2015年8月21日金曜日

電気主任技術者 実務:冷却塔設備故障

以前冷凍機の冷却塔には濃縮を防止する装置がある記事を
書いたけど実際昨日それが故障しました。
夜勤者が毎晩各水の使用量を最終検針するのですが普通
より上水の使用量が100トンも多いので夜中に調べたら冷却塔
の中に停止中も補給水が出たままでした。
とりあえず手動バルブを閉めて強制停止されたそうです。
床が濡れてるのは槽から水が溢れた後ですね。
昼間日常点検をした人は気がつかなかったのか?はあるんだけど
それは仲間だからあえて言葉には出しませんでした。
無理のない範囲で職場の仲間の失敗を大げさにしない配慮くらい
するのは心得ています。


さっそく私に係長から相談があったので調査開始。
こういう場合何でもまず仕組みを図面上で知る!
冷却水ポンプが運転するとマグネットa接点経由でPX3リレー
にS-24A、R-24Aから24V電圧がかかり動作状態となる。
これを起点にして冷却塔のすべての制御が開始するの
当然ブロー弁の回路も生きる(ON)仕組みになっている。
だから停止中は補給されてはいけない...これってたぶん
補給水電磁弁本体の不良が原因と何となく?
もちろんこうした電気回路の故障もあるのできめつけは
電気エンジニアには禁物です。

せっかくなので他についても説明すると温度検出TEW(線番29~31)
で冷却水温度を検知して設定より高くなると最初にCFX1リレーが
ON(線番32.33)して1台目の冷却塔ファンが起動し、それでもダメなら
CFX2リレーがON(線番34.35)して2台目の冷却塔ファンが運転する。
あれこれ少しおかしい?停止中はこの冷却塔ファンも運転しない
のだから間にPX3リレーのa接点があるはずと感じた人は鋭い!
PX3が動作しないと全体制御がアクティブにならないのであえて
a接点は必要ないという事です。

下シーケンス図が冷却塔のメイン回路で
温度検出TEW(線番36~38)で冷却水温度を検知して設定より
下がるとOPX3がONして冷却水バイパス弁を開く、水温が上がる
とCLX3リレーがONして冷却水バイパス弁を閉める。
これは冷凍機の過冷却を防止する物でたいていの現場である。
冷却水ポンプと連動するPX3リレーがONすると矢印②の様に
コントローラーの11番に電圧がかかる。
逆にPX3リレーがOFFすると矢印①の様にCLX3リレーをONさえ
強制的に冷却水バイパス弁を閉める。
これに限らず空調のダンパーでも機械が停止するとこういう
バルブやダンパーは全閉にする
のが普通。機械制御の基本
としてこれは覚えておいてね。

今回問題の冷却水ブロー弁は図面の右下にある。
そこにPX3のa接点があるけど電磁弁へのNO接点の間にあるので
このa接点が切れて入れば電磁弁には開放信号はいきません。
(NOとはノーマルオープンの事で動作してONになる接点の事)
というのを図面を10分くらい見て理解した上で現地調査にGO。
長々と文字にしたけど電気主任技術者はこの程度の回路は
漫画を読むみたいに読めないといけません!


昨夜閉めた手動バルブを開けるとやはり補給水が出たまま
下が冷却水ブロー弁のコントローラーです。
これは電気伝導度が85を超えた時に電磁弁に開信号を出す
設定で今50なので水は出てはいけません。
それにblowdownが点灯してないから回路は正常に動作していない
のでこれは電磁弁単体の不調ですね。

故障と騒ぐ前に電磁弁のシートに配管中の錆がかかりその隙間から
水が出た
をまず疑いました。
同伴した職場の男性がハンマーで電磁弁を叩いてみようか?と言う
からそれは最後の策としましょう。
とにかく電磁弁を開閉したいんだけどあくまで基盤からの出力信号
なのでここから出力をまず出す必要がある。
これどう操作するのか?部屋に取説を取りに行くのも面倒なので
まずmodeボタンを押してみた。
押すたびにいろんな文字が出てくるけどSPが怪しいSPだからSET
の関係でしょうね、その状態でenterを押すと表示が85になったの
でこれだ!と判明

アズビル社の自動制御は→で桁変更、▽△で値を上下させるのが
多いのでそれに従い設定を40にした。
するとblowdownが点灯して電磁弁全開、次に設定を85に戻し全閉
するとさっきまで出たままだった補給水が停止。
電磁弁を開閉させた事でその錆か何かが取れたのでこれで不調は
解消されましたね。
このコントローラーを見た時にガチに綺麗なのでこの数年で更新してる
はずだからシステム故障ではないと直感。
だから電磁弁を叩くとかの荒治療は辞めさせたのです。
逆に男の腕力で精密部品を壊す可能性もありますからね。

もしこれでも同じ現象が発生するならば電磁弁本体の交換しかない
たぶん業者が来ても同じ事をして同じ判断をするはずです。
その時は私が電話して電磁弁の交換を直に依頼する事にします。
彼らも年間保守メンテ契約をしてるので私以外の方がそのお願い
をしても必ず自分らでも調べますが電気主任の私から調査の経緯
を説明してお願いすれば無条件に交換作業をしてくれます。
(彼らも電気主任の依頼という事で社内処理できるから)
尚交換する場合は報告書が必要なのでパソコンで経緯を写真を
つけて作成しておきます。

今までは全部こういう事はこの現場も業者に丸投げ状態で私
は基本まず自分で何でも調査して会社の方に報告書を出す。
報告書は社内のいろんな人が見るから私の評価も無意識に
上がる事となるのです。
社内での自分の信用度というのはこういう日々の小さな積み重ね
で昇給や昇進のきっかけにもなるんです。
会社組織で働く以上はそういう恩恵も考慮して当然でしょ!
後は誰が見ても納得できる報告書を作るというのが大切。

大きな仕事ではこないだ経営会議に私も出席させて頂き
念願だった館内照明のLED化の案が社内で通りました。
一部の階ではすでになっているのですが今回はMAX5千万円
かけて残りを行うので営業の人だけでは説明をしきれない
ために私にも同席を求められたんです。
この金額だと社長決済になるので万全な準備が必要でした。

LEDの欠点は光束Fルーメンが取替前より不足する点と熱に弱い
それらを考慮して設計し適正価格で良い仕事をしてくれる
電気業者を新規に参入させるのも今検討しています。
1回目のLED化では業者の器具選定ミス、施工ミスがあり
しばらく照明のLED化がSTOPしていたんです。
ただ毎年省エネを1%する義務があるのでLED化をいつまでも
ペンディングのままにできせん!