2015年6月30日火曜日

電気主任技術者 実務:スターデルタ起動故障対応1

電気主任技術者のお仕事をしていて必ず遭遇するのが
モーターつまり機械が起動しない
というトラブル。
出力が200Vで5.5KW以上のモーターはスターデルタ起動
という方法で起動しどこの工場、ビルでも必ずあるの
普段関心がないとイザこの故障が発生すると???状態。
これについては一番身近な設備になるので電気主任を
目指す方は扱える様にしておかないと必ず困る時が来ます。
又業者を呼んでもすぐには来ませんから待てない物に
関しては電気主任技術者が至急修理しないといけません。

今日はこの起動方式の前半だけ説明します。
この回路結線はどこでも基本これなので暗記されてください。
頭の中につながりの知識がないと現場では手は出ませんから!
まずは図面の横の記号を見ながら読んでください。
正常状態ではOFFボタンの二次側まで電圧は来ていてONボタンを
押す事でタイマーB接点を経由したのが①これでMCMというマグネットが
ONすれば主回路の通電が開始されます。
でもこれだけではモーター回路を構成してないので回転しません。

MCMというマグネットが投入状態になり同時に線Bの信号で
MCSというスター回路用のマグネットも投入状態になります。
これでスター結線が完成してモーターが回転を開始します。
スター起動は電源電圧をルート3分の1のまで下げて起動させ
全電圧起動と比較して起動トルクは1/3になりますが起動電流
も1/3まで下げる事ができます。
こうする事でMCBや配線などを必要以上に大きな容量にしなくても
すみます。(その後の動きは次回)

モーターが起動しない場合はどこに原因があるのか?
ここでいう起動とは最初の減圧起動(スター回路)での起動
ができない場合で、シーケンスで言えばなぜマグネットMCMに
電圧がかからないのか?という意味。


1.常識としてまず電気が来てるか?
つまりMCBやサーマルリレー(THR)が動作してないか?
2.OFFボタンが不良で切れたまま
3.ONボタンが不良で押してもONにならない
4.タイマーB接点が不良で切れたまま

1の点検ではそれが発生してる場合はすぐにモーターの
絶縁を測定して使用できるかの判定が必要です。
0Ω状態では最悪モーター交換が必要だけどよほど劣悪
した環境や不適切な使用をしてなければこういう故障は
10年程度使用してるモーターでもまず発生しません。

2の点検についてはジャンパー線でOFFボタンを短絡して
ONボタンを押してみてください。
OFFボタンが不良ならばこれで起動はできます。
(部品交換までモーターを停止させる時はこのジャンパー
を外すのではなく主幹MCBで停止させてください)

3の点検ではジャンパー線でONボタンを短絡してモーターが
起動すればONボタンの不良です。部品交換してね。

4の点検では確かに同じジャンパーしてONでテストしたいのですが
この接点はタイマー時間が経過したら切れる必要があるのでこれ
についてはいきなりタイマーの交換をしましょう。
タイマー交換すればタイマー接点も交換した事になります。
ONボタンやOFFボタンは押した時しか動きがない物でシンプルな
作りでめったに故障しません。
もちろん絶対ではないので点検方法だけは知っておいてください。
MCBやTHRが切れてなくモーターが起動しない場合
個人的にこのタイマーが一番怪しいです。

これはソケット式で誰でも交換できるのでスターデルタ
起動方式がある現場(ほとんど該当)ではこのタイマー
は在庫として購入しておきましょう。(交換時は電源OFF)

ここまでしてもまったく起動しない場合はMCMのマグネット(MG)
のコイルが断線している
ので交換が必要です。
念のためONボタンを押した時にMGのコイル端子に200Vが
来てるのを確認しそれでもMGが動作しない事を確認しましょう。
(テスターで電圧を計る人とONボタンを押す2名が必要)
理論上スター回路用のMgのコイル断線でも同様なので
MCMのMGが正常に投入された場合はスター回路用のMG
でも上と同様の電圧CHECKをされてみてください。
最後に残る不良箇所はもうスター回路しかない!

スター回路用のMGの故障では10秒後くらいにデルタMGが入ります
が全電圧起動となるので過電流によりTHRでトリップするでしょう。
実は私はスター回路用MGの故障に一度遭遇した事があります。
その時の事は次回記事にしますが、モーターの起動ボタンを押して
回転せず10秒後くらいにトリップしたらスター回路用MGの故障です。
これは私にとっても貴重な経験の一つになりました。
貴方も自分の経験として覚えておいてくださいね。

MGを交換する前準備としてシーケンスに不慣れな場合は
接続されてる配線に自分で決めた番号を書いたテープを貼る。
次にスケッチで接続の状態を絵に書いてその時に配線番号を記入。
組立てる時にどれがどの配線かわかる様に!

主接点端子がモーターへ電気を配給する、コイル端子に電圧をかける
とMGは投入される。
補助接点端子とはMGの投入に連動して動作するa接点かb接点で
スターデルタ起動回路ではスターのマグネットの投入回路となる。
これは連動起動とも言われる結線でいろんな場面で使います。

マグネットMGの交換手順

1.主電源、制御電源MCBを切る。
2.MGの端子を検電する
(制御電源と主電源は必ずしも同一ではなく主電源を
切っていると安易に触ると感電するかも)
3.MGに接続されてる配線をすべて外す(ネジ固定)
4.MGを盤から取り外す(通常ネジ固定)
5.新しいMGを盤に取付する.
6.最初に書いたスケッチを見ながら配線を間違う事
なく接続する。
7.配線を締めこむ時は適度に強くです。
簡単に書けばこれだけの事です。

ただ実際はネジが硬くて外れずMGが取れないとか互換製品しかなく
ネジのピッチが違うために既存のネジ穴が使えない、つまりそのまま
では盤にMGが取付できない。こういうトラブルは時々起こります。
あくまで電動ドライバーが現場にない事を想定して記事にすると
たとえばネジが取れない場合は今使用してる物より大きなドライバー
で体重を乗せて回してみる。
使ってるドライバーが小さいため回転力が不足して空回りしてるせいです。
一番まずいのはネジの頭をつぶしてしまう事でそうなると相当に厄介
な事になります。(特に握力の弱い方は注意!)
とにかくビスやネジは締め付けトルクより大きな力で回さないと
絶対に外れません。

それとビスは先端がとがっているもの、ネジは先端が平らな
ものをいいます。
時々業者が取付時に硬く締めてるネジがあり、電動ドライバー
でも無理、そういう場合はインパクトドライバーというのを私は使う。
外れない硬いビスやネジを外すツールで1現場に1個必要。
(インパクトドライバーには回転方向設定があるので注意)

MGを交換する時にネジ穴を新規で作る場合は簡単に言うと6mmの
ネジ穴なら5mmのドリルの刃先で穴を開けてからタップという物で
ネジ山をこしらえます。
これは自分でその道具を使い作る練習する事でしか習得できません
それか工業用の強力アクリルテープを使えば取付面がフラット
ならMG程度なら確実に取付はできます。
ただこれも事前に購入して準備しておかないとコンビニやスーパー
では売っていません。(なければその時に選択肢にならない)

ドリルでツルツル鉄板に穴を開ける場合でも未経験の人では
例外なく刃先が滑り上手く開ける事ができないと思います。
開ける事ができても穴の位置が数mmズレたりとか?
ポンチという物で小さな傷を作りそこにドリルの刃先を引っ掛けて
穴を開けますが現場に工具があっても使った事がないと
ないのと同じ
なのでもしそうなら練習を普段からしておきましょう。
これは前述したタップやインパクトドライバーにも言えます。
本でただ勉強しただけでは工具は実技では上手に使えません。
(それが通常の凡人の域なのは私も貴方と同じ)

モーターの日常点検
月に1回は各負荷電流、電圧を計測記録されてると思いますが
同じ電圧を計測するならば必ずMGの主接点端子の二次側
で各相間電圧を測定して比較されてください。

(★モーター運転状態で電圧を計測するという意味★)
たぶん停止状態でMCBの二次側とかで計っているでしょ?
電圧というのは負荷が稼動状態で計ってこそ意味があるの
私は相間電圧差が3Vを越えてるのは見た事がないです。
各相間電圧差が10V近くも差があるモーター用MGは至急の交換
をお勧めします。(コンタクターの接点劣化が相当進行中)
モーターもすでに逆相トルクにより振動したりかなり調子が悪い?
5V程度でも電圧差ある場合は要注意した方がいいと思う。
後MG一次側電圧がアンバランスになるのは変電室の変圧器
でも故障しない限りは通常は考えられない!
3
このまま接点劣化が進行して最悪単相状態となりそれで起動させる
とモーターコイルを焼損します。
運転状態で急に単相になると電流はルート3倍となりTHR動作する
だけど停止状態から単相だとすべてが短絡電流になるのです。
MCBやTHRが動作しても古いモーターでは相当のストレスを
与えるので動作するから安心ではありません。
モーターを焼いて業者に取替となれば50万円くらいは最低かかる
のでそうならないために毎月電流や電圧を見ているのです。
当然オーナーはなぜ焼けたのか報告書提出を求めてきたり
うるさい上司ではどういう日常管理をしてるのか問われます。

業者の方でも原因を必ず調査して報告されるのでそこでMG不良
によりモーター焼損が判明すれば電気主任技術者の管理不足
は避ける事はできません。
MGが単相状態になるのはいきなりではなく少しづつ劣化進行
した結果で必ずMG二次側電圧で劣化兆候を確認できていたはず。
3Eリレーがある場合でもその電圧検出がMGの二次側でなければ
まったく意味がないので、現在管理されてる現場の方もどこで
回路が電圧を見てるのか確認されてはいかかでしょうか?
MGの一次側で欠相保護していてもあまり役に立たないと思う。