2017年1月13日金曜日

電気主任技術者 区分停電操作

NO3変圧器を1000KVAから2500KVAに更新するに当たり前作業の
ため既存のNO3変圧器を切り離す依頼が業者よりありました。
今日は有望な新人さんに教えながら二人で行いました。
★この程度はいつでも電気主任技術者は一人でできないといけない★
ので過去の繰り返しになりますが再度説明します。
受電状態の操作でビル内は営業状態なので操作は慎重に行います。
NO3変圧器を切りますがNO1+NO2変圧器は生きてるのでNO3変圧器
の負荷は残り2台の変圧器に瞬時に分散移動します。
十分2台の変圧器に余裕があるので瞬時的な電圧低下は発生しません。

最初に変圧器の二次側(6600V)の開放を行います。
負荷側からルール通りに切れば何の問題も発生しません。
★必ず最初にVCBを切り無電流にしてから以後作業は行います
遮断したらNO3変圧器盤電流計にて0Aを必ず確認します。
電圧はDSをこの時点では切ってないので6600V指示のままです。
(NO1とNO2変圧器の電流計はNO3の負荷分だけ指示値が上昇)
ただ下スケルトンからもわかる様にVTはVCBとDS間の電圧を見て
いるためDS切りにより27警報が中央監視PCへ行くので後で処置
は必要となります。

(私たち電気主任はこの図面さえあれば説明を受けなくてもその
現場の取扱いや仕様はほとんどわかります
)
これを理解して次にシーケンスを習得したらその現場で貴方は無敵!
ただ実物に触れた事なくて本で勉強しただけでは現物を前にしたら
頭がWhiteになるのが普通、とにかく現場に入って物を見て操作
しながら覚えるのが現場を覚える事なんです。
★五感を通して覚えた事だけが条件反射の様に可能となります★

電流さえ流れてなければ電圧がかかっていてもDSを抜く事でアーク
は出ませんので大丈夫です。
絶縁手袋と電気ヘルメット、後私は念のためゴーグルをつけて操作を
します。★大丈夫でも身を守る術は万全で行います★
切りの操作手順は①から開始して順番にすればいいだけの事です。

写真の様にVCBとDSは完全に回路から切れました。
これでいかなる方法をしても負荷送電される事はありません!
一時的に電気を停止させるならばVCBの切のみでも構いません
今回は線路、盤内で人が作業をするので完全に電気を止めます。
このDSはVCBを切らないと操作レバーを動かせない仕組みがあ
るのは電流が流れてる状態でのDSの生切りを防止するためです。
(インターロック式のDS)_操作にDS棒は使いません!
この時点で盤内の一番上のDS一次側まで6600Vは来ています。

今更ですが現場未経験の方に説明すると高圧受電盤にある操作SWは
引いて回すのです。
初めて電気主任となり停電作業をする時とかで緊張して"回りません"
なんてない様に注意されてくださいね。
目の前に書いてあっても緊張するとそれさえ見えなくなるのが凡人です。

インターロック式のDSはこの操作レバーを下に引いて入、上に持ち上げて
切りとなります。
私のこの手でもできるのですから力任せに操作しなくても大丈夫ですが物事
は丁寧に扱う様にされてください。

VCBが投入状態ですとこのピンが固定状態となる事でレバー操作をできな
くする構造です。
何年も投入状態のこのタイプのDSですとVCBは切れてるのに固着してピン
を移動できず切りのレバー操作ができない事が稀にあります。
せめて年1の停電作業の時は開閉具合のCHECKはしておくべきです。

図面を見ると27X-R31のa接点で中央監視PCに停電警報が行く
わけなので1本配線を外すかリレー本体を抜きます。
重要な制御が他に絡まないのであればリレーを抜くのが簡単です。

このタイマーは2秒後に動作して27X-R32リレーをONさせます。
27X-R32リレーのa接点はVCBのトリップコイルに通電するための物
ですが監視室PCへの警報は止めても盤自体のUVRは動作した状態
なので27T-R3のタイマーも外しておきます。
20日位先の本工事で2500KVAの変圧器が接続されたらまた戻すの
であまり配線を外したりはしたくないのです。

最後に変圧器の一次側(22000V)の開放を行います。
変圧器一次側のVCBを切り盤電流計にて0Aを確認します。
変圧器は二次側回路を開放しても一次側には無負荷電流I0が
流れるので必ず一次側VCBを先ってから完全に0A状態にします。
ただ二次側のDSみたいにここはVCBとインターロックがないのでDSの
生切りという事故だけは十分に注意して行います。

レバーを切り側に回せばVCBは切れます。
こういう操作は現場機器の状況を見ながらするのですから遠隔で
PCから操作するなんて事は私はしません。

PC監視盤ではコンデンサー入切りのVCS操作のみでVCBをそこで操作
するのは緊急事態の時だけと私は決めています。

VCB本体にも緊急用の入切の押しボタンがあります。
これは22000V用のVCBだけど基本的な扱いは特高も高圧も同じ。
ただこれを操作して直接VCBを入切りする事は通常ありません。

VCBの選定で一番重要なのはその地点での短絡電流です。
私が管理してる所内の22000V点で短絡電流は5500A程度なの
で定格遮断電流が16KAもあれば問題ありません。
受電点の短絡容量計算書を現場で無くしてる場合は電気を配給
してもらってる電力会社にも資料として提出してるはずです。

DSの操作と同じでVCBを引き出す場合も先にVCB本体を切って
からです。
停電作業の時にでもVCB引き出しの練習をされておいてください。

最後に上VCB一次側のDSをDS棒で開放して作業は終了です。
今回は抜く操作ですが逆に投入した場合は後で放射温度計で
接点が熱を持ってないか温度を測定しましょう。

正常ならば周囲温度とほぼ同じ程度のはずですが室温が20℃
なのに40℃もあるならきちんとブレードが挿入されてないのかも
面倒でも再度抜く、入れるの操作をされてみてください。


今一度受電部分を見るとNO1とNO2変圧器の一次側にはVCBがない
という事は受電状態で今回NO3変圧器で行った切り離し作業をNO1
とNO2変圧器で行うと一次側のDSを1本抜いた瞬間に過大な電流が
抜いてない2本に流れてしまいます。
(三相負荷の電源を強制的に単相状態にしたらどうなるか考えてみて)
NO1とNO2変圧器の切り離しだけは受電VCBを切り一旦全館停電
させないと行えません。

LBSなら三極同時開放が可能なので受電状態でも変圧器は開放できます。
1極づつ操作するDSはその二次側に三相負荷が直接続されてる場合は
完全に停電状態でないと絶対に操作してはなりません!

ビル全体の負荷容量が少ない場合にNO3変圧器だけは受電状態でも
切り離しできる様に設計者はNO3だけ一次側にVCBを設置したのです。
(変圧器の無負荷損失による待機電力の低減のため)
ただ2台運転で1台が使用不能に至った場合にここの設備の人では
安全にNO3変圧器を生かす事に疑問があるので待機電力を消費して
も私の判断であえて3台運転を会社に許可してもらいました。
3台運転なら1台がトリップしてもビル営業は問題なく継続できます。

末端6600V変圧器の一次側にあるLBSならば3極同時投入・遮断が
可能ですからVCBを切らなくてもそれで区分停電はできます。

配電盤のELBやMCB増設工事では6600V変圧器の停止操作をLBS
で電気主任が行う必要があります。(年に数回はあると思う)
LBSの投入、切り操作は上で見たDS操作と同じDS棒で行います。

中央監視PCで切り状態の確認と27警報が出てないのを確認します。
27が動作すると27の文字がREDでフリッカしますが27X-R31リレー
を抜いているので27の警報は上がって来ません。

切り離し操作が終わったので業者に電話して明日からいつでも作業
に入る様に指示を行いました。
1000KVAから2500KVAの変圧器変更時は全館停電で夜中作業
になりますが定格電流が変わってくるのでCTや電流計など付随
機器の取替が事前に必要となるのです。
電流計が変更になるという事はCTの比率が変更となるのでOCRの
設定変更も必要となります。
簡単に言えば現在1000KVAの変圧器用は50Aの電流計ですが
100Aの電流計にするとCTは100/5となり、75Aなら75/5です。
一次側電流の1.5倍値でOCRを動作させるならばCT比率の違い
でCT二次電流では動作電流値が異なってくるのはわかるでしょう。

具体例で説明すると受電のOCR設定だけどこれが現在の状態です。
1.5倍負荷で動作させるならば5.25Aの1.5倍すると7.88Aになる
ので約8Aを採用して基準入力5Aの%倍率で160%で設定されています。
(%倍率ではなくて直接電流値で変更するダイヤル式もあります)
電気主任は自分の担当した現場の継電器設定値を自分でも計算して
その意味を知っておかないといけません。
オーム社の専門書でも1.5倍負荷を基本とありこの辺が適値です。


停電作業をする場合に電力とのやり取りで甲種接地は扱う要素なので
電気主任技術者を目指す方はこの言葉を覚えておきましょう。
取付は最初にアースターミナル接続⇒甲種接地取付ですからね。
急な停電が必要な場合もあるので電気主任一人でも確実に取付はで
きる様に現場に着任したら練習されてください。

こういう現場作業を怖いとか思う人は電気主任にはなれないです
安全防具着用、操作手順厳守、短絡しない、生で電気を抜かないの4点
さえ厳守してれば事故は発生しません。その上で感じる怖さの事です。
★ですが無知で感じてる安心感ほど私から見たら一番怖いですね★

いずれにしても変圧器を取替する様な工事では設定変更表を業者が
持ってくるのでそれで良いか電気主任として内容の確認と返答が必要
となります。

業者に”それでいいのでしょうか?”ではなくて業者が"これでよろしい
でしょうか?"と電気主任技術者となった貴方に質問してくるのです。
お金をこちらが払ってるのになぜ質問してくるのか?と不満に感じる
としたら電気主任技術者の立場と責務を理解できていません。

★私が守るべき会社の電気保安規定の第14条の3の記載です★
電気工作物に関する工事を他の者に請け負わせる場合には常に
責任の所在を明確にし、電気主任技術者としても検査し支障のない事
を確認しなければならない。

ですから電気主任は単なる作業の立ち合いではなくて業者作業の把握
と進行を常にCHECKしなければなりません。
そこで重大な物、人の事故が発生するとその時、それまでに何をしてい
たのか?という立場におかれるのです。

中央監視PCは計測値にはすべて警報設定ができます。
すべての要素を24H監視するのはできませんがいろんな計測ポイント
に自由な設定をする事で私がいない時でもこれが私に変わり監視を
してくれます。又異常が発生してもこれの過去値が重要になります。
愚痴ってるばかりの先輩よりはるかに機械の方が私の役に立ちます。
中央監視PCこそ電気主任の最大の見方でこれは完全マスターしましょう
事前に遮断可能な負荷を登録しておくと30分の残り現在デマンドを計算
して実行してくれます。(デマンド制御と言います)

取り込んだdataを使いグラフ化すると過去のある点の変化が一目瞭然
電気室の電圧や電流の記録も取りこんでいるのでイザ故障が発生すれ
いつから異常兆候が出たのかが分析できます。
逆にそういう兆候の癖が事前にわかるならそこに警報設定を入れたら
防止ができるわけです。こういう機能を上手く使いこなせたら優秀な電気
主任技術者のナビゲータが増えたのと同じ事になります。
空調機、水関係、防災管理も可能でただ単にスケジュール運転と手動起動
ツールとしてしか使用してない現場がたぶんほとんどです。
又NETを使い自宅のPCからこの中央監視PCを遠隔操作する事も業者に
設定してもらえば可能ですが今はそこまでの現場はまずないです。

ただこれからはLED化で電球交換がない、個別空調で運転人も不要
となるので小中事務所ビルを無人化させて在宅PCで複数遠隔監視する。
(病院、工場、百貨店とかの無人化は無理でしょう)
不具合が発生したら業者に連絡をして修理させる、高い様ですが現地で
人を雇用する事を考えたらそうでもないと思います。
個人で会社とそういう契約をして管理をするなんて時代も来るのではない
でしょうか?もちろんそういう判断が必要ですから現場のエキスパートと
して相応の資格(ビル管+電験)と現場経験5年以上とか必要でしょうね。
でも将来そんな事が可能になったらしてみたい気がします。

セキリティーカードやKEYBOXで鍵管理はすべてテナントに任せてすべて
の開閉を警備会社で遠隔監視させ警備員が不要なビルは実際にもう
あります。だから設備関連も夢物語ではありません。
事務所ビル程度なら私が一人で管理してあげる自信はあります。
システムを管理できる人だけが必要となる時代ですから資格を取り現場
経験をできるだけ今の内に積めた人だけが選択肢というチャンスを得ら
れる時代は近い、NETなんかで家でいつまでもくすぶっていてはダメじゃない?
実務を積まない資格マニアも私から言わせたら大差ないです。


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