2016年6月27日月曜日

電気主任技術者 漏電調査

ELB回路なら通常30mAトリップしますがMCBは漏電では動作
しない
ため漏電量が多いと変圧器のB種接地の地絡警報
(LGR)が発報するのです。漏電箇所までは不明!
(低圧地絡で変圧器のLBSまでトリップする仕組は普通しない)
この場合では回路が落ちないので漏電した状態でテナントは
平然と営業活動をされてるので放置はできません!
地絡の場合の漏電箇所到達の調べ方は何度もBlogで紹介した
ので今回は省略しました。

家の様に分電盤主幹にELBがあれば全停電となり場所はおのず
とわかりますが、それでは営業中に店舗全停電となってしまう!
だから主幹にはMCBを使い、必要な回路だけELBを使います。
もしろん主幹にELBを使うテナントもありますが事務所系が多く
飲食店舗では主幹までELBは、そうした事情で私が勤務する
ビルでは施工されません。
たった1個の厨房機器不良のせいで店舗全停電なんてヤバイ。

主幹、幹線で50mA未満のI0は漏電はないのでリーククランプ
メーターで測定しI0=I0rと見ても問題ないです。


1.明け方の5時頃に低圧地絡警報が3回間欠的に発報した件
尚、出たままで復旧できないならその時点で私は出勤が必要です。

下のLGRの文字が赤く点灯してる変圧器の二次側回路に漏電が
発生してる可能性が高いという意味です。場所まではわかりません!
(一瞬のノイズなどの影響なら1回だけで終わり、尚自動復帰では
ないので電気室で手動リセット必要)

毎日の業務日報で会社に報告してるため前日の電気事故に関して
電気主任は言われなくても調査し会社に今後の方針の報告が
必要となります。

業務申し送りを朝読んで今朝、地絡警報が3回間欠的に発報した件
について私はその系統をすぐに調査しました。
その変圧器二次側の全回路、過去事故遍歴から可能性の高い
現場回路もI0計測しました、ですが異常は確認できません!

この変圧器の地絡についてはいつも決まった2社の飲食店で発生
していて、また○○か?と思いはしました。
ですが現状ではそれが確認できない以上は様子見しかできません
特に某店舗の店主は変わり者で私だけでなくオーナーもいつも
困り者の相手なんです。
一応しばらく毎日同じ調査をして推移を見ますが保安統括管理者
にはこういう理由なので現状はこれ以上深い調査ができない
件を報告しておかないといけません。


保安統括管理者とはオーナー側で権限のある誰かがなり電気
主任とはその方を補佐して保安規定で定められた業務を行う
のがお仕事です。
(各会社の保安規定によりその呼び名も保安体制も異なる)

変圧器でLGRがもう発報しないから様子見では何かあった時に
何もしてないは許されないし、いつものH1かH2回路が悪いと
思っていたら実はH7回路もないとはいえません
ですから変圧器地絡調査では二次側すべての回路を調査します。
経験的にその回路のI0が毎月の計測値とほぼ同じではそれで
店舗に入り各回路の絶縁測定を仮にしても異常回路はまず
見つかりません。

厳密にはI0が高くてもI0rが十分に低いならば漏電が原因
ではありません。

普段よりかなり高いI0値を確認したならI0rの成分割合を至急
調べていきます。
上の時は変圧器のB種接地のとこでI0が525mAもありすぐに
I0rモードで測定したらほぼ同値で危険な状態でした。
最終的にそのテナントに給電するEPSのMCBでも500mAも検出
これで確実にこの店にあると自信を持てたので私がGOサイン
を出して保安統括管理者が業務改善命令を店舗に出します。

これが出ると入居契約で改善するまで原則営業停止となります。
でもそれは調査を拒んだ場合で普通そこまでには至りません。
でも間違えましたでは笑って許してもらえないのは当然です。
上の時は店内で不良回路が見つかりそれを切ったら変圧器の
525mAがわずか3mAになりました。
要所で異常値を検出したらその写真を撮っておきます。
後で見間違いとか判断間違いを指摘されないためです。

正常であれば末端単独回路では0か0.1mAとかになります。

分電盤主幹は各回路のI0rを合成した物となるので正常時
に測定した値がそこの適正値と言えます。
ですから定期的に月1回でも主幹でI0r測定しておかないと
テナント事、幹線事の正常値がわからないのです。
ケーブルの漏れ電流限界は最大配給電流の1/2000未満の事。
200A流せる線なら100mAをI0rが超えてはいけません。
ですが普段10mAしかないのに急に90mAとなればその基準内
でも何か負荷に問題が発生したと考えるべきです。
異常とは限界値で判断すべきではなく変化の度合い!

結局カウンター裏の見えない配線をねずみがかじっていて
それが時々揺れて金属部に漏電していたのが原因でした。
生物被害は前月まで良くてもある日突然に発生します。
客の室内だけは月に1回程度しか入室して現場点検は
できないのでこうした異常を完全に防ぐのは難しいです。
もちろんねずみ対策はされてはいますがそれでもなくならない

途中幹線は複数テナントが絡むため電気を止める事はできない
ので電気を止めて調べる絶縁測定は途中では絶対無理です。
メガができるのは漏電が発生してる一社に限ります。
私の場合はそれでもその相手に全停電とかせずに最後の劣化
1回路確定まではメガは行いません!

最後に二重CHECKでメガをすると例外なくほぼ0Ωですね。
とにかく電気を止めるという行為は最小限に抑えたいのです。

漏電調査は区分停電が可能ならやはりメガが一番いいです。
線路にDC電圧をかけた場合は対地間静電容量は発生しない
メガはDC電圧をかける事で純粋な対地間抵抗を測定できます。
通電状態でそれを調べるにはその対地間抵抗により流れる電流
(I0r)を計測できれば同じく絶縁判断ができる理屈になります。
ただ無限大の絶縁抵抗は現実存在しないので極微小なI0rは
どんな正常回路でも流れます。

2.同じ様に変圧器地絡発報ですが配線に関する異常の件

停電はできないのでこの様に調査していき故障個所を推定しました。
開閉器A~M-2B盤間のケーブルが悪いならばM-2B~M-3B間の
ケーブルでは開閉器Cの17mAと同程度となるはずです。
又開閉器Cで17mAと激減してるという事実からM-2B~M-3B間の
CVTケーブル不良と判断しました。
保安統括管理者には報告書を下の様に作成し提出しました。

すぐに保安統括管理者が業者に連絡してケーブルの精密診断を
発注されました。
容易に点検できないCVTの幹線ケーブルの異常が発見されたならば
専門家に依頼して調べてもらうべきです。
保安統括管理者にそう私がアドバイスしたので業者調査になりました。
天井ケーブルの使用不能は修理に時間を要するので症状の初期
段階でダメなら取替など対応が必要です。
とにかく電気主任は事故発生時に原因箇所を速やかに確定させる
のが義務でどこで何が悪いのかわからないと前に行きません。

電気工事業者は何もない場所に新規で工事をするのは得意です。
がいきなり現場に来て調査依頼してもその現場の回路がどうな
っているのかわからないのです。
やはり普段からそこを管理する電気主任技術者が一番現場を
わかってるはずです。
仮に私が違うビルや工場でいきなり漏電を調査してほしいと
言われても現場状況がわからないので十分な事はできません。
だから電気主任は普段から自分が着任した現場だけを
よく研究しておかないといけません。


何事も書類作成が必要なのでJW-CADまでとは言わないけど
エクセルを電気主任は使える様にしておきましょう。
と言うか今、会社勤務してる人でエクセルを一度も操作した事
がない人はいないはずです。ただもう少し使いこなせばこの様に
エクセルは表計算だけでなくこうした簡易図面も作成できます。
言葉だけでは一般の方には状況の意味がわかりませんからね。
これは年1回の保安規定における絶縁測定記録用紙だけどこの
方がただ数値だけの表よりわかり易いでしょう。
これは試験後にテナントにもコピーを提出します。

基準値以上であっても他は20MΩ以上なのに1MΩ未満の回路が
あるならば異常がないかの調査が必要である事をこれを見な
がら説明も行います。
特に乾燥してる事務所系でそうした低い値が出るのはおかしい
私の経験上、放置してると短期間で漏電や短絡まで至るので
ある程度は私の方でも室内配線、コンセントなどの点検はします。


絶縁が低い(0.1~1MΩ)回路を調べるならまずコンセントに接続された
機器をすべて外してメガ測定を再度行います。
これで絶縁値が20MΩ以上になる確率は60%以上でかなり高いです。
そうでなければコンセント、敷設ケーブル劣化だけどたいていこういう
ヤバイのが出てくる事が多いですね。(接続点を中心に点検する)
原因がなくナチュラルで今年メガ値が20MΩ⇒1MΩなんて絶対に何か
あります。
そういう点で年1の電気を止めて行うメガ測定も大切です。

100V回路なら0.1MΩ以上だから0.2MΩで異常なしと処理してる電気担当
は危機意識のレベルが低いと思います。
その回路も最初にその場所に工事した直後では十分な絶縁値があった
はずでなぜ今1MΩを割っているのか通常の自然劣化ではそこまで至らない!
機器の裏で見えない=点検した事がないコンセントが上の様になったり
しているのかもしれません。。。でも必ず原因はあるはず。
内線規程では絶縁値は1MΩ以上が好ましいと記載されています。
1MΩ未満では絶縁が劣化に進行していくので"0.1MΩ以上だから0.2MΩで
問題なし"とするのは電気を知る者がする行為としてはお粗末です。

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直近の大きな作業としては電気室にある54個のバッテリー+充電装置
交換が10月、受電VCBの交換が年末、来年最初には今の特高変圧器
3バンクの内1000KVAを撤去して2500KVAの特高変圧器と入れ替えます。
変圧器工事では8時間停電を3回連続で行うか24時間連続で行うか
について今テナントと交渉をしてる段階です。
心良く協力してくれるテナントがほとんどだけど、こちらの都合で
昼間停電するなら1日分の売り上げを弁償してほしい。という店主
もいるので営業の方が相手本社の方と交渉されてるみたいです。

私の勘ではPM23:00~AM7:00で8時間停電を3日連続しかないと思う。
それなら弁償も必要ないしでも3日連続で私は夜勤です。
バッテリー+充電装置や2500KVA変圧器工事は個人的には今必要
としないと思いますが、保安統括管理者(技術部長)が経営会議で
社長から承認をもらった決定事項ですから私は従うだけです。
でも2500KVAの特高変圧器は実物を見た事がないので楽しみです。
もちろんそういう作業でベテランの人たちの作業を見学して
自分の現場力を上げる場にしないといけません!
その時はこのBlogでも記事にするつもりです。
ちなみに2500KVA特高変圧器入替工事は4500万円かかるそうです。

1000KVA⇒2500KVA変圧器に変更となればメーター類は更新
当然VTやCTなどいろんな付属設備も変更となります。
専用のVCBも変更となるからで2500KVA変圧器単体でそんな価格
はしません!既存処分費、人件費、管理費を考慮したら製品価格は
1000~1500万円程度では?

最近まで1500KVA変圧器2台の2バンクで予備として1000KVAを
電路に接続せずに運用していました。
理由は1000KVA変圧器は待機電力だけで月10万円(年120万円)
かかるので昔から2台運転でした。
ただ1500KVA2台で2500KW負荷状態で1台がトリップしたら早急に
1000KVA変圧器を電路に接続が必要です。

それを私がいない時に今の設備の人が緊急接続作業ができるか?
と言えばかなりヤバイという懸念がありました。
業者では絶対に間に合わないので現場の人が即しないと!
現実DS棒で22000V電路にDSをまず投入してください!なんて
させられるわけないです。
それに私が休日で呼出直行しても30分では到着できません。

ところがビル内の照明の8割をLED化した事で毎月の電気代が
10万円より大きく低下したので1000KVA変圧器接続が具体化
して今年から3バンクで運用できています。
これなら1台トリップしても何もせず電力配給は継続できます。
建物の増築計画が具体化したので電源確保のため今度は
2500KVA変圧器を先行して導入するのが会社の方針です。

後ここは復電が一部自動化されてないので27復帰とリンクして
そうなる改造を変圧器取替の時に業者にサービスでさせます。
回路変更方法は私が図面に追加して業者に渡したので後は
それに見合うパーツを買ってきて施工してくれたらいいんです。
どうせ計装業者も来るでしょうからあっという間に終わるでしょう。
それは停電の時しかできないのですが、私がそれをあの日に
ゆっくり工事してる暇がないので業者にお願いしました。