2015年6月22日月曜日

電気主任技術者 仕事:電力用コンデンサー動作不良

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これは去年の年末に発生した故障で力率改善用の受電設備
電力用コンデンサーがまったく投入できない状態になったの。
100とあるのが電力用コンデンサーで裏で直列接続されて
いるのが直列リアクトル、必ずこれらはSETで使用されます。
受電22000Vでも変圧器二次側6600Vに数種類の容量
のこれが私が勤務する現場では接続されてる。
こういう設備は発電所の負荷を軽減するための物でその代わり
に電気基本料金を減額してもらっています。

ただ電力会社も無効電力計でCheckしていて投入量が不足
した場合は該当月に限り割引率が下げられるため電気料金
が高くなるので至急修理しなければなりません。

わからないから何でも業者に丸投げでは職場の仲間の信頼も得る事
なんてできないでしょう?
特に年末やお盆で業者も休みでは電気主任技術者がなんとかしないと!
これが今回の操作回路でまずは冷静になって信号の流れをこういう
感じで書いて検証しましょう。
投入用VCSがONするには下のシーケンスで言えばVCSの3番端子
につながる52XのMCのa接点がONされたら投入できる。
これに気がつくのが最初に大切です。


ではその元の52XのMCがなぜONにならないのか
52XのMCの投入コイルに電圧がかかっていないからです。
(コイル断線は私の経験上は一度もなくめったにない)
ではそこまでにどんな事をクリアーしなければいけない
のでしょうか?
まずは遠隔回路と手動回路があるけどまったくダメか
手動では動作するか
で原因も大きく異なります。

手動で投入できるなら図面一番左にある遠隔信号を
受けるONのCXリレーのa接点がダメかOFFの1Xリレーの
b接点が切れたままなんでしょう。
この2個を交換すれば遠隔で投入できる様になるはずです。
一瞬だけVCSが投入されすぐ切れるならCXリレーa接点に
接続される自己保持接点52XのMCのa接点不良ですね。
今回遠隔、手動共にまったくダメなのでPFY、SCY、SRYの
各b接点以降が怪しいという結論になるの

PFYはヒューズ溶断、SCYはコンデンサ本体異常、SRYは
コンデンサーには必ずある直列リアクトル異常
たとえばヒューズが溶断すると赤矢印②のラインでPFXの
1番端子に電圧がかかる事で10番端子より電圧が出てその
下のPFYリレーがONとなりそのb接点を切る。
(事故が発生してるのだから回路を入れさせない意味)
だけど各単体でも異常表示は出てないし外観や臭いでも
異常はないのであるとすればこの3個のb接点どれかが
何かの理由で切れた状態になっていると考えるのが自然

こういう場合はリレーの配線を外してテスターで導通を見ても
いいけど簡単にいくならジャンパーでb接点を短絡してみれば
いいんです。
私は面倒だからPFYのb接点と一次とSRYのb接点の二次を短絡
してみた...これでこの3個のリレーの動作はいっきに無視
できるので調査が迅速にできます。

これでも入らない???
実は52XのMCの機械的動作は最初からしていたの
(投入コイルは動作しているから回路自体は正常)
点検方法を紹介するために記事にしたけど本当は52XのMCが
動作してるならばこのa接点が摩耗して電圧がVCSの3番端子
にかからないという単純な理由です。

でも年末で電材屋さんも休みで部品購入できません。
52XのMCを一旦回路から外し、接点だけを抜き出してサンドペーパー
にてすり合わせをして、接点を回復させました。
削れば綺麗な銀色の状態になり全然これでイケると感じた。
これはFUJI電機MCの場合だけど上のカバーを取りラジオペンチで
接点を引き抜けばいいんだよ。(組み立てる時は確実に挿入の事)
この方法は父から教わった事で頭の隅に記憶としてあった。

上は当時の部品ではなく実際は接点がまっ黒くなっていました。
つまりそこで通電が阻害されていたんです。
この盤が更新してからだから10年以上使用した結果でしょうね。
MG交換するより、接点を抜いて磨く方が簡単だからついでに
残りのコンデンサーの52XのMCもすべて接点を抜いて磨きました。
やはり他の接点も表面炭化が進行していてこれでこういう
トラブルはこの設備では10年はないと信じたいですね。

ただ一概にどこのMG製品でもこう簡単には処理できません。
バネを一旦抜かないといけない場合もあるし、小さなMCでは
外せても組立てる時に手先の器用さも必要かもしれません。
その後MC取替しなくても、半年経過今も特に問題なし。
ただ電力コンデンサーは毎日使用するので他の受電部品
と比較してこういう劣化は発生し易いと思う。

今回特に言いたかったのは接点不良が発生した場合
正常時OFFなら配線を抜く、逆にONならジャンパーして短絡して
みれば仮処置としてそのリレー回路は正常に動作してる状態に
できるという事。
それで順番に探していけば回路の故障個所は必ず見つけられる
という事です。

ただ正常時に切れるべきとこを短絡したりその逆もだけど回路を
読む違えてそういう事をすると思わぬとこで短絡事故等が発生
して修理が高い物につく場合もあるので
最初に確実にシーケンスを読み切る事が大切です。

では部品も今手に入らない、接点磨きも無理ならどうしたらいいか
貴方なら部品交換まで最後の応急手段としてどうされますか?
今一度シーケンス図面を見てください、様はVCSの3番に電圧をかければ
いいのですから、その上にある52XのMCのa接点を撤去し20AのMCB
でも接続してこれで通電すればいいのです。
ジャンパーで短絡させるとVCSを遮断させるのにジャンパーを外す
とたぶんアーク(火花)が生で出るからMCBを使います。

ただ上の方法は保護回路無視なのでPFYのb接点一次側とSRYの
b接点の二次側を既存回路から外してこれをMCBの片側に接続して
そこに最初に接続予定の2線を接続すれば完璧です。つまりこう!
これなら異常が発生しても各b接点でMCBの通電が切れます
私は最後はこれをするつもりでした。
何もなければいいけど運悪く機器本体異常まで発生してVCSが
投入状態が継続すると完全に機器が焼損してしまいます。
だから電気主任技術者がすべきはこの方法しかありません。
適切な処置をした結果の損害は責任は問われませんが保護回路
を忘れて焼損させたら、電気主任技術者は解任でしょう。

パズルの謎ときと同じでこれがダメならこうじゃないか?
という創意工夫で修理するのがシーケンス修理です。
そんな工夫が技術者に欠かせない資質だと思います。
難解な電気計算ができる頭だけでは現場では使えません。
こういう事を過去自分で行った経験の積重ねだけがイザで
役に立つ本当の現場の技術です。

電力用コンデンサー回路の故障の記事を書いたので予備知識
としてコンデンサーにAC電圧をかけると電流は位相が90度進む
のはご存知でしょうがではなぜか?と言われたら???
電力用コンデンサーは現場で扱うのでこの質問をたまに受ける
場合があるけど電気主任なんだからわからないは言いたくないよね?
コンデンサーの電流はjωCvでjがあるから位相が90度進むと
いう答え方ではただ法則を棒読みしてるだけに過ぎません。
電流は電荷を時間で微分して求められます。

Q=CVにしてVは電圧の瞬時値にして求めていきます。
sinを微分したらcosでそれを三角関数の公式でsinにするとそこに
π/2ラジアンという角度が出てくる、それを度単位にしたら90度。
だから電流は電圧より90度位相が進みます。
質問されてこう返答できたら格好良いから覚えておいたらいいと思うよ。
な感じで電気の現象というのはすべて数学で解析できます。

後電力用コンデンサーの一次側にある直列リアクトルは突入電流防止
と高調波抑制のためにあります。
リアクトルは様はコイルなんだけどこれを通す事で電力用コンデンサー
にかかる電圧(Vc)が少しだけ母線電圧(E)より高くなるんだよ。
(あのフェランチ効果とは理由は違うので注意してね。)
これは電験三種を持ってる人なら計算で納得できるでしょう。
最終式は虚数jがないから分母は常に1未満でVcはEより大きくなる。
単に電力コンデンサー容量と母線電圧で電流を求めた時に少し
計算値と実測が違う誤差はここから生まれます。
これは意外と気がついてない方が現場でも多いと思います。

現場で故障時に何かの役に立つわけじゃないけど納得して
現象を理解するなら電験三種理論で学んだ複素数計算は常に
いつでも使える様にしておく
といいと思います。
複素数計算は大昔天才科学者が交流回路を直流と同じ様に
計算するために編み出した手法で、交流回路を頭上で極めるなら
複素数計算ができないと無理なんです。
ただ故障時のこういう処置は頭で理論を極めていても処置が
必ずしもできない事は現場に着任して身に染みる事が多い。

トラブルこそ学びの場で日々というか一生勉強です。

★貴方に質問★
ある日後輩が丸山主任、倉庫の照明が暗いので100Vのハロゲン
のスポット中古が2個あるので200V回路に100Vのハロゲンを
2個直列でつないで工事しようと提案してきました。
オームの法則で言えばまったく同じワット数を2個直列だから各
100Vに分圧するのは正しいので彼はいけると思ったのでしょう。
(ワット数が異なると1個は暗く、明るい方はすぐに切れます)

そういう発想は私もした事がなかったので一瞬いいね!と思った
けど、よく考えたらこれには致命的な欠陥がある事に気がつきました。
電気設備基準第○条で禁止されてるという話の前に理論的に
ああそうか、と彼も後で納得してくれました。
実は点灯はしますが後である行為をする時に不具合が発生します。
貴方は彼を納得させられますか?
1個電球切れすると直列だからもう1個も点灯しないは答えと
してここでは除きます。

頭ごなしにダメはダメでは賢い指導者ではないと思います。
出入りしてる電気工事業者にも私は質問してみましたが
そんな工事はしないので経験的にそれはまずいだろう。と
言うだけでその答えをはっきりと答えてはくれませんでした。
第2種電気工事士以上の勉強をした人でないとわかりませんが
電験三種を合格した人でも全員が彼を納得させられないでしょう。

ヒントは2個直列の同じランプは点灯中電圧は均等分圧だけど
1個だけランプを抜いた状態で、そのランプを抜いた器具の開放
電圧は計測したらどうなるでしょう?
上の問題の場合でも100Vではありません、電気の基本オーム
の法則で考えてみましょう。