう会社は緊急対応の人間が必ずいるので大丈夫です。
最悪対地間短絡となると故障してない回路まで壊れてしまい熱源制御
ができなくなると数日冷房ができなくなりテナントの信頼も失います。

配線が挟めない時はカバーは切断すればいいです。I0測定では回路
が生きてるので無理な挿入をして短絡でもさせたらいけません。

最後に受け側の主幹(盤1~盤3)を切りI5回路のケーブルメガを
第二変電室で行いましたが100MΩ以上なので問題なしです。

今回原因は確定したので他正常回路のケーブルメガは行いません。
低圧幹線ケーブルの絶縁測定は必ず500Vメガで行ってくださいね。
メガのアースリードを盤の扉につけて測定する先輩がいてもそれは
盤内のアースターミナルに面倒でも取付しましょう。
メガは接地に対しての抵抗測定で扉との抵抗測定ではありません。
アースリードの取付不備は実際の値より高めとなるはずです。

今夜何をしたか申し送りが必要なので後は事務所で書類作成です。
会社への正式報告書は修理が完了してからで第一報として明日は
これで報告を行います。(エクセルで作成)
まず明日メンテ業者に連絡して緊急対応をしてもらいますがこう
いう写真付結果書面がないと具体性がありません。
数値、写真で何をしたのか一目でわかる内容でないといけません。
必要なら図面のCADでデーターを画像ソフトでJPEGとして取り込ん
でエクセル書類に貼り付けを行う事もあります。
調査⇒修理⇒作業報告書作成か調査⇒作業報告書作成⇒修理までの
扱い策指示⇒早急に業者連絡⇒業者と打合せ⇒修理確認が電気主任
のすべき故障時のお仕事です。(会社への正式報告書は修理完了後)

結局4/29の22:00~4/30の00:30までの深夜作業となりました。
もちろん残業はつきますから時間報告は30分単位で行います。
誰かが指示してくれるわけではないので電気トラブルが発生
したら電気主任技術者は深夜一人でも対応しないといけません。

修理完了又は修理の方向性を見つけ指示するのが私のお仕事です。
電気オンチのお手伝いが何人いても何の解決の役に立ちません!
それに変圧器~漏電個所まで調査してくれる業者はいないのです。
そのためにキミを電気主任として選任で雇用しているとオーナーから
言われたら返す言葉もないでしょう?
だからどんな電気トラブルでも結果報告書をオーナーに提出します。
資格だけの何もしない電気主任ならオーナーは電気主任は解任し
保安協会に委託される時代ですよ。(電気主任技術者不選任制度)

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★業者との作業について、4/30 14:00~

この自動制御図面は会社にもあり私も一通りは研究してるのですべき事
はある程度は考えていました。
電源RSの二線分からCPを通して回路が12程あるから最初RSにクランプ
を挿入したままCPを切れる物は切り電源でI0の変化を見る、切れない線
は直接そこを挟んでI0を見ていくのが最初!
それで故障回路が判明したら更に原因を詰めていくしかないかな?

昼からメーカーの若い男性が一人来られて私が相手だと俄然やる気を
出されました。
又休日なので家で寝ていて来てくれたので申し訳なく私も全力で協力を
してあげないといけないと思いました。ありがとうございます。
こういう自動制御機器類の漏電という故障は彼も経験は少ないと言われ
ていたけどなんとか二人でなら見つける事はできる予感はしました。
私の意見を尊重してくれて、彼に"今運転中で短時間なら切れるCPだけ
を順番に切ってください、私は電源のI0の変化を見てますから"とお願
いしました。

その前に通電状態でリレーをそのまま抜いてたので私は"そんな事を
したら逆起電力などで壊れないのですか”と質問したら"この回路は
わずかしか電流がないので大丈夫です"との返答でした。
リレーやCPは壊れないのはわかるけど接続されるコントローラーが故障
する事が怖かったので実行為を確認するまでは私はできませんでした。
実際その行為を目撃して壊れないのを確認したので次回は故障が発生
したらその方法をこの現場回路だけでは行うつもりです。
前述で"この回路では...."と彼が発言した言葉が一番重要です。
これが違う現場の違う作りの回路ではそうではないという意味ですから
相手の言葉は正確に理解しておかないといけません。

切れる回路を切り電源でI0が低下するか、切れない回路は直接分岐側
でI0がいくらか見て確認するわけです。違いを理解されてください。
実際は配線が綺麗に収納されていてほどいたりする必要があるのです。
最初に彼がしてる手さばきを見て覚えて私も途中からして習得しました。
お客さんが一緒にこういう作業をするのは初めてと彼に言われましたが
けして不器用ではないので教えがいがあります。と言われたのだけが
救いでした。そう迷惑だけにはなりたくないので私も真剣です。

いきなり3個目のCPを切った時です、急にI0値が激減しました。

今電源間で40mAあったI0がいきなり約1mA(1.31)となったのです。
思わず私は"そそれです、漏電してるのは!"と言葉が出ました。
こんなに早く発見できるとは思ってなかったので二人で驚きです。
こういう写真は後で職場の申し送りとしてつけるので撮っているのです。
後で何かあっても確かにその時そういう結果であった証明になります。

彼が"ターミナルで漏電機器との接続を外して電源I0が確かに減少
するか最終確認をしましょうと"言われたので同意しました。
つまりターミナルの36と37の2線を外せばいいだけです。

実際のターミナルで言えば下側の36と37番の配線を外しやはり濃縮
防止ブロー回路で漏電が発生してるのが判明しました。
こういうターミナル(外線接続)では通常上側が回路側で下側が現場
機器側なので覚えておいてくださいね。盤全体を見たらわかると思う。

更に彼と今度は配線か装置自体のどちらで漏電が発生してるか
調べるのに彼に屋外の装置の配線を外してもらい私がI0を測定
したら同じく約1mAだったので配線には異常ない事が判明しました。
結局この装置を取替する事で結論が出ました。
こういう業務用機器は修理はなく壊れたら即取替を行います。
配線だったらとても面倒なのでそこが不良個所で良かったです。

電磁弁も交換という事で取替見積作成をお願いしました。
お金をかけて修理する以上は半端にして関連するパーツも不良で
更に同じ理由で費用捻出をいうのは会社事務が一番嫌う行為です。
金額ではなくどうして一度でわからないのかなんて事をいう器量の
狭い上司がどこでもいるので一度で決めないといけません!
40万が50万円かかる程度の違いなら50万円で修理してもらいましょう。
現場のこんなやり取りなんて会社の事務が知るわけもなく言う必要も
ないのです。
見積を提出してもらい工事発注書をオーナーが業者に提出してから
の工事となる
のでたぶん取替は5月中盤以降となると思います。
それとお金の支払いも決めずに業者に先に仕事だけを強制するのは
下請け業法に違反するらしいのでそういうお願いはしてはいけません。

それまでの対策として故障回路は切りのままとして時々人間が手動
でCT内部に水を入れて濃縮防止する事で対応する事になりました。
一瞬どうやって水を入れるのか?と思ったけどよく考えたらバイパス
バルブを手で開けたらいいのです。
確かに何を業者に質問してもいいのですがあまり簡単な事を質問し
たくないのでまずは他人に聞く前に自分で何でも考えましょう。

自動制御回路で漏電が発生したら電源でI0を測定しながら回路
のCPなどを順番に切っていけば漏電箇所を見つける事ができる。

それと絶対にこういう場所はメガでは点検してはいけません。
業者もここではメガは絶対しないと言われていました。
★精密なコントローラーなどがあるので壊れてしまいますよ★
コントローラーは1個が数10万円もするので社内でも罰則を受け
る事となり貴方の将来にも影響をします。

後自動制御回路を扱う場合はこれは覚えておきましょう。
電圧変換する物が回路中にあると非接地となるから一次側では
漏電回路を構成しないの意味はわかると思います。

参考のため単相三線式変圧器のB種接地線に流れる電流です。
電源として交流を使用するから対地間静電容量回路を構成するわけで
直流送電なら対地間抵抗だけしか発生しません。
機器から発生する高周波成分、ノイズはこの対地間静電容量回路
を通じて流れてくるのです。

理由はコンデンサーによるリアクタンスは周波数に反比例するからです。
(I=ωCV=2πfCVから高い周波数成分ほど通すのはわかると思う)
メガは直流電圧をかけるから純粋に対地間抵抗値を測定できるのです。
この対地間抵抗値にのみ流れる電流をI0rといい直接それを測定する
には専用のI0rクランプメーターが必要となります。

つまりI0rを測定すれば絶縁判断が可能となるのはそれが理由です。
普通のクランプメーターで測定すると対地間静電容量と対地間抵抗の
両方の成分の合計を測定する事になりますがこれがI0です。
対地間静電容量により流れる電流I0cが多い回路ではI0では絶縁
判定ができない場合もありえます。
私の経験では分電盤主幹でI0が数mAならI0rを測定しなくても絶縁
は正常と判断しても良いと思います。(通常盤で5mA未満が多い)

単相三線式回路でI1とI2は方向が正反対で大地で相殺されてその
差分がB種接地線の電流として流れるわけで厳密に言えばすべての
微小なI0が単純に加算されて変圧器B種接地線に流れません。
ですが負荷で漏電が発生するとその事を知る事に利用できます。
今は1変圧器当たりで50mAを超えたら原因究明をします。
あるI0地絡検出システムのマニアルでもこう記載されています。

ただI0測定では50mAを超える結果を正常でも出す場合がある
のでその場合はI0rでB種接地線を測定されてみてください。
正常ならば50mA未満と必ずなるはずです。
ならない場合は今回私が記事にした様に変圧器から漏れ電流の
流れを追って見る必要があります。
実際今回もI0が62mAで漏電が発生していたわけですから!
今回はすでに200mA以上が連続で発生したままという前現象が
発生したのでI0r測定をせずすぐ調査を開始しただけの事です。
もし200~300mAも出てるのに原因がわからないからと警報設定
を上げてエスケープしてるのはかなり危険
度の高い行為です。


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