2015年7月18日土曜日

電気主任技術者 実務:給水設備自動制御

ライフラインを守るのも電気主任技術者の大切な業務
受変電設備、配電設備がいくら正常でも水が使えない
のではどんなビル、工場でも生産活動ができません。

私の勤務するビルの旧館の給水設備を紹介するので私の
経験を学んでね。(新館のはまたいつか)
これが全体の単線結線図で各細かいシーケンスの前に全体
のつながりを最初に調べ学ぶのがこういうのを覚える手順。
私もまずこの紙1枚と現地を見ながら研究、学習しました。
普通職場の人はここまで知らないので本格的に学ぶには
自分で調べ学ぶしかないと思う。

図面左下のこの部分を受水槽といい市水をSTOCKする。
①の電極の水位がE1まで下がると矢印先の電磁弁が開放
してFMバルブという水を給水する物から受水槽に水が入り
E2まで水が入ると電磁弁が閉鎖してFMバルブからの給水が
停止します。(FMバルブは受水槽によく使われる設備)
実際槽内は2槽式になっていてこのFMバルブ、電極は2SETある。
どこでも受水槽は2槽式になっていて連結管で結ばれ常に
同じ水位レベルで運用されます。

②の電極はこの水槽の満水、減水、渇水という異常状態を
感知する電極で渇水になるとポンプは強制停止されます。
そこまで水位が下がると槽の給水管より水位が下がり
(レベルSより下がる意味)エアが進入してしまいポンプ
が機能しなくなるからどこでもこうなっています。
ポンプというのは水中に空気があってはいけません。

現場によっては①②が一体となり満水、電磁弁閉、電磁弁開
減水、渇水という構成の場合もあると思うけど内容は同じ。
又電磁弁を使用せず単純にボールタップもあるはず。
もちろん停電した場合非常用発電機の電気でこれらは継続
制御されるので問題なし。
時々あるのが電磁弁が故障した場合で固着して開かないと
給水不能により槽が空になるのでその時はパラ施工されてる
手動バルブを開放し応急的に水を受水槽に入れられます。

異物がかんでる程度なら電磁弁を底から軽くハンマーで叩く
と回復する場合もあります。
これだけでなく手動バルブが硬くて開かない場合はパイレン
などで無理に回しては素人さんがする事でバルブを壊します。
底から軽く衝撃を与えると嘘みたいに回る事が多いんです。
これボイラーを整備してる業者の方が教えてくれた技です。

30KWの三相モーター3台でビル内に給水されていてこれは
その電源部分です。
通常は2台のインバーター電源ユニットで3台のモーターが
台数制御されています。(モードA)
ACLとは電源の脈動を抑えるリアクトル、NFはノイズ除去で
INVがメインのインバーターユニット
51はTHRの事で過電流発生時に回路を遮断する物。
INVが故障すると自動的に商用電源のモードBとなり
給水が停止しない仕組みになっています。
ただ商用になるとポンプがFULL稼動となり水圧が高くなるので
少し手動バルブでポンプの水圧調整が必要です。
そうしないと給水ラインのどこかでノッキング(打撃音)を打ち
弱い管やエルボー部分で割れて水漏れします。

これがそのポンプ3台で下が実際の写真
このシステムはNO1がマスターでこの出口圧力を基準として
システムを制御しています。
圧力タンクというのは急な水圧変化を吸収するためのクッション
タンクの役目をします。

私は電気担当だけどポンプのグランドパッキン、圧力計の交換
くらいは機械の事でもできます。
それと綺麗にされてるでしょう、ここの機械担当は元自衛官
の方で長年船舶のエンジンを担当されてきたプロの方で
そういう人になら何を言われても腹は立ちません!
だってこの方、メカニックの教官をされていた人である意味
そこらの業者より凄い人です。(余談でした)
自分よりできる人と知り合うほどに人は成長すると思う。

これは低負荷検出装置で出口配管流量が0近くなると(夜中とか)
に信号を出しそれによりポンプを停止させます。
構造はガチに簡単で流れがなくなる事で板が締まりそこにリミット
があるだけの構造...実は一度このリミットが固着してポンプ
が回らない事があったけど急に起きると容易に気がつけません。
こういう場合その線を切断すればこの要素は削除できるよ。
(逆にNormal Closeの接点なら短絡する事!)

これが制御盤の方で7とある端子に受水槽の電極2が接続され
渇水状態となるとここから3台のポンプに強制停止をかけます。
1とある端子に前述したNO1ポンプで検出した圧力値を入力して
制御をする一番重要な接続。
負荷によりここから台数制御を行いINVが故障すると自動商用
運転をしたりする心臓部!


なぜ私がこの紙1枚でこういうのがすぐ検討がついたのか?
父が電気主任をしてる工場で勤務してた頃に覚えた前の
現場の知識があるからでこれから目指す方はその点で
このシステムを頭に入れておくと役に立つと思うよ。
新しい現場に着任した時に比較対象できる現場の知識が
あるというのは何より有利なんです。

これで全体像を習得したら次に個別にたとえばポンプのシーケンス
を勉強します。
このポンプは1台が30KWだから商用モードではスターデルタ起動
だけど全体図には省略してある。
もしそれが故障したら商用運転もできないので完全にOUT状態。
自動化されて故障も考慮したという制御でもそれを受けて動作
するシーケンス部分が故障したらそれでお手上げなので
けして自動化というのを過信してはいけません。

スターデルタ起動についてはこのPAGEのいくつか前にて解説してるの
でそちらを参照してね。
水は止まれば飲食、病院、工場は大打撃で呑気に昼から業者が来ます!
では許されません。どんな手を使ってもポンプを運転させて水圧を館内
に送る必要があります。(相当のクレームが予想される)
契約電力が1000KW未満の小規模なテナントビルならば半日くらい
なら大丈夫もしれませんが、水は電気と同等に欠かせない物で
そういうのを配給するシステムをライフラインと言います。

それにはシーケンスがわからないと最近のこういう電化給水システム
では応急対応がまったくできません。
(高架水槽方式ではないので電気が止まると給水不能に至る)

シーケンスを理解するというのは現場の電気主任技術者には
避けて通れません。

電気主任技術者は着任してからは当面現場の勉強、研究
の日々となります。
余裕ができたらトラブル想定をしてこういうトラブルの時はこうする!
など事前の研究が重要設備には必要です。
業者と言ってもこういう給水設備まで個別に専属契約してる現場は
ほとんどないので基本は現場の人が対応していかないといけません。
そこで一番イザで頼りにされるのが電気主任技術者です。
ただ電験●種があるからと言っても着任したばかりの新米電気主任
では何の役にも立ちはしません!
だから1日でも早くライフラインの習得が必要なんです。