2016年7月4日月曜日

電気主任技術者 猛暑期の冷房運転

今日7/3は今年一番の高温多湿の猛暑でしたね。
私が今日の冷房の当番なのでこういう冷房機械を見た事
がない方のために私流の見方を紹介します。

私が勤務するビルの熱源は冷温水発生機と個別空調です。
冷温水発生機はRB1~RB4の4台あり、RB1~RB3までが
冷房能力各500RT、RB-4が250RTです。
冷温水発生機は高圧ガスを使用しないのでいくら冷房能力
があっても資格はいりません。冬は逆に温水ボイラーになります。

まず要所共用部にある個別空調の冷房設定がすべて23℃
になっているかPCで確認をします。
自社ビルでなら省エネのために25℃以上の設定もあり
ですが商業ビルでは顧客やテナントが暑いというなら極端
に言えば20℃でも暑いと対応しないといけません。
ですからその現場都合により設定温度はetcです。
メイン冷房の冷温水発生機はこの現場では500RTと250RTを
まず最初に起動させておきます。(RT=冷凍トン)

昨日までは500+250RT暑い時は500+500RTで十分でした。
ただ7/3はすでにOAが朝から32℃、雨も降り湿度も100%に
近い状態で冷房運転には最悪の日です。

そのため朝9時を過ぎた時点でCTの入温度が急上昇です。
結局は500、500、500RTでの運転となりましたがこの時期でこう
いう運転が必要になったのは初めてと先輩も言ってた!
とにかくCTの冷却水温度37℃のMAXが回避されたのは3台目
を運転したからであのまま上昇すると能力低下だけでなく異常で
停止する可能性もあります。
尚、この現場ではデマンドの関係で台数制御は使用せず運転員
の判断でそれをされています。
(ここの台数制御は冷やす事しか考えないので放置すればいくら
でも電力を消費する)

空調機が冷房をどの程度要求しているのか?判断する簡単
な方法は空調器への冷水の送り温度と戻り温度の差です。
何も考えてない先輩ではただ単に空調器への送り温度が少し
高いと冷凍機が能力不足してると判断して無駄に冷凍機の
運転台数を増やしておられます。
そこが高いなら戻りの温度も見て相手先の空調器が冷水を
本当に要求しているのか確認をすべきです。
皆さんはこういう初歩的な間違いには気をつけましょう。

上の場合で送りが9℃で戻りが9.2℃なら現場の空調機の冷水
バルブはほとんど全閉で所定の温度に現場はなっているのです。
空調機は温度コントロールが設定と現在温度差に比例してバルブ
開度を自動調整するので何もする必要はありません。
下の場合設定22.5℃、今のバルブ開度(緑)表示で温度が
下がらない場合は自動で緑表示が右に増えてバルブを自動で
更に開放してくれます。
ただすでにバルブ全開なら設定を下げても意味なく、冷えない
原因は別にあります。

そういう場合確認するのは空調機の冷水の入と出の温度差
下の場合ならば入14℃で出が20℃ですね。
ところが入14℃で出が15℃ならば熱交換器の汚れにより熱交換
してないので空気の吹き出し温度が下がらないのです。
又入が20℃とかでは冷凍機を運転してないのと同然で熱源に異常
が発生しています。
それか圧力調整弁が故障して冷水が手前で戻っているかですね?
ただバルブが全閉のまま固着と言うなら業者が来るまでバイパスを
20%でも手動で開放し冷水を通して冷房継続しかないです。

各階の空調機が冷水を要求しなければ冷水はそのまま圧力
調整弁でほとんどが戻る
ために水は冷たいままに冷凍機
に戻り結局は送りと戻りの温度差はなく、その場合は冷凍機は
PC上では運転状態でも実際は冷房運転をしていません。
停止してるから運転時は8℃の冷水が12℃とかになってる
わけでそれには意味があるのです。
通常は送水ポンプの1台がインバーター制御でこのバルブ開度
変化による圧力変動を緩衝させてるはずです。

下がその冷水の送水ポンプです。
冷水ヘッダーの圧力をPEWで呼んでPICという圧力調節器
CHP-5-3というインバーターポンプの回転数を制御。
実際は同時に一次と二次バイパスも同時に制御するためレシオ
バイパス設定(R/b)で信号を分割してるのです。

下の2.8キロ設定になってるコントロラーが最重要設備のPICです。
現在値が1.8キロになっていますが、これを見過ごしてはいけません。
こういう部分は基本現在値は設定前後でないと安定した冷水の送水と
ならないので私は自分が冷房当番の時は1日1回はこれは確認します。
私の話を聞いて理解できるのは後輩とか30代までの人だけですね。
係長からガチな電気オンチで"わからない"の連呼でわかる努力をされない
だから中高年の設備員も自己流で適当にされますが仕方ないです。
★自分さえちゃんとしてれば何があっても最後まで残れるのです★
私は後輩にはそうアドバイスをしています。ダメな先輩は見習わない!

又冷凍機の負荷状態を示すのはCTの入と出の温度で
MAX状態でなら入が37℃、出が32℃となります。
今日の場合ではその各温度状況から判断するとRB-1が
80%負荷RB-2が70%負荷、RB-3が80%負荷の様な状態
で2台では無理なのがわかります。
明らかに今日は朝から気温が上昇するならば常に監視PC
にはこの画面を表示させてCTの冷却水の温度に常に注目
しています。

MAX状態で1台を追加していては遅いのですからその手前で
冷凍機の運転台数を増やすのです。
★CTの冷却水温度は冷凍機の負荷状態を知る一番の目安★

この様に館内が冷えて空調器への冷水の送り温度と戻り温度の差
が少なくなりそのCTの冷却水の温度も低下してきたら運転台数を
減らせばいいのです。
ただCTの冷却水の入温度が35℃もあるとまだ負荷が高い状態なの
でこの2個の条件が成立するまで待ちます。
空調器への冷水の送り温度と戻り温度の差が小さくなれば必然的
にCTの冷却水の入温度も下がるのが道理です。

こうした冷凍機を追加する場合注意するのが電力値です。
まだ今は1900KW程度なので問題ありませんが2400KWもある様
な猛暑期ではそれによりデマンド超過をさせてはいけません。
防止処置としてデマンド値-100KWでPCで警報を出す設定
にしてはいます。
実はデマンド制御も可能ですがどの機器も停止させる事ができ
ないのが現状ですね。

デマンド制御とは30分間の平均電力がデマンド値になる様に登録して
る機器リストから機械を自動停止させる制御です。
最初の10分をオーバーしても残り20分で消費電力を下げればデマンド
超過は防げる事になります。
ただ自社ビルと違い一般の商業ビルでそれを効果的にするのは容易
ではないです。

対策としては
1.外気導入を停止させて室内CO2が1000ppmを超えない範囲で
暑い外気の侵入をブロックして熱源の負荷を下げる。
(すでに各空調器には私がタイマーを入れて30分事に開閉させる
改造済)
2.照明の間引き
これは昨年共用部の8割をLEDにしたので今年はかなりデマンド
オーバーには貢献するはずです。

実際のでデマンド超過防止対策として私の経験で言えば
やはり照明か熱源負荷を下げるしかないと思う。
機械を停止させると言ってもテナントビルではすべて利用客
に制限を与えるのですから無理ですよ。

照明を消すのも限界があり私が電気主任技術者として会社に
提案して実施したのは猛暑期間(特に13時~15時の時間帯)
での外気遮断ですね。
外気ダンパーを開閉させるリレーに強制的に割り込みさせて
OFFにすればいいだけです。
ただずっと閉めたままだとCO2上昇が懸念されるので30分
間隔で開け閉めする事にしました。

電流値低下によるモーター消費電力低下はしれてます。
ですが空気比熱0.24(Kcal/Kg℃)、密度1.25(Kg/㎥)
ダクトの通過 空気量が15000(㎥/h)として省エネ効果を試算しました。
電気主任として着任したら何か1個はいつでも示せる省エネ対策
をしておけば何かと電気担当としての筋が立ちますよ。


1時間当たりの空気の質量は15000(㎥/h)×1.25(Kg/㎥)です
から18750Kgの暑い空気が削減できます。
又この時の空気温度を35℃と想定すれば熱量は0.24(Kcal/Kg℃)
×18750Kg×35℃で157500Kcalの暑い熱量をこのダンパーを1時間
閉める事で防ぐ事が可能になると思います。
(中学理科の熱量=比熱×質量×温度を覚えてますか?)

1KWH=860Kcalですから熱量を860で割りこのビルの電力単価を
掛けると1時間当たり2747円の削減ができます。
毎日これを通算で5時間するなら1ヶ月で約41万円の熱源コストが
理論的に下がる計算になります。
実際は30分間隔だからその半分程度が無理がない範囲でしょう?
(冷温水発生器は高圧モーターではないためCOP=1として
円/Kcalとかの燃料単価で計算すればいいと思います。)

毎年前年より最低1%以上の節電対策を提出する必要がある。
こじつけでも省エネできるという案を数値化できる必要があります。
エネルギー管理士が必要な大規模な現場に転職できるのは稀
だけどそういう書類は毎年作成する必要があるのです。

上手な冷暖房というのは熱源出力=空調要求負荷にする事
たとえば軽負荷時に7℃一杯の冷水作成設定にするとこうなる。
冷水が12℃で冷房運転を開始して設定7℃まで冷やし停止
その後12℃まで運転しない、そのサイクル運転の繰り返し。
これでは冷凍機能力が強過ぎるせいで冷水が12℃に上がった
時に利用者から暑いというクレームが来る場合がある。
こういう冷水温度をON/OFF状態にするのは下手な運転です。

冷凍機の能力が空調機の要求負荷より勝っている事を条件と
してこの場合は冷水設定を逆に9℃にすれば機械は停止しないで
9~10℃のフラット水温となり快適環境を提供できるのです。
(一番右の急上昇は機械を完全停止したから)
ですから熱源冷凍機の単体冷水設定を変更するというのも必要
で前述した台数制御と兼ねて総合的な冷房運転をします。


快適に冷やすために逆に冷凍機の設定を上げるという考えを意外
と知らない設備の人が多いと思います。
ターボ冷凍機ではロードマインダーという高圧モーターの消費電力
を抑える制御がありますがそれでも負荷制限をする点で同様な事
が可能です。(工場勤務時代は私もターボ冷凍機を扱っていました)

ターボ冷凍機に能力以上の負荷をかけ過ぎすとCTの冷却水温度が
37℃を超えて上昇する事で高圧カットで停止する可能性大です。
ターボ冷凍機は原理上、冷却水の影響を強く受けるためもし
着任した現場にターボ冷凍機があればCTの冷却水の温度には注意!
昔誰かがボールタップから出る水量を増やしたらたらいいのでは?
と言ってましたがあれは冷却塔で蒸発した水を補給するためであの
水が直接冷却塔に循環する水を冷やしてるわけではありません。
けっこう設備の現場って間違った道理を先輩の教えとしてる人が
いますが貴方は正しい理屈で行いましょう。
多数決意見や経験が長いと言っても違う物は違うのです。

★余談ですが工場勤務時代に遭遇したターボ冷凍機の重大
事故を紹介⇒ターボ冷凍機ガチヤバイ